活動リポート(国会編)

カジノ立法化に向けて

野田聖子 衆議院議員・自由民主党「国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟」会長
岩屋 毅 衆議院議員・同 事務局長
 

 カジノ立法化についての議論や機運が高まってきていると思うのですが、自民党の国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟としての取り組みの現況はいかがでしょうか。

岩屋 平成14年12月に「国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟」を発足させて活動してきています。発足前は「公営カジノを考える会」で議論をしてきました。関係省庁からのヒアリングも先般行っており、事務的な作業はしっかり進めながら、今般の総選挙で議員連盟のメンバーにも入れ替わりがありますので体制を再び整えて、平成16年初めには再スタートしたいと考えています。法案の要綱まではいかないが輪郭くらいは早く示したい。

野田 官房長官のほうにも話をしていますが、具体化にはやはり国民の指示の形成が大事だと感じています。現在の世論はほぼ半分の人がカジノに賛成のようですが、さらにカジノ推進への世論形成を強めていきたい。私のところにも「競馬や競輪パチンコなどこれだけギャンブルが蔓延しているのに、なぜまた増やすのか」といった反対意見が来ます。そういった方々にカジノの意義をどう説明するか、その辺ももっと詰めることが大事だろうと考えています。

岩屋 カジノは問題の性格上自民党だけの話ではないと思うので、できるだけ賛同していただける人や政党にも声をかけて超党派の議員連盟という形で議員立法化を探っていきたいと思います。民主党の中にも関心の高い人もいらっしゃる。賛同者がかなりのボリュームになれば強い推進力になるでしょう。

 カジノの導入意義としては公共財源確保とか国際観光振興がありますね。

野田 それに加えて地域振興も大きな柱ですね。その三つのどれも大事です。また、私は日本や国民の成熟という意味もあると思います。今まで日本は子どもの国だからダメなものはお上がシャットアウトする、だから国民は何も知らず告げられずにいたのではないでしょうか。でも、それでは国民自身が成熟しない。大阪商業大学の谷岡学長もつねづね仰っていますが、成熟した国の成熟した人間が与えられた権利として選択できる、例えばカジノがあってもする・しないは個人の自由で後は自己責任、という国民性をつくっていかなくてはならないと思います。

岩屋 財源、観光、地域振興、いずれも時代のニーズです。政府も観光立国を目指そうということで観光立国懇談会をつくりましたが、自民党の中でも議論して、新しいエンターティメント施設を作ろうということもメニューとしてあげていただきました。日本の最大の観光資源は文化、伝統、歴史、自然であると思いますが、新しい大人のエンターティメント文化の創造はこれから不可欠だと思います。カジノはそれにマッチする。それから三位一体の改革の議論をやっているわけですが、地方が独自の財源をどうしたら持てるかはなかなか困難を極める問題ですが、カジノをそれに役立てることもできる。新しい産業、雇用の創造、新産業の育成、こうした時代の要請に答えるような良い提案もカジノを中心にできるのではないかと思っています。

野田 これから日本は少子社会の中で高齢化が進んできます。どう考えてもこれからは社会福祉にお金が一番かかってくる。そのとき、いたずらに消費税を上げるような国でなくて、例えばそういうプレジャーから得た収益を使ってゆくという知恵もある国でありたい。どんなに公共事業を減らしても高齢化で社会保障費が増えれば国債を発行しなければならないわけですから、そこをカジノで補うという発想があっても良いと思います。

岩屋 福祉と医療、教育、歴史的町並みの保存をふくめたまちづくりとか、もう少し力を入れたいと思っているものでも財政的に思うに任せないものもたくさんあります。そういうところにカジノを通じて得られた収益を使えば、地域の皆さんのご理解も得やすいと思います。そういう言わば目的税化が良いのではないかと思います。

 ギャンブルというと国民には青少年への悪影響など懸念もあり、対応が必要と思われます。

野田 やっぱり、厳格にすることが大事ではないでしょうか。全世界どんなカジノへ行っても未成年者はシャットアウトです。むしろ今の競馬場やオートレース場に子供を連れて行ったり、パチンコホールもやってはいけないが入っていけないことになっていないので子どもが中にいたりする、そういうルーズなところを直してゆくことが必要です。大人の世界と子どもの世界は違うというけじめが必要です。未成年者は入れない、IDがないと入れない、という大人の社交場のルールを示すといったことではカジノがむしろお手本になるかもしれません。

