気がつけば、2016年も残すところあと少し。
時が経つのが早すぎて、誰かに2ヶ月ほどチョロまかされた錯覚を覚えます。恐ろしい。
時間もそうですが、進むスピードに驚きを隠せないのは、テクノロジーも同じです。
例えば、電話。
小学校時代の黒電話に、学生時代を通して大きな顔をしていたベルやピッチ(PHS)。
あれだけ大手を振ってメインロードを歩いていたのが嘘のように、今ではその存在がすっかり忘れ去られ、この世から消滅しております。
上記の例は、ブラウン管テレビにも該当します。
観音開きのケース入り、はたまた白いレースなどを掛けられて過保護にされていた頃は夢のまた夢。今ではすっかりお荷物扱い。南無三。
自分が高校に入って初めて得たバイト代で14インチのブラウン管テレビを買った時、(これで誰に気兼ねすることなく、好きなものが見れる)という幸福感に満たされ、この世の全てを手に入れたような気分になりました。
言うなれば、無敵です。
それから時が流れ、テレビは今、スマホやタブレットで視聴できます。そして、それ以外にもネットを介して気軽に何でも見れちゃう世の中。あんなものも、こんなものも、ちょちょいのちょいです……。
きっと現代に生まれた子供は「ドラゴンボール」9巻や、「ろくでなしBlues」13巻のお世話になることも(分かる人には、分かるはず)、公園の雑木林に入り血眼になって落ちているエロ本を探すことも、高確率で女性の裸が出てくる「13日の金曜日」を取って付けたような嘘をついて録画することもないでしょう。
今はそんなことをしなくても、ボタンをポチッとな……いや、画面をタップすれば、たちまち夢のシャングリラが現れます。そこに実働とリスクは発生しません。
それが良いか悪いかは分かりませんが、あの頃の自分の視点で見ると、みんな無敵状態です。
ずっとスターを維持しているマリオ。なんだか、ありがたみが薄いですね。
話がよからぬ方向へ転がってますが、何が言いたいのかというと、科学の進歩は物凄いスピードで自分たちの生活を変えていっている、という事です。
20世紀のしっぽの先を掴んでいるような自分でさえ、今こうしてキーボードをカタカタし、テクノロジーのぬるま湯にゆったり、たっぷり、の〜んびり浸かっています。
自分はもう十分ではないかと思うのですが、とどまる所を知らない進化の先に、軍隊に入っている兵士ではない一般人の体にもマイクロチップを埋め込む時代がやってくるのだと思います。
自分が生きているうちは、それを強制されるようなことはないと思いますが(思いたい)、それが社会に出回るようになる際は、きっと埋め込む側の真意は隠し:
「便利だよ」
「最先端で、今ならタダだよ」
「このチップ埋め込んだら、流行りの伝染病に罹らないよ」
「モッくんも、ヤッくんも、フッくんも、みんなやってるよ」
という使い古された呪文を唱えて、これでもかと宣伝されるはずです。
うーん、嫌ですね。勝手に想像してるだけですが、それでも恐ろしいです。
自分は己の意思で行動できなくなる可能性を秘めた「デジタルミュータント」になるよりも、不完全な人間のままでいる方を強く希望します。
まぁ、そうはいっても自分が輪廻転生して、奇跡的にまた人としてこの世界に戻ってこれる頃には、もう、オンギャー with マイクロチップの社会が出来上がっていると思いますので、その時は受け入れざるを得ません。
自分の意思に反するようですが、もしそのオンギャーミュータントが避けられないのであれば、どうしてもそのチップに入れて欲しい機能があります。
それは、「リアルライフBGM」です。
同じ事を考えている方もたくさんいるかもしれませんが、自分が常々想像、空想しているモノの一つに、この「リアルライフBGM」があります。
ドラマや映画の挿入曲は勝手にいじれませんが、自分の頭の中の話なら別です。
