2016年にも心温まる話はあった
- 2016年12月19日
2016年は何はともあれ、印象深い年ではあった。
罵詈雑言にまみれた政治対立、甚大な被害をもたらす自然災害、終わらないテロ攻撃、激しい戦禍……。腹立たしく、暗く沈鬱なニュースが連日のように流れた。
年明け早々にデイビッド・ボウイさんとアラン・リックマンさんの訃報が相次ぎ、春にはプリンスさんの急死に衝撃が走るなど、多くの著名人が物故者となった。
それでもなお、思わず頬が緩み心温まるニュースは、決して皆無ではなかった。私たちのお気に入りをいくつか並べてみた――。
(1) ホワイトハウスでオバマ夫妻と踊った106歳
2016年は106歳の見事なダンスに、世界が「お見事」とうなった年でもあった。
106歳のバージニア・マクローリンさんは今年2月、ホワイトハウスでオバマ大統領夫妻と一緒に踊り、運動不足な世界中のカウチポテトを赤面させた。
107歳となった今も変わらず意気軒昂なマクローリンさんは、米国初の黒人大統領を前に、じっとしていることなどできなかったのだという。
(2) プラスチック袋のジャージーを着たメッシ・ファンの男の子
106歳の次は当時5歳の男の子だ。
サッカーのスーパースター、リオネル・メッシ選手が大好きなアフガニスタンのムルタザ・アフマディ君は、プラスチックの袋で作った自家製の「メッシ」ジャージー姿で一躍有名となった。
写真がインターネットに掲載されるや「この子は誰?」と人探しが始まり、ついに特定されるとメッシ自身からサイン入りジャージが送られ、しまいには今月半ばにカタール・ドーハで行われた親善試合でムルタザ君はあこがれの人と一緒にピッチに立つに至った。
(3) 韓国と北朝鮮が(ある意味で)一つになった瞬間
この写真は一見、世界中で若者がいつでもどこでも撮り続ける普通のセルフィー(自撮り写真)に見える。
しかし、リオ五輪の女子体操個人種目に出場した、会場練習で撮影したこの1枚には、特別な意味があった。対立する両国の間に一瞬でも、協調と融和が出現したのだ。
とはいえ、五輪選手が全員、常ににこやかだったはずもない。
米国競泳のマイケル・フェルプス選手が、南アフリカのチャド・レクロス選手を前に、「目線で殺さんばかり」の表情をしていた写真も、インターネットで大いに拡散された。
(4) イタリア地震の驚異的な救助
イタリア中部で8月24日未明に起きたマグニチュード6.2の地震では、298人が死亡し、複数の町村が壊滅的な被害を受けた。
しかし悲劇と犠牲の合間にも、がれきの下で勇敢に耐えた人や動物の救出に胸をほっとなでおろす瞬間も相次いだ。
がれきの下で9日間も耐えて助け出されたゴールデンレトリーバー犬「ロメオ」の、穏やかに落ち着き払った姿は、多くの読者の心に響いた。
(5) 七つの海を旅するニワトリ
人の心をつかむのは、ニワトリだって得意だ。
特に2016年には、大好きな人間と一緒に七つの海を航海してまわる雌鶏のモニークが注目された。2歳のモニークはフランス人の飼い主ギレック・スデーさんと共に船で暮らし、大西洋を渡り、カリブ海をめぐり、フェイスブックやインスタグラムの人気者となった。
さあ皆さんご一緒に。「かーわーいいいいいい」。
(6) 崇高なる友情……想像を絶する犠牲を友人のために
ニワトリが世界の海を旅する一方で、人間は狭いところに入り込んでいた。
ノルウェーで8月、想像を絶するほどに友人思いの男性(20)が、友人が公衆トイレに落とした携帯電話を救出しようと、便器の中に入って行ったのだ。
このトイレは水洗ではなく、季節ごとに清掃される仕組み。
カトー・ベルンツェン・ラーセンさんは、友達が電話を落として困っているのを知り、足から便器に下りて行った。しかし、たまった排泄物にももまで埋まった時点で、自力で這い上がれないことが分かった。
しかも悪臭に耐えかねて吐いてしまったベルンツェン・ラーセンさんは、消防士たちに救出されるまでそのままの状態で1時間、じっとしていなくてはならなかった。しかも、電話は結局、見つからなかった。
(7) 6歳の少年の思いやり
2016年の様々な出来事のせいで人間不信に陥りそうな人には、6歳のアレックス君が救いとなるかもしれない。
米ニューヨークに住むアレックス君。「あの子をうちに連れて来てください」と。「あの子」とは、シリア・アレッポでほこりと血にまみれて呆然と座っていた5歳のオムラン・ダクニーシュちゃんのことだ。
世界各地で大勢が衝撃を受けて怒りにかられた画像を、アレックス君も目にして、そして大統領に手紙を書いたのだという。
オバマ大統領はアレックス君に感銘を受けて、国連でその手紙を紹介したばかりか、11月には自らホワイトハウスでアレックス君を歓迎した。
(8) もじゃもじゃ大パニック
心温まるというよりはB級ホラー映画のような話だが、豪南東部のビクトリア州で回転草が異常発生し、大量の枯れ草が地元の町を「襲う」という騒ぎは、世界中の多くの読者をなごませた。
とはいえ、もじゃもじゃ被害にあった町の人たちは、あまりなごまなかっただろうが……。
(9) 終生現役の2人
いくつになっても学び続ける意欲を、いかに持ち続けるか。ネパールと英国の高齢男性が、お手本を示してくれた。
ネパールのドルガ・カミさん(68)は、子供6人と孫8人のいるおじいちゃんだ。子供の頃は貧しくて学校を卒業できなかったが、妻を亡くしたのを機に、「悲しみを忘れるため」学校に戻ろうと決心。今では14歳や15歳の生徒と同じ教室で学び、体育の授業にも参加している。教師になるのが目標だ。
英国デボンのジョー・バートリーさん(89)は、英空軍出身。妻キャシーさんを2年前に亡くし、「何もすることがなくてただ座ってるだけで、あまりに退屈だった」ため、「退屈で死にそうだ、助けて!」と地元紙に職探しの広告を出したところ、カフェとスーパーで働くことになった。
それでは皆さん、メリー・クリスマス。
(英語記事 The stories that prove 2016 was not the Worst Year Ever)