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米国の中国マネー依存が薄れたために、トランプ・チームは選挙公約通り、対中強硬策に打って出られる

2016年12月18日 | 外交

米国の中国マネー依存が薄れたために、日本の金融協力を支えに
したトランプ・チームは選挙公約通り、対中強硬策に打って出られる


2016年12月18日 日曜日

米金融市場は日本と中国からの資金によって支えられている。


日米緊密・米中緊張の時代 通貨と安全保障政策の一体化を 12月12日 田村秀男

トランプ次期米政権では、かつてない日米緊密、米中緊張の構図になりそうだ。米金融市場の中国マネー依存が薄れたために、日本の金融協力を支えにしたトランプ・チームは選挙公約通り、対中強硬策に打って出られるからだ。

 米国は圧倒的な軍事力を誇る覇権国家だが、弱点がある。世界最大の債務国であり、外部からの資本流入に依存せざるをえないのだ。今年6月末の米国の対外純負債は8兆ドルであるのに対し、世界最大の債権国、日本は3・1兆ドル、中国はドイツとほぼ同水準の1・7兆ドルの対外純資産を持つ。ドイツは足元のユーロ金融市場を下支えするのに手いっぱいだから、米金融市場は日本と中国からの資金によって支えられている。

 グラフは、日中の対米貿易収支と米国債保有の推移だ。中国の貿易黒字が2001年以降、急膨張しているのに比べて、日本の方は縮小傾向をたどっている。中国は貿易収支黒字分の一部を米国債購入に充当し、08年には日本を抜いて最大の米国債保有国になった。
 
 同年9月15日のリーマン・ショックでパニックになったポールソン財務長官(当時、以下同)は中国の王岐山副首相に電話をかけ、経営危機の金融大手モルガン・スタンレーへの出資を打診した。脈があるとみれば、ブッシュ大統領と胡錦濤国家主席との電話会談をセットするつもりだったという(ポールソン氏の回想録から)。

 救済交渉は不発に終わったが、ワシントンは北京に米国債購入を求め続けた。09年1月に発足したオバマ政権のヒラリー・クリントン国務長官は翌月に訪中、中国政府首脳と米国債購入条件を詰めた。クリントン氏は中国の人権侵害を一切口にせず、ひたすら下手に出たが、側近には「米国債のお客さんにへりくだるなんて」とぼやいた。北京は米国債を買い増しし続け、金融不安におののくオバマ政権とウォール街を安堵(あんど)させた。

 以来、オバマ政権は北京に頭が上がらないままで、中国の南シナ海への進出や北朝鮮への国連制裁無視などに対して弱腰対応で終始してきた。さらに15年11月には習近平国家主席が執念を燃やしてきた人民元の国際通貨基金(IMF)・特別引き出し権(SDR)入りにも応じた。「国際通貨人民元」をテコにアジア全域を中国の勢力圏に取り込もうとする北京に対し、オバマ政権は無抵抗だった。

 グラフに戻ろう。米国の対中貿易赤字は膨張の一途で、最近でも米貿易赤字総額の5割近くを占めているのだが、米国債保有額は減少に転じ、日本の保有額と並んだ。

 国債を含む米国の証券投資収支(購入と売却の差額)は、中国は最近、年間で1200億~1300億ドルの純売却になっており、その5割近い分を日本の純購入で埋めている。中国は対米貿易黒字で年間約3500億ドルを稼いでいるが、それを米市場に還流させるどころか、さらに米市場から投資を引き揚げている。不動産バブル崩壊不安が漂う中国からの巨額の資本流出に伴い、北京当局が外貨準備のドル資産を売って、人民元を買い支えざるをえなくなっている。

 ワシントンは中国の金融パワーに頭を下げる情勢ではなくなった。大統領選でオバマ路線を継続し、中国に接近するクリントン氏が敗れ、路線をひっくり返すトランプ氏が勝つだけの大変化が米金融市場に起きたのだ。

