この話の続きです。
私は自分の人生を変えるために、幼少期の「疑似体験」をしようと
スイミングのコーチのアルバイトを始めました。
そこで、本来の目的とは全く関係無いのですが
子供たちから沢山の元気をもらっていました。
(本来の目的とは違うのですが)
今考えると、この頃に子供たちと接していなかったら
警察官をクビになった事で発病した
うつ症状や不眠症などで、どうなっていたかわかりません・・・。
彼らには「人に元気を与える不思議なパワー」があるように思えます。
元々私は「子供が好き」なんて事は全く無かったのですが
スイミングスクールのコーチをはじめて数ヶ月たつと、
無邪気な子供達の可愛さにデレデレになってしまいました。
なにせ、ろくに人に好かれた事が無い私に対して
「コーチ!コーチ!」
といって懐いてくれる子供たちが可愛くて仕方がなかったのです。
わたしを取り巻く周囲の人々
警察官をクビになった直後に1度だけ高校時代の部活仲間から
「飲み会をやるから集まろうぜ」とメールで呼ばれました。
学生時代も友達が全く居なかった私ですが
部活動で3年間を共にした「仲間」がいました。
とは言え根暗な私はみんなとは「仲が良い」とは言えず
あまり会話した事もありませんでしたが・・・。
言い訳をさせてもらえると
そもそもみんな「バイク」の話や「スロット」や「お酒」
の話ばかりしていたので、あまり相性が良くなかったのかもしれません。
飲み会が始まると、みんなの「近況報告」が始まりますが・・・・。
私は隅っこで小さくなって口を開かず、
ただ、みなの話を聞きながらウンウンと首を振り続けました。
みんなの「仕事」の話
私の学校は地元でも最底ランクの高校だったので、
大学へ進学する者などまずいません。
なので自然と「いまの仕事はどうだ?」という話になります。
その「話題」になると、警察官をクビになった私は
さらに小さく小さくなって全力で気配を消し始めました。
当然私にも「オマエ警察官はどうなの?」
と「話題」が振られます。
うわああ・・・・・
人生を「リセット」したくなった話
私は気まずさでモゴモゴしてしまいます。
大体みんなこのあたりで私が警察官を辞めた事を察したようです。
私は声を振り絞って「警察官やめたんだ・・・」と言いました。
でも、もちろん「辞めさせられました」何て恥ずかしくて言えません!
なので「自分に合わなかったから・・・ほにゃらら」
と聞かれてもいない言い訳を始めましたが・・・・・・・・・
みんな大爆笑しており、全く聞いていません。
そして「じゃあ警官やめたオマエに乾杯!」と言って煽り立てています。
みんなもそれに「かんぱーい」と続きます。
考えると、みな「公務員」になった私への嫉妬心があったのかもしれません。
そんな私が「警察官をクビ」になって痛快だったのでしょう・・・。
みんなニヤニヤした表情で私を見つめてきます。
(私の被害妄想の部分があるかもしれません・・・・)
何にせよ、私はあまりの恥ずかしさに
(消えてなくなりたい)そう思いました。
私が名前を変えて「人生をリセット」しようと思ったのも
これが一番おおきなキッカケだったかもしれません。
もちろん「人生を完全にリセット」する
何ていうのは当然不可能な話なのですが・・・。
私はスイミングスクールで「幼少期を疑似体験」すれば
きっと人生が変わる
当時はそう本気で思っていたのです・・・・。
スイミングスクールの日々
人生をやり直すための「幼少期の疑似体験」の場所として選んだのですが
なんと言いますか・・・・半分くらいは
「子育てをしている親の疑似体験」をする事になってしまいます。
(※モチロン親御さんはもっと大変なのでしょうが・・・。)
子供たちは何をするかわかりません!
突然「シッコ!シッコ!」
とトイレに行きたがる子供を抱えてトイレを何往復もしたり。
泣き出す赤ん坊をあやしたり。
子供同士のケンカを仲裁したり。
小学生にもなれば「イジメ」も必然のように発生します。
さらに
「人の物を盗んだり」
「壊したり」
したくなる子供もではじめます。
「イタズラ」だってやりたい放題です!
子供達はカワイイけれど、時に憎たらしくもあります。
大変な事が沢山ありましたが、
そのどれもが「コミュ障」の私にとって良い勉強になったと思います。
子供たちとの会話
スイミングの授業が終ると、私もプールを上がって
ロッカールームで子供たちの着替えを手伝いながら
「イジメ」や「窃盗」の監視を行います。
そこで私は子供たちと毎日色んな話をしました。
話す、と言っても一方的に聞くだけなのですが・・・・。
「学校の事」
「好きな子の話」
「お父さんお母さんの話」
「将来の夢」
などなど・・・・そんな話を毎日毎日聞いていると、
なるほど!確かに!
