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水やり(灌水)の基本

水やりの様子

都内某所。愛好家の棚場にて

「水やり三年」「水やり一生」という言葉があるように、毎日行う盆栽への水やりは盆栽管理で一番難しいものかもしれません。

一言に水やりといっても奥が深く、水をあげなければ植物は枯れてしまいますが、あげすぎるのもいけないのです。

自然木だと少々の日照りでも、土中深く下ろした根が地下の水を吸い上げることができます。

でも、盆栽は限られた環境の中で生きているので、環境条件が少しでも変化すると大きく影響してきます。

それぞれの樹種の性質を理解した上で、適した灌水を行うことが大切です。

灌水に使う水

望ましい水質はなるべく清潔な中性の軟水です。

水道水をそのまま使っても問題ないのですが、葉や幹、鉢にカルキやミネラル成分がこびり付いて次第に白く汚れてきてしまいます。

これらの汚れは定期的に掃除すれば綺麗な状態を保てますが、鉢に付いた汚れは放っておくと簡単に取れません。

可能ならば、常時水溜めに雨水や水道水を溜めておき、カルキ抜きしたものを使うと具合がいいと聞きます。

ちょっとした水の使用にも便利ですし、水溜めの水で灌水している盆栽は葉の色が鮮やかになるそうです。

灌水に使う道具

如雨露(じょうろ)

じょうろにはステンレス、銅製、真鍮製、合成樹脂(プラスチック)製のものなどがあります。

盆栽用には昔から銅製の竿長じょうろが長宝されていて使いやすく工夫されており、高価ですが長く使える品物です。

プラスチック製のじょうろは値段も手頃で使い勝手もいいですが、屋外で使っているうちに紫外線や気温で劣化や変形を起こし、数年で買い換える必要があります。

じょうろの容量が少ないと灌水が大変ですから、持ち運べる範囲でできるだけたくさん入るものを選んで準備しておきましょう。

はす口(灌水口)

じょうろやホースの筒先につける散水口です。

こちらも材質によって値段に大きな差がありますが、盆栽用には昔から銅製や真鍮製のはす口や散水ノズルが愛用されています。

高級品ですが長く使うなら盆栽用に作られた専用のハス口を持っていたほうが、毎日の灌水も楽しくなると思います。

輪切り型と斜め切り型が一般的で、輪切り型は水が強くまっすぐに出ますが、斜め切り型は散水面積が広く柔らかく散水出来ます。

穴径が小さいほど出る水は柔らかく、植物を痛めることがありません。

水溜め、たらい

水道水を避けたい人や近くに水源がなく不便な人で、庭やベランダにスペースが確保できる場合は大きな水溜めや雨水タンクなどを用意しておくと便利です。

水道水を汲み置きしたり雨水を溜めておくことができます。

専用のものでなくても、最低でも2~3回分の灌水量くらいは常時溜めておける大きなバケツや樽、タライ、睡蓮鉢、漬け物用の桶などで代用してもいいでしょう。

ただそのままの状態が長いと、ボウフラや雑菌などが繁殖して逆によくありません。

自動灌水装置

手やりで灌水することで、1つ1つの樹の状態を確認することができるのですが、盆栽の数が増えるほど大変な時間と労力がかかってしまい、毎日の灌水が負担になってきてしまいます。

