盆栽に使われる樹種はとてもたくさんあるので、本来はそれぞれの植物が好む土の質や配合は全部違うものです。
植物にとっていい土というのは、その植物が元気に生育している場所の土をそのまま持ってきて使うのがいいわけなんですが、その植物の生育している場所まで出向いて土を採ってくる、あるいは再現するのは大変です。
そこで、植物がよく生育できる土とはどんな土かを考えてみることにします。
赤玉土(細粒サイズ)
植物の根は土の中で四方八方に張り巡り、地上部を支えています。
また、土の中の水分や養分は、植物の生育には欠かせないものとして根から吸収されます。
さらに根自体も呼吸をしていて、土中の酸素を吸って炭酸ガスを排出しています。
つまり、植物にとって土は自分の体を支える重要な足場であり、土の中の水分・養分・酸素は生命維持のために必要不可欠なものです。
これに生理活性が活発になる最適な温度が揃って調和がとれた時が、最適条件だといえます。
当然ですが、天然の土と限られた容量の盆栽用土では再現性に限界があります。
また自然の土には市販の用土には入っていない天然の栄養分が豊富ですが、植物によくない害虫や雑菌も含まれています。
さらに中には除草剤が散布されているかもしれないので、そのまま使用すれば植物に大変な影響を与えます。
少しくらいならと外から土を採取してくるのは、各地町村の条例違反になる可能性もありますので、土は清潔で粒径も揃った市販の用土を購入して使ってください。
用土は園芸店や盆栽園、ホームセンター、インターネットなどで簡単に入手でき、種類やサイズも豊富に揃っています。
盆栽の用土の条件は、
この3つです。
そして保水力と排水性という矛盾した条件を満たすものが、粒土(りゅうど)です。
土の粒子が小さければ粒の中によく水分を含んで保水力が高くなり、反対に粒が大きければ粒と粒の間の空間が大きくなり、排水がよくなります。
水分を好む樹種であれば、細かい粒土を多く混ぜたり保水力の強い土を混ぜるといった工夫をしていくことになります。
もう1つ用土には、土台の役割と物理的な要素があります。
よく、排水性をあげるために細かい粒土に角張った砂利を混ぜることがあります。これは角張っている砂利に根が当たると、そこで分岐して根の生長がよくなるからです。
細かく挙げるとたくさんありますが、盆栽用土の条件としては保水・排水・酸素の3点に留意して用意してください。
用土に予め栄養分の含まれたものは、盆栽の場合は好ましいものではありません。
水分や養分は必要な量を後から与えればいいのです。
樹種によって使う用土は違うとお話しましたが、それぞれの樹種全てに適した用土の配合を用意するのは大変です。
用土は最初から何種類も揃える必要はありません。
用土条件があっていても、これから入手しようとする樹種が自分の棚環境にあっていなければ、用土や日頃の管理をどんなに気をつけてもいずれ枯れます。
基本用土を赤玉土として、最低限度の条件を満たせれば合格くらいの気持ちでいてください。
自分の棚環境で育つ樹種を選び、日頃の管理をきちんとしていれば、少しくらい異なる用土配合でも充分に生きていける順応性を植物は持っています。
盆栽に使われる代表的な用土を紹介します。
それぞれ単用で使われることは少なく、樹種によって適当な配合で使います。
盆栽の基本用土として広く使われていて、ほとんどの植物に使えます。
大・中・小・極小・細粒といろんな粒径が揃っています。
樹高数cm~十数cmの小品盆栽サイズでは極小粒(粒径2~3mm)から細粒(粒径1~2mm)が最適です。
粒がそろっていて硬い硬質・焼成赤玉土がお勧めです。
粒は比較的しっかりしていて、粒と粒の隙間に空気が入るので根が酸欠になりにくく良好な土壌環境を作ることができます。