岩屋 社会や青少年に対する悪影響の議論はサッカーくじのときもありましたが、toto(サッカーくじ)が始まって子どもたちが不良化したか、学校が賭博場のようになったかというとそんな事例は全くないわけであって、過度に心配しすぎるのもいかがなものでしょうか。

野田 あと、依存症の問題ですが、依存症はどんなものにでもあります。アルコールにもあります。今の日本はギャンブルについての依存症については放置されているのが実態ですから。一方、カジノの収入のいくばくかを依存症患者への治療やそのための基金にしている国も海外にはありますよね。依存症に悩む人々をサポートしていくということもしっかりうたうべきでしょう。

岩屋 カジノは禁止されていることでかえってアンダーグラウンド化している面もあります。ヤミカジノもありますが、そういうものはカジノが合法化されると成り立たなくなってくると思います。厳しい規制の下での正規の合法カジノの開設でヤミカジノによるアングラマネーの流れも遮断して行けるのではないでしょうか。

 カジノができると既存のギャンブルに影響を与えるという話もありますが、どうお考えですか。

野田 カジノ導入でパチンコ業界の反発もありましたが、そのときのイメージはパチンコホールと同じ数だけカジノができるというイメージでした。今、議連で考えているのは、極めて限定的に数少ない拠点で行うというもので、パチンコ店と競合するわけではありません。また、大衆娯楽としてのパチンコとは違ったゲーミングとしての楽しみ方を提供するようなカジノを想定しています。その他、パチンコにはさまざまな規制があります。賞品の上限とか、場内換金ができないなどです。そういうこともこの際検討してはどうでしょうか。そういう前向きの流れも一部のパチンコ関係の人から出されています。また、公営ギャンブルは経営の難しいところも増えてきました。今の時代は民間の活力でさまざまなノウハウと自己責任でやってもらうべきだと思います。中をとって公設民営というアイデアも出てきていますが、レジャーについて役人の発想でやれというのは無理があるしコストがかかります。カジノでは今までと全く違う仕組みを考えています。

岩屋 パチンコや公営ギャンブルは一部例外もありますが、観光資源としての役割は期待できないですよね。国際観光産業という以上、例えば中国から来てもらうときに日本の競馬場やボートレースに来てくださいではなかなか来ないでしょうから、カジノがあって周辺に楽しい遊び場があってという価値を作らないといけないと思います。

 それでは、わが国でのカジノのイメージはどのようなものを想定されていますか。

野田 カジノは単体で何かを為しうるものではなく、カジノがへそになってその周辺にエンターテイメント、隣に遊園地があって大人にも子どもにも対応しているとか、ショッピングやレストランなどがあるというイメージです。日本にはショービジネスが少ないという指摘もありますが、少ないとはいっても例えば宝塚歌劇はあるし、格闘技のK−1などすごい人気ですよね。それを組み合わせにすれば面白いものができるのではないでしょうか。ひとつでは十の力しかないが、組み合わせて百の力になればよいと思います。

岩屋 年末になるとホテルではディナーショーばかりですよね。俳優や歌手を呼んで食事と歌を楽しむわけですが、それに加えてカジノも一緒に楽しめるゾーンができるといいですね。また、公営ギャンブルはうまく行かないところが増えていますし、パチンコもきちんとした産業として社会認知されているかというと必ずしもそうではなく、わが国ではゲーミング産業そのものが未成熟です。カジノの導入で日本でも成熟したゲーミング産業が形成され、エンターテイメント産業やショービジネスもそれとともに発展して行ってくれれば、より成熟した国になってゆけるのではないでしょうか。民間の皆さんに大いに挑戦していっていただきたいと考えています。

野田 日本人は海外でお金を落としています。日本にそういうものができれば、国内でも十分楽しいではないかということで国内旅行が楽しめます。実際にラスベガスはそうなっています。この国はそういうものがなくて、カジノはそういう起爆剤になればいいんですよね。

岩屋 今は外国人がビジネスで来ても接待するところがなくなってきました。昔の赤坂にあったラテンクォーターなどはお酒も飲めるし、ショーも見れたのですが、そんなところがどんどんなくなっていきました。みなさん、外国人を連れて行くところがなくて困っているようです。一方、ラスベガスは今や世界最大のコンベンションシティーです。何故かというと、アフターファイブの楽しみが多いんです。五時までは一生懸命仕事や勉強、会議をやって、その後は自分だけでも楽しいし、家族と行っても楽しい場所がふんだんにあるから人が集まるんです。ぼくは学生時代に友人と卒業旅行でアメリカに行きました。貧乏旅行でしたが、ラスベガスへ行ってみると砂漠の真ん中にあれだけ電気を使って水を使ってものすごい人工の街ができているわけですね。そして、その街がものすごく栄えている、その時見た印象がずっと残っています。また、ヨーロッパ型のカジノもあるわけで、モナコとかドイツのバーデンバーデンとか美しい自然のたたずまいの中に社交場としてのカジノが立派に運営されています。そういうものをつくりたいという期待は国民にもきっとあると思います。