また日中は仕事で外出している人も多く、夏には1日に2~4回の灌水が必要になってくるのでタイマー付きの自動灌水装置は便利です。

水はタンクや家庭内の蛇口から引くことが出来るので、建物の状況を考えて適切なものを選んでください。

電池式がほとんどで、雨が降ると予約を自動キャンセルできる雨センサー付きの灌水装置もあります。

タイマー付きの本体に、別売りの散水ノズルやホースを付けて自分の棚場に合わせて自作することもできます。

開花中のものは管理場所を別にしておき、下に水が溜まる仕組みのトレイに置いておけば花に水がかからなくて済みます。

ただ灌水のムラも出やすいので、灌水もれしている盆栽がないか、配置や角度をチェックしてから出かけてください。

灌水方法

ほぼ毎日行う灌水は一番難しい作業なのかもしれません。

盆栽を枯らす原因は灌水方法に問題がある場合がほとんどで、水不足で枯らすことより、根腐れ(水のやり過ぎ)で枯らしてしまうことが多いようです。

灌水は毎日同じように行えばいいというのではなく、季節や地域、それぞれの盆栽の状態によって個人で工夫する必要があります。

灌水時間もバラバラではよくなく、最初の灌水は午前中に済ませます。

人間も植物も生活のリズムが大切。

毎日決まった時間に盆栽を見回って、自分の灌水リズムが分かるようになれば、灌水での失敗も少なくなります。

1回の灌水はたっぷりと

通常の灌水は、水が鉢底から滴ってくるまで根元にたっぷりと与えます。1回で終わるのではなく、水が浸みたら2~3回同じように水をかけてやります。

繰り返し水をやることによって用土中に新鮮な水分と酸素が通り、余分な水は鉢から抜けていきます。

保持された水分は、根から吸収され生命活動に利用されますが、同時に蒸発もしていきます。

この失われる水分が生命維持の限界の量に達したときに、再び灌水することが理想的ですが、季節や樹種、サイズ、培養場所や用土の配合、盆栽の状態などにより乾き方に違いがあります。