また粒の中に水分を蓄える性質があり保水力にも優れています。
ただし根の成長がよすぎるので徒長しやすいとこが注意点。
粒が固く丈夫です。多孔質で角ばっているので、根の分岐が促される効果があります。
排水性も高く、単用では鉢底に使われたり、あらゆる盆栽用土に混合されます。
酸性の土を好むサツキに合う用土として覚えておきたい土です。
多孔質で保水力が高いので、単独では挿し木用土としても使用されます。
多湿になりやすいので表面に藍藻類やコケが生えやすいものです。
非常に柔らかくて崩れやすいので、一度ふるいにかけたものを水で洗って半乾き(一番固くなる)の状態で使うといいようです。
排水・通気性に優れていて、松柏類などは赤玉土と混ぜて排水効果をよくします。いろいろな粒径のものがありますが、粒が大きいほど排水性が高くなります。
質のいい有名な産地としては、矢作川砂や鹿島砂、朝明砂、天神川砂、白川砂などがあります。
花崗岩質で、とても硬くて割れにくく、熱に対しても安定した物性を示しています。
細かい粒径ものはサボテンや多肉植物などにも向いていて、種まきや挿し木用の挿床としても使用されています。
再利用可能な用土で、水で洗ってよく乾かしておけばまた使うことができます。
籾殻を炭化させたもので、一般に売られている『くん炭』は籾殻くん炭のことを指していることが多いです。
土壌中の有害物質を吸着し殺菌効果も望めます。
アルカリ性なので酸性土壌の中和に役立ち、基本用土に少量配合することで根腐れ防止や耐病性を高めると言われています。
火山灰土を園芸用に加工したもので硬く鉄分を多く含んでいます。
山草類に使用したり化粧砂にもなります。
硬くて重い砂なので、他の土と混合すると固くなってしまうこともあるので使うなら小さめの粒径を単使用したほうがいいでしょう。
排水性を高めるために基本用土に少し混ぜて使用することもあります。
粒子が細かくしっとりしています。
昭和初期頃に黒ポカ土と呼ばれていたものも似たものです。
枝先の細やかさを要求されるような雑木類や、小品盆栽によいとされています。
粘土質で湿り気があり、石付き盆栽の仕立てに使われます。
根を這わせて、コケで覆ったりするときの下地に使います。
取り木後や植えかえ直後の水分保持・保護にも効果的です。山草類では鹿沼土と混ぜて使用されることがあります。
雑木類などによく混ぜて使われる基本用土です。
葉や枝の残骸が残っていない、質感的には黒土に近いものがよいでしょう。
自然から採ったものなら、病菌やミミズの卵とかが混じってることがあるので、よく日光消毒してから使いましょう。
チッソ、リン、カリ等の栄養分が入っているため、肥料分ともとらえてよいのですが、ほかの微量養分は不足しがちなので、腐葉土を使っているからといって施肥が不要になるわけではありません。
ゴロ土ともいい、排水性の向上や用土が流出しないように鉢底に敷く比較的粒が大きくて硬い石です。
鉢穴には鉢底ネットを固定し、その上に敷きます。
排水性が高く、根腐れの防止にもなります。
使用する用土によって、粒の大きさも多様にあります。
小さい盆栽は、鉢が小さく入る用土の量も限られていますから、用土に対して粒径の大きな(小粒~中粒)赤玉土や桐生砂をゴロ土として使用します。
用土の配合例を樹種別に紹介します。
赤玉ひとつとっても、花物・実物類など水を好む物と、松柏類など排水性が重要視されるもので配合に違いがあります。
ただしここまでお話したように、無理に全てその通りの用土を用意することはありません。
それぞれの樹種の最低限度の条件を満たせれば充分くらいに考えておいてください。
クロマツ | 赤玉土5、黒土2、天神川砂3 赤玉土6、桐生砂または山砂4(関西では山砂のみ) |