自分が小学校や幼稚園に通っているような気分になってきます。
楽しいような・・・懐かしいような・・・・・。
(でも自分にはもう戻れないんだなぁ・・)
そう考えると何だか寂しい気持ちにもなりました。
疑似体験は成功?
コミュ障の私は2年間かけて毎日子供たちと会話する事で
「幼少期を疑似体験」し続けました。
そしてその中で
子供はどんな事を考えているのか?
どうすれば喜ぶのか?
という事が何となくわかるようになってきました。
つまり「子供と仲良くなる方法」を学ぶことが出来たのです。
なぜそう思ったのかと言いますと・・・。
スイミングスクールの子供たちは「休み」をもらう事があります。
そして休んだ日の代わりに「振替日」を指定してきます。
そんな時「◯◯コーチが担当の日はどこですか?」
という私のクラスに振替をしたいという問い合わせが
沢山来るようになったからです。
これは本当に嬉しかった・・・。
なので、恐らく「子供から好かれている」=「子供と仲良くなれている」
と確信したわけです。
2年もかけて、本当にくだらない話なのですが・・・。
私にとっては大きな進歩でした。
ですが「中高生」や「大人の人」とは全く会話が出来ません。
受け持ったクラスが殆ど
「赤ちゃん」か「低学年」のクラスだったせいもあるのかもしれません。
しかし私は「大人」とちゃんとコミュニケーションがとれる事こそが
自分の「人生を変える事」だと思っていたので、
次のステップに移らなければいけませんでした。
すすむ人生リセット計画
私の頭の中には
いい会社に入ろうとか
たくさんお金を稼ごうとか
そんな事は全く頭にありませんでした。
ただ「自分に高いコミュニケーション能力が付いて」
普通に友達や彼女が出来きるようになればそれで良いと思っていました。
人生をやり直す、人生を変える、人生をリセットするという事は
よく考えてみると、それはつまり
「警察官をクビにならなかっただろう自分」になるという事です。
私は狂ったようにそれだけを目標にして生きていきました。
スイミングコーチで基礎を学び
接客業で人に慣れ
過酷な飛び込み営業で営業力を鍛え
そして今度はレベルの高い法人営業の会社へ・・・・・
気がつくと
私が警察官をクビになってから
もう10年の月日が流れていました。
10年後
10年の月日が流れ
着実にコミュニケーション能力を高めた私は
「色んなモノを沢山売れる営業マン」になっていました。
小さい会社ですが役職をもらい、
毎日新幹線で全国を飛び回る忙しい営業生活をしていました。
努力を重ね、着実にステップアップしてきた私は
自分のコミュニケーション能力に自信も持っていました。
しかし、ある日突然
わたしは気が付いてしまいました・・・・・。
10年経過しても自分の周りには
友達も彼女も誰もいない事に・・・
(あれ・・この10年間何やってたんだろう)
おかしいぞ・・・・・・何がしたかったんだっけ・・・・・・。
いや、でも営業成績は良いし・・・・
コミュニケーショ能力は高まっているハズ・・・・。
いやいや!待てよ!
関係無いんじゃないか?
話すのが上手になる事と
人から愛されて長く付き合い続ける力は別なのか!?
もうわけがわからなくなっていました。
私は「人から愛される人間」になりたかったハズなのに
いつの間にか「たくさん売上を上げる営業マン」になっていたのです。
そして私の周りには「誰一人いませんでした」
警察官をクビになった時の自分と何が変わっただろうか?
私は
誕生日を祝われたり、
あけましておめでとー
と言われる事もありません。
なんだか急に全てが「虚しく」なってしまいました。
私は会社に戻ると「辞表」を提出しました。
それから私は「町工場」で無言で鉄を削る仕事を始めました。
もう無理に誰かと喋りたくなかったのです・・・・。
自分を変える、人生をやり直す何ていうのは簡単な事ではありません。
いつの間にか私は人生を迷走してしまっていたようです・・・・・。
いや、よく考えると最初からどこまでも狂っていたようにも思えます。
頚椎が曲がり、結局「町工場」も追い出されてしまった私は
本当にリセットされた状態になってしまいました。
家族も
友人も
恋人も
仕事も
手元には何もありません。
さて、次はどこから人生をやりなおせばいいのでしょうか?