表土が白く乾いた状態

葉が少し萎れてきた時に次の灌水をするのがいいですが、全ての樹の乾きの状態を見極めることは不可能です。

目安としては用土の表面が乾燥して白っぽくなってきたとか、寄せ植えしている山野草やコケが乾いてきたなと気付いた時に灌水してください。

株元に水をかける

水は株元にかけてね

単に上から水を与えているだけでは、思ったほど根に水が届いていないことがあります。

また紫外線が強い時は、葉に溜まった水滴がレンズの働きをして葉焼けを起こすこともあります。

しっかり水が届いているか確認する意味でも、水は株元に回しかけるようにしてください。

この時、水の勢いが強いと灌水の度に用土がこぼれ落ちてしまいますので、ジョウロのハス口を上に向け、シャワー状になった水をふんわりとかけるようにしてください。

木全体に水をかける葉水は朝夕の気温が低い時間帯に行うもので、植物に活力を与えるための作業ですから、灌水とは別と思っておいてください。

花に水がかからないように

花に水をかけてはだめ

株元に水をまくのが基本ですが、とくに開花中の盆栽には花に水がかからないように注意してください。

花に水がかかると、花が傷んで観賞期間が短くなるばかりか、花粉が流れて受粉できなくなるので実を楽しむことができなくなります。

他の樹と一緒にしているとうっかり上から水をかけてしまうので、特に開花期は花物・実物類と他の樹種の管理場所を分けておくことです。

さらに水が一定時間下に溜まるような工夫をしたトレイで管理できれば、灌水もれによる水切れや、上からかけてしまうような失敗が少なくすみます。

葉水で盆栽の活力維持を

葉水

葉水とは、水を樹全体にかけて活力を維持するために行う方法です。

植え替え直後や樹勢の弱った盆栽などに有効で、葉からの蒸散量の多い時期や、都会の住宅街や火山地帯など葉表面の汚れが目立つ地方では回数を多く行います。

目の細かいじょうろなどで頭からたっぷり水やりします。

植え替えしたばかりのものや石付き盆栽などには、霧吹きやスプレーで霧水をかけてやるとよいです。

ただ日差しの強い時期の昼間に葉水をすると、急な温度の低下で植物に害がでたり、葉やけの原因になってしまうことがあるので、気温の下がる朝夕に行ってください。

腰水の効果

腰水

夏の日差しの強い日に外出していて灌水できず、すっかり乾かしてしまうことは誰でも起こりえます。

そんな場合には腰水(こしみず)といって、水を張った容器に鉢ごと入れ、下から充分水を吸わせてあげます。

乾害を起こした樹はとても弱っているので、腰水の後3~4日は必ず日陰に置いて回復を待ってください。

腰水は、植え替えや鉢上げを行ったものや、硬く根詰まりしたものにも最適です。

植え替えを長年せずにいると、土が硬くなり水の浸透や吸収が悪くなってしまいます。

そんな時は腰水や、釘や竹串などで数か所に穴をあけておくと、用土に新鮮な水と空気をしっかり浸透させることができます。

夏と梅雨期、冬の灌水の注意点

夏の乾燥と過湿

夏場は高温に加えて生体活動が活発になるので、葉からの蒸散により多くの水分が失われていきます。

さらに表土や鉢面からも水分は蒸発していくので、すこしの油断でカラカラに乾燥させてしまうことがあります。

そんな時は鉢を2重にしておくと乾きが遅くなるので、植替え直後や水切れに弱い樹は夏の間だけでも2重鉢にして管理すると安心です。

ですが、夏はむしろ乾きが心配で水やりを忘れるようなことは少ないと思います。

逆に水やりに気を遣いすぎて過水状態が続くと、鉢内が酸素不足になり根腐れを起こす原因になってしまいます。

根詰まり気味の樹など被害のでそうな鉢は、水はけをよくするために鉢を傾けておくなどの対策をしておいてください。

小石やかまぼこ板、使っていない薄い鉢などを枕木代わりに鉢下の片側に敷いて、少し傾けておくと水が流れやすくなります。

梅雨期の水切れ

梅雨期や雨の日は灌水の必要がないのではと考えがちですが、葉がたくさん付いている生長期は葉が傘のように水を弾いてしまい、土まで到達していないことがよくあります。

雨が降った日でも表土の乾きを確認し、株元にしっかり水がかかるように灌水してあげてください。

冬の乾燥

一方、冬場はあまり灌水に必要はないだろうと長期間灌水を放置してしまいがちです。

しかし地上部は休んでいても根は活動を続けているのです。

鉢内の水分を適度に保っておかないと乾燥が進んで細胞機能が低下し、最後には灌水しても元に戻らなくなってしまいます。

冬の乾燥は特に植物に大きく悪影響を及ぼすので注意してください。

灌水のタイミングはいつもと同じで表土が乾いたら行いますが、松柏類では1日1回、その他の樹種は2~3日に1回は乾き具合をチェックしてください。

灌水量

樹種による灌水量

盆栽の灌水は、その樹種の必要水分量の最小限度を補うように与えます。

一般的に葉物類や実物類は水を好む性質の樹種が多いですが、水分の日常的な充実は無駄な成長を助長して樹形を乱し、花芽もつきにくくなってしまいます。

また、水を好むものでも過水になると根腐れしやすい樹種もあるので注意しないといけません。

基本はやはり、鉢土の表面が乾いているのを確認してから灌水するようにしてください。

灌 水 量 対象の樹種
多め多めの灌水を ケヤキ、ニレケヤキ、エノキ、カシワ、ソロ、シラカバなどの樹勢の強い雑木類
やや多めやや多めの灌水を ウメ、ヒメリンゴ、ウメモドキ、カイドウ、ボケ、マユミなどの花物類
普通普通量の灌水を モミジ、カエデ、ハゼ、ブナ、イチョウなど
やや少なめやや少なめの灌水を カキ、サクラ、ツバキ、クチナシ、ナツメなど(過水による根腐れに注意)
少なめ少なめの灌水を 松柏類

季節による灌水量

季 節 灌水量のめやす
はる 標準:1日1回
  • 新芽が伸び始め、水分と養分を特に必要とする時期です。
  • この時期に多く与えすぎますと、新芽が伸びすぎたり葉が大きくなったりして樹勢を乱すばかりか、夏の水切れに対する抵抗力が下がってしまいますので注意します。
なつ 標準:1日2~3回
  • 葉からの水分蒸散作用に加え、鉢土表面からも水分が蒸発しますのでとくに乾燥しやすい時期です。
  • 鉢穴から水が十分滴るくらいまで灌水します。
  • また2~3日に1回は日中を避けて葉水を与え、葉の活力維持に努めます。
あき 標準:1日1回または2日に1回
  • 実りの秋は植物の充実期で、必要な水分量は夏に比べ格段に少なくなります。
  • 灌水は乾いたら行う程度でよく、灌水頻度を少なくして1回の灌水でたっぷりと与えるようにしてください。
ふゆ 標準:2~4日に1回
  • 水分の消費量が少ない時期ですが、つい灌水を忘れがちです。
  • 冬の灌水は、夕方までに鉢内の停滞水分がなくなるように午前中に灌水します。鉢の中に水分があまり残っていると、夜間の冷え込みで根が凍結してしまい寒害を起こしてしまいます。

樹種別の灌水の実際

松柏類の灌水

一般に松柏類は乾燥に強い植物で、一般的には乾かし気味に育てるのがいいとされています。

葉物類の灌水

葉物類は葉の面積が広いものが多いので、水切れによる葉焼けを起こしやすいのです。

花物類の灌水

花物類は一般に水切れに弱い樹種です。

実物類の灌水

開花時期と結実時期の水切れは、落花(落果)につながりますので灌水不足には注意しなければいけません。

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東京都世田谷区在住の盆栽趣味者。
自宅ルーフバルコニーで小品盆栽や山野草を愛でています。
初代愛猫『アロ』は天国へ行ってしまいましたが、現在は2代目ネコ2匹を迎えてのんびりと盆栽ライフを楽しんでいます。

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