ライターという仕事のやりがい

投稿者: | 2016年12月19日

machine-1639234_1920

いま僕は、取材して記事を書くというライターの仕事をしている。最近ではスタートアップの起業家に取材して記事を書く機会も増えてきていて、最近になって強く感じているものがある。それは、ライターという仕事が与えてくれる「やりがい」だ。

メディアと取材対象とのあいだには、いわゆるWin-Winの関係が強い。たとえば日頃からお世話になっているTechCrunchでは、スタートアップからの情報提供をきかっけに取材が決まり、その内容を記事化することが多い。取材対象であるスタートアップがメディアであるTechCrunchにみずから進んで情報提供をするのは、記事を公開することによって企業や自社サービスの知名度アップが狙えるからだ。

一方で、TechCrunchは取材を通して内容の濃い記事を公開することで読者の獲得を狙える。もう一歩踏み込んでいえば、読者はリリース直後のサービスやスタートアップの動向を知ることができるので、ここにはWin-Win-Winの関係があるといえる。

もしかしたら、自分が書いた記事をきっかけにサービスの利用者が急上昇する、なんてことがあるかもしれない。記事がきっかけで新しい資金調達が決まった、なんてこともあるかもしれない。そんな可能性があるからこそ、キーボードを叩く指には力が入り、胸はワクワクするのだ。

「なにを今さら」だとか、「ライター以外の職業だってそうだ」という声が聞こえそうだが、僕が今このことを強く感じるのは、前職での苦い思い出があるからなのかもしれない。僕は大学卒業後、新卒で証券会社に入社した。

別にいやいや入社したという訳ではない。高校か中学のときに父親の本棚にあった「金持ち父さん貧乏父さん」を読んで以来、投資という世界には興味があったし、なにより色々なビジネスがもつストーリーが好きだった。かの有名なウォーレン・バフェットの師匠である、ベンジャミン・グレアムが書いた「証券分析」という分厚い本も読んで、実際にこずかいを叩いて投資もした。

だから、証券会社に入社したときには「好きなことを仕事にできるかも」と思っていた。仕事にやりがいを持てると思っていた。でも、現実はそうはいかなかった。一部の証券会社では顧客のメリットを考えるという視点が欠如しているところもあり、会社の利益のために顧客の利益を犠牲にするということは、少なくとも僕がいた支店では、日常茶飯事だった。

朝が早いのも、夜が遅いのも、休憩がないのもキツかった。でも、心のどこかに引っかかる罪悪感が一番キツかった。

僕は元々小さいころから文章を書くのが無性に好き、だとか、人の話を聞くのが楽しい、だとかいう人間ではなかった。その僕が今こうやって夢中になって仕事に取り組めるのは、やはりこの「やりがい」があるからなのだと思う。

日頃からお世話になっているTechCrunch編集長の西村さんの言葉をお借りしたいと思う。

もともとメディアなんて事業としては吹けば飛ぶような規模なんですけど、ストーリーを伝えることや、「場」を提供することで人の人生すら変えることがあると思ってやっています。というか、「あの記事で人生が変わりました」と言われることがなかったら、ぼくは20年もメディアビジネスを続けて来なかった気がします。 ― TechCrunch編集長 西村賢

誰かの人生を変えるかもしれないというワクワクと緊張感を持ちながら、今後もこの仕事を続けていきたい。


The following two tabs change content below.

木村 拓哉

1991年、愛知県生まれ。カナダを拠点にフリーライター/翻訳家として活動。このブログでは自分の興味関心ごとをマイペースに更新していきます。ベンチャー企業、テクノロジー、WEBサービス、働き方など。自身が運営するWEBマガジン「CanadaLifeMagazine」ではカナダの生活情報を発信中です。詳しいプロフィール

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です