 いつ、どこにどんなカジノができるのか、ということに自治体や民間の注目が集まってきていますが、いかがでしょうか。

野田 カジノの設置はおそらくコンペによって決まります。私たちは法律はつくるが、立地には関わらない。カジノにも儲かるところと儲からないところがあるでしょうが、それは政府が決めるのではありません。現在、私たちが考えているのは、省庁から独立した行政委員会をつくって全くニュートラルな人たちがプロフェッショナルの立場から、採算が取れるか収益が上がるか、人々を楽しませることができるのかなどの観点で計画を承認し、コンペを通じてカジノの提案を選ぶようにする、ということです。

岩屋 それは、カジノ設置に名乗りを上げた自治体から計画を提案していただき国が審査し許諾をするというスキームになります。しかし、そうは言っても、どんどん手を挙げられても実際には困るだろうし、もっと国民の皆さんに理解をしやすくするためには、例えば、沖縄振興のためには沖縄にあっても良いのではないかとか、東京は日本の中心で成功する確率が高いのでまず東京でやってもらったらどうかとか、熱海や別府など熱心な地方の温泉都市もあるのでそういうところにやっていただいて、「カジノは本当に地域振興に役立っているのだなあ」という事例を作っていただくのも良いと思います。法律だけ作ってさあどうぞというのが良いのか、場所の選定まである程度戦略的に漸次場所を選定していったほうがよいのか、そこはまだ議論の最中です。

 カジノやその意義について、今後さらに国民への理解を高める取組みが必要ですね。

岩屋 韓国、マカオなど、周辺諸国も観光に力を入れ、これからどんどん洗練されてゆくでしょう。香港に東京を上回るディズニーランドも計画されています。このままでは日本はますます観光赤字国になってゆく懸念もあります。国際競争に打ち勝つという意味でも国内にそういう吸引力を持つ観光資源をつくることは大事ではないでしょうか。そして、国際観光は外国人に日本に来てもらうことであって、日本を外国の方に理解してもらうという点では国際協調でもあるのです。日本のリゾートは遠く電車を乗り継いでたどり着いたら宴会の後は卓球台しかない、というイメージです。しかし、そういうことじゃこれからはだめだと思います。ただ飲みに行くだけではなく、ショーがあったりカジノがあったりする複合エンターテイメント空間が観光立国のためにも重要だと思います。私はパチンコもマージャンもやらないし、競馬競輪は行ったことのない、ギャンブルはやったことのない人間です。私の出身は大分ですが、別府にも昔からカジノを作ったらどうかという話はありました。商工会議所の会頭さんが、ぜひ別府でカジノができないかという話があって、「実は別府でというより日本全体でカジノができないかと私も思っていたのです」という話をしていました。そうしているうちに石原東京都知事や太田大阪府知事もカジノ推進を提起されたし、宮崎でもシーガイアでどうかと県議会で議決がされたりしてきました。自分が考えていたことが、実はいろいろな人も同じようなことを考えていることに気づき、それならばと合法化に向けた勉強を始めてみました。こういうものは政府に提案させるのは難しい、議員ががんばって議員立法で進めたいと思います。平成16年のできるだけ早い時期に要綱案を作ってシンポジウムなどで世に問い、そこから湧きあがってくる議論を吸収し進めていきたいと考えています。

野田 やはり、世論形成や盛り上がりが大事です。日本では長い時間をかけて検討を重ねたものでも、いざ出すといやなものはいやといった反対が出ます。どんなカジノをどんな目的でつくっていくのかをもっと検討し、広く伝えて行くことが必要です。気がつくと、この国には選択肢があまりになさすぎるのではないでしょうか。ギャンブルもただ禁止するのではなく、それをするかしないかは自己責任で選ぶべきだと思います。それは国家が国民を信頼しているかのバロメーターではないかと思います。カジノはその一歩でもあります。この国が成熟した大人の国になってゆく一歩です。

<聞き手 JAPIC都市型複合観光事業研究会委員
 太下義之(UFJ総合研究所)、山田恒久(鹿島建設(株))>