 トランプ氏は、北京が人民元相場を低めに操作して対米輸出を増やし、米国の中間層から雇用機会を奪っていると非難、「中国製品に45%の制裁関税をかける」と息巻く。最近のツイッターでは、米企業の競争力が損なわれる人民元の切り下げと、南シナ海での巨大な軍事施設の建設を並べ立てて引き合いに出し、「中国が米国に対し、そうしてもよいかと尋ねたのか。俺はそうは思わない!」と書き込んだ。トランプ氏は経済、軍事の区別なく、中国の脅威に立ち向かおうとしている。正論だ。

 一方、日本の対中経済政策はこれまで、官僚の縦割りの弊害でまとまりを欠いていた。通貨を縄張りにする財務省は親中派が多数を占め、人民元のSDR化に賛同した。外交・安全保障を仕切る外務省は経済音痴で、ワシントンの意向次第だ。通貨、貿易を原動力として軍事的脅威をアジアにまき散らす中国共産党の仕掛けに関し、日本の官僚は気に留めなかった。

 安倍晋三政権はこの機を逃してはならない。通貨と安全保障を一体にした対中戦略でトランプ次期政権と足並みをそろえるチャンスである。(編集委員)



(私のコメント)

アメリカの対中融和外交は、中国が米国債の受け皿でもある事から理解も出来ますが、オバマ大統領になって2010年頃からからは米国債購入高は横ばいのままだ。アメリカの対中貿易赤字は増え続けているにも拘らず米国債の購入は増えていない。中国の外貨準備高は2014年をピークに減り始めている。

中国の外貨準備高は、4兆ドル近くから3兆ドルまで急激に残高を晴らしている。アメリカは中国からせっせと輸入しているのに米国債の購入は増えないということは、アメリカにとっては踏んだり蹴ったりであり、その穴を日本が埋めている。日本の対米貿易黒字はグラフの通り20年以上も横ばいのままだ。

最近のニュースでも、日本が米国債残高でトップになった事を報じていますが、中国は米国債を大量に売却している。人民元を買い支えるために外貨準備高を取り崩しているのだ。中国の外貨準備高には外国からの投資残高が含まれており、その投資が中国から引き揚げているから、その人民元売りを外貨準備高で買い支えなければならない。

中国では外資の排斥の動きが高まっており、中国人の愛国心が暴走して自分で自分の首を絞める結果を招いている。日本からの投資も中国のコスト高から、中国からベトナムなどASEAN諸国への移転が相次いでいる。中国は中進国の罠にはまり、これ以上の経済発展は自助努力によらざるを得ない。

アメリカにとっても、中国の巨大市場は魅力ですが、だからこそアメリカは中国に巨額な投資を続けて来た。米中の経済関係は巨大なものとなり、米中運命共同体ともなっている。しかし最近になって隙間風が吹くようになり、中国はアメリカの言う事は聞かなくなり、逆らうようになってきた。

だからパンダハガーのクリントンから、強硬派のトランプが大統領が選ばれるのは当然の流れだった。アメリカと言う国は、アジアにおいては日本と中国を対立させながら、都合のいい方に味方して利益を得る外交であり、その流れが変わり始めたということだ。

80年代に始まったアメリカの日本叩きは、日本が経済大国になった事に対する警戒からであり、アメリカは中国をテコ入れして日本に対抗させる勢力に育て上げた。その結果中国は世界第二位の経済大国になり、日本経済は低迷して、アメリカに対しては「死んだふり外交」で対応せざるを得なかった。

日本の弱体化がアメリカにとってプラスなのかといった疑問がありますが、逆に中国の強大化がアメリカにとってプラスなのだろうかという疑問が浮かぶ。日本はあまりにもアメリカの言いなりになりすぎるし、中国は経済大国になってアメリカの言う事は聞かなくなった。中国はフィリピンもカネで取り込んでアメリカは東アジアから追い出されるだろう。日本は弱体化してアメリカに協力したくても何も出来ない事になりかねない。

一番分かりやすいのはAIIB加盟問題であり、結局アメリカに同調したのは日本だけであり、中国は世界各国に手を回してアメリカ包囲網が出来つつある。アメリカは慌てて安倍総理を盛り立てようとしているが、アメリカの魂胆は見え見えであり、今度は強くなりすぎた中国を、日本を使って封じ込める戦略だろう。しかし日本はしばらくは「死んだふり」を続けた方がいい。


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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-12-18 17:35:54
米国は過剰消費、中国は過少消費。足して2で割ればちょうどよい。米国も中国も経済運営に失敗しているのだ。