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アカマツ | 赤玉土6~7、天神川砂または桐生砂3~4 |
ゴヨウマツ | 赤玉土6~7、天神川砂または桐生砂3~4 |
ニシキマツ | 赤玉土7、天神川砂または桐生砂3 |
エゾマツ | 赤玉土5、天神川砂または桐生砂3、鹿沼土2 赤玉土6~7、鹿沼土3、桐生砂1 |
トショウ | 赤玉土5、天神川砂または桐生砂5 |
シンパク | 赤玉土5、天神川砂または桐生砂5 赤玉土4、天神川砂または桐生砂5、石灰砂1 |
ス ギ | 黒土5、天神川砂3、腐葉土2 赤玉土5、鹿沼土3~4、桐生砂1~2 |
ヒノキ | 黒土5、腐葉土2、天神川砂3 赤玉土7、桐生砂3 |
コメツガ | 赤玉土4~5、桐生砂5~6 |
ヒ バ | 黒土4、赤田土3、桐生砂3 |
イチイ | 赤玉土4、天神川砂または桐生砂6 |
ケヤキ | 黒土4、赤玉土3、腐葉土2、桐生砂1 |
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カエデ | 黒土4、赤玉土3、腐葉土2、桐生砂1 |
モミジ | 黒土4、赤玉土3、腐葉土2、桐生砂1 黒土7、腐葉土1、桐生砂2 |
ブ ナ | 赤玉土5、黒土3、桐生砂2 |
ソ ロ | 黒土5、赤玉土3、桐生砂2 |
ハゼ | 黒土5、赤玉土2、腐葉土2、桐生砂1 ※実生で紅葉させるには砂植え |
イチョウ | 黒土5、赤玉土2、天神川砂または桐生砂3 |
ク ワ | 黒土5、赤玉土2、腐葉土2、桐生砂1 |
シラカバ | 黒土6、赤玉土2、天神川砂または桐生砂2 |
ツ タ | 赤玉土6、腐葉土2、黒土1、桐生砂1 |
ニシキギ | 黒土7、腐葉土1、天神川砂または桐生砂2 黒土6、赤玉土3、桐生砂1 |
エノキ | 赤玉土3、黒土6、桐生砂1 |
カシワ | 赤玉土5、黒土3、天神川砂2 |
ニ レ | 黒土5、赤玉土3、天神川砂または桐生砂2 |
ヤナギ | 黒土3、鹿沼土3、赤玉土2、桐生砂2 |
ギョリュウ | 黒土3、鹿沼土3、赤玉土2、腐葉土1、桐生砂1 |
ヒメシャラ | 赤玉土4、黒土4、桐生砂2 |
コナラ | 赤玉土5、黒土3、桐生砂2 |
チリメンカズラ | 赤玉土5、黒土3、天神川砂または桐生砂2 |
メ ギ | 黒土5、赤玉土3、桐生砂2 |
ハンキンハゼ | 黒土6、赤玉土3、天神川砂1 |
タ ケ | 黒土4、腐葉土2、赤玉土4 |
シュロチク | 赤玉土6、桐生砂3、腐葉土1 |
ウ メ | 赤玉土4、黒土または腐葉土4、桐生砂2 |
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サクラ | 黒土3、赤玉土4、天神川砂または桐生砂3 |
ボ ケ | 黒土5、赤玉土3、天神川砂または桐生砂1、腐葉土1 |
カイドウ | 黒土4、赤玉土3、天神川砂または桐生砂1、腐葉土2 |
サツキ | 若木:鹿沼土7、水苔または山苔3 成木:赤玉土4、鹿沼土4、水苔または山苔2 |
ユスラウメ | 黒土6、赤玉土2、桐生砂2 |
フ ジ | 黒土3、腐葉土3、鹿沼土2、赤玉土2 赤玉土5、荒木田土3、腐葉土2 |
オウバイ | 黒土3、黒ポカ土3、鹿沼土3、天神川砂1 赤玉土4、腐葉土4、桐生砂2 |
ロウバイ | 黒土3、黒ポカ土3、鹿沼土3、砂1 |
ツバキ | 黒土6、赤玉土3、砂1 |
シャクナゲ | 鹿沼土4、腐葉土3、赤玉土1、山苔2 |
サンザシ | 黒土6、赤玉土2、桐生砂2 |
コブシ | 赤玉土5、黒土3、桐生砂2 |
サルスベリ | 赤玉土4、黒土4、天神川砂または桐生砂2 |
クチナシ | 黒土5、赤玉土3、桐生砂2 |