米国に必要なのは投資だ。しかし投資をしても高賃金なら勝負にならない。米国は消費節約に徹するしか選択がない。

巨額の貿易黒字国が通貨安になる中国は説明がつかないほど、過剰投資が行われているのだ。国内の投資が効率が悪すぎて、消費を増やせないのだ。まず、今までの投資を整理して方向転換することだ。このまま行くと投資の失敗を消費の抑制で国民がしりぬぐいすることになる。
今の元安は昔の円安局面と似ている… (ponpon)
2016-12-18 18:12:43
> 北京が人民元相場を低めに操作
> 人民元の切り下げ

というか、今の元安って“20年前の円安”と似ていますよねぇ…。(笑)
---------------------------
■ドル円相場チャート
http://www5.plala.or.jp/TK-TREND/kawalL.html
・1985年~1988年に急速な円高
・その後も1995年にかけて円高が続く
→1995年1月 阪神・淡路大震災発生
→1995年3月 地下鉄サリン事件発生
---------------------------
■ドル元相場チャート(※100ドル=元)
http://www.opticast.co.jp/cgi-bin/tm/chart.cgi?code=0450&asi=3
・2005年~2008年に急速な元高
・その後も2015年にかけて元高が続く
→2015年8月 天津大爆発発生
---------------------------

> 財務省は親中派が多数を占め

ということは、FRBも親中派なのだろうか…。
http://www.trend-review.net/blog/2007/06/000308.html
『日本銀行は、1882年半官半民銀行として設立』
『戦時中の1942年制定された日本銀行法により大蔵大臣の指揮下に入る』
『ところが、1997年改正された新日本銀行法によって、日銀はアメリカ連邦準備制度(FRB)に近づいた』

> 日本の対米貿易黒字はグラフの通り20年以上も横ばい

日本が不景気の時は収支が改善気味、日本が好景気の時は収支が悪化気味ですねぇ…。(笑)
■米国貿易収支対日チャート(2000-2016)※表示期間を「1」にして下さい。
http://www.opticast.co.jp/cgi-bin/tm/chart.cgi?code=0775&asi=3
■米国貿易収支チャート(1994-2016)※表示期間を「1」にして下さい。
http://www.opticast.co.jp/cgi-bin/tm/chart.cgi?code=0774&asi=3

> 日本は弱体化
> 日本はしばらくは「死んだふり」を続けた方がいい

↓日本は“縁側でお茶をすする”ような年頃かと…。(苦笑)
http://pba.o.oo7.jp/average.html
http://pba.o.oo7.jp/140007.html#142042
欧米白人エリート層が日本の実態を知らない筈は無い、とは思いますが…。
Unknown (八坂)
2016-12-18 19:52:37
>米国は圧倒的な軍事力を誇る覇権国家だが、弱点がある。世界最大の債務国であり、外部からの資本流入に依存せざるをえないのだ。

それが違うんだよ実は。
その債務国とやらに流入するドル札はアメリカが刷ったドル札だろ、元をたどれば自分で刷った札なんだよ。
従って他国を経由せずに自国内に供給する事も可能だが、敢えて買い物して外国経由で投資させているのは、ドル札を刷ればタダで買い物ができるからだ。
弱点があるとすればアメリカではなく、対米の貿易依存度の高い経常黒字国に弱点がある。
トランプ大統領がそのドル札を外国に支払わず、国内の製造業に支払えば雇用と消費が回復するし、金融市場も国内資本で回転する事になるという、極めて単純な話だ。

>通貨を縄張りにする財務省は親中派が多数を占め、人民元のSDR化に賛同した。外交・安全保障を仕切る外務省は経済音痴で、ワシントンの意向次第

どっちもアホしかおらんだろ。
国家に寄生するバカなシロアリだ。
Unknown (Unknown)
2016-12-18 20:55:22
>しかし日本はしばらくは「死んだふり」を続けた方がいい。

TORAさんのいう「死んだふり」は、カネを出すことか。

■日本、ユネスコ分担金支払いへ 「南京」記憶遺産で保留
 http://www.asahi.com/articles/ASJDJ5Q1RJDJUTFK00P.html

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