サザンカ | 黒土6、赤玉土3、腐葉土1 |
アセビ | 赤玉土4、黒土3、腐葉土1、桐生砂2 |
ツツジ | 赤玉土4、黒土4、桐生砂2 |
ハナザクロ | 黒土5、腐葉土3、桐生砂2 |
ネ ム | 黒土5、赤玉土2、桐生砂2 |
チ ヤ | 黒土6、赤玉土2、桐生砂2 |
ザイフリボク | 黒土5、赤玉土3、腐葉土1、桐生砂1 |
ヒメリンゴ | 黒土3、赤玉土4、腐葉土2、桐生砂1 |
---|---|
カリン | 赤玉土4、黒土3、桐生砂2、腐葉土1 |
マユミ | 黒土5、赤玉土3、桐生砂2 |
ザクロ | 黒土5、腐葉土3、桐生砂2 赤玉土3、荒木田土3、腐葉土2、桐生砂1 |
ナ シ | 赤玉土5、黒土3、腐葉土1、桐生砂1 |
カマツカ | 黒土5、赤玉土3、天神川砂または桐生砂2 |
ベニシタン | 黒土4、赤玉土3、天神川砂または桐生砂3 |
グ ミ | 赤玉土4、黒土2、腐葉土1、荒木田土1、桐生砂1 |
ピラカンサ | 赤玉土4、黒土3、腐葉土2、桐生砂1 |
アケビ | 黒土4、赤玉土3、桐生砂2、腐葉土1 |
ブシュカン | 赤玉土5、黒土3、天神川砂または桐生砂2 |
キンズ | 赤玉土5、黒土3、天神川砂または桐生砂2 |
カ キ | 黒土4、赤玉土3、腐葉土2、桐生砂1 |
スモモ | 赤玉土5、黒土3、天神川砂または桐生砂2 |
ナンテン | 赤玉土6、黒土2、腐葉土1 |
ウメモドキ | 黒土7、赤玉土3 |
ツルウメモドキ | 黒土5、赤玉土3、腐葉土1、桐生砂1 |
ナツメ | 赤玉土6、黒土2、桐生砂2 |
ズ ミ (深山かいどう) |
黒土4、赤玉土3、桐生砂2、腐葉土1 |
ム ベ | 赤玉土5、鹿沼土2、腐葉土2、桐生砂1 |
ク リ | 黒土6、腐葉土2、天神川砂2 |
ク コ | 黒土5、赤玉土3、腐葉土1、桐生砂1 |
ビ ワ | 赤玉土6、黒土2、腐葉土1 |
ビナンカズラ | 黒土4、赤玉土4、腐葉土1、桐生砂1 |
イワヒバ | 鹿沼土4、水苔6 赤玉土3、鹿沼土3、水苔4 |
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サギソウ | 水苔10 ケト土5、荒木田土5 |
フクジュソウ | 黒土5、赤玉土3、桐生砂または天神川砂2 |
ア シ | ケト土6、赤玉土2、桐生砂2 荒木田土4、黒土4、天神川砂または桐生砂2 |
ツルコケモモ | 赤玉土4、鹿沼土3、水苔3 |
ヤブコウジ | 黒土4、鹿沼土3、腐葉土2、桐生砂1 |
ユキワリソウ | 黒土6、腐葉土3、桐生砂1 |
スミレ | 赤玉土5、腐葉土3、桐生砂2 |
セキショウ | 天神川砂4、ケト土5、赤玉土1 |
フクロソウ | 黒土4、鹿沼土3、赤玉土2、桐生砂1 |
シュンラン | 赤玉土5、黒土3、天神川砂または桐生砂2 赤玉土5、鹿沼土5または水苔10 |
ベニチガヤ | ケト土6、赤玉土2、天神川砂2 荒木田土10 |
イカリソウ | 黒土3、赤玉土3、腐葉土2、桐生砂1 |
トコナツ | 赤玉土5、鹿沼土3、腐葉土2 |
マツバラン | 赤玉土6、黒土2、天神川砂または桐生砂2 |
トクサ | ケト土6、赤玉土2、桐生砂2 荒木田土4、黒土4、天神川砂または桐生砂2 |
サ サ | 黒土5、腐葉土3、鹿沼土または桐生砂2 |
東京都世田谷区在住の盆栽趣味者。
自宅ルーフバルコニーで小品盆栽や山野草を愛でています。
初代愛猫『アロ』は天国へ行ってしまいましたが、現在は2代目ネコ2匹を迎えてのんびりと盆栽ライフを楽しんでいます。
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