思い入れのある曲やお気に入りの曲を、脳内ライブラリーに設けてある幾通りもの感情ホルダーにストックし、マイクロチップが脳波の状態を読み取ってその都度、最適なBGMを頭の中だけで流すというシステムです(もちろん、オフにも出来ます)。
ちなみに、あくまでもBGMなので人との会話を邪魔しない程度の音でかかり、話し声が小さくなればなるほど音量も自動的に下がります。
ですので、あなたが突然ミニストップで彼女にフラれたとしても、これぞ、という曲が脳内で響き渡り、ソフトクリームより早くあなたの傷ついた心を包むことが出来るのです。
あら、何だか楽しそうです。
そうなったら日常のどんな場面も「リアルライフBGM」が彩ってくれそうです。
色々とイメージしていたら、夜中にもかかわらずワクワクしてきたので、今その機能があると仮定して自分ではどうなるかを考えてみました。
通常の脳波の時は、金曜ロードショーの4番打者「ニュー シネマ パラダイス」のメインテーマが流れます。大好きで仕方がない映画、そしてエンニオ モリコーネのゴールデンタッグ。彼の作った「マシンガン マケイン」のテーマと合わせてヘビーローテーション間違いなしです。
気分を落ち着かせたい時は、これまた大好きで堪らない「紅の豚」から久石譲の「帰らざる日々」に登場してもらいます。
「ここではあなたのお国より、人生がもうちょっと複雑なの」というジーナさんの名セリフも脳内再生決定です。
物憂げな気分のになったら、キリンジの「スウィート ソウル」です。気持ちが悪いでしょうが、堀込泰行は自分にとってのエンジェルボイス。泣けと言われれば泣けます。
全ての用事が終わり、ソファーに体を預けて少しすると、桑野聖の「水の月光」が響き、体全体を癒します。美しい音色、美しいリズム、曲を構成している全てが美しいっ!! すみません、取り乱しました。
想像力のお供には、原田茶飯事の「終末のドライブ」で決まりです。浮遊感がありながらも芯の強い彼の声を聞けば、予想外のアイデアが浮かびます。
仕事で「YouはShockな人々」に出会ったら、Dilated Peoples の「Proper Propaganda」が内側から流れます。その強いメッセージの込もった歌詞は、どんなゴリ押しに対してもきっぱり「ノー」と言う勇気を与えてくれます。
気持ちが打ちのめされたなら、やっぱりブルーハーツの「終わらない歌」です。
終わらない歌を歌おう クソッタレの世界のため
終わらない歌を歌おう 全てのクズ共のために
終わらない歌を歌おう 僕や君や彼らのため
終わらない歌を歌おう 明日には笑えるように
この機能を想像した時に、唯一本気で欲しかった感情場面。
あの日、全人格否定されて高台の神社にいた自分の脳みそに流してやりたい。
日が落ちて拝殿が見えなくなり、不安に耐え切れなくなったあの日の脳みそにドバドバ流してやります。
こうして思いを巡らせるほど、自分にとっては魅力的な機能に見えるのですが、やっぱりマイクロチップはノーサンキューです。
そういった話は、物語か想像の中で充分。
マジックはマリックで用が足ります。
でも、考えるのは楽しいので、今書いている長めの小説が終わったら、こういった話を集めてショートショートを作りたいと目論んでいます。
そこで書きたいのはテクノロジーやアイデアの紹介ではなく、それに関わらなくてはいけない人々の話です。
どんなに科学が進歩しても、それを扱うのは人間だと思います(そう、願います)。
ですので、そこに付随する問題はいつの時代も必ず人間臭いものだと信じているのです。
例えば:
- 政府主導の方針から、初めて民間に移された年のマイクロチップ製作会社のクレーム処理部門の話。
- 小学校で生徒の一人が先生のチップデーターをハッキングして学級崩壊が起きる話。
- はたまた、マイクロチップに限らず、車が空を飛んだ後に増加した「エアーポイ捨て」を巡って戦う自治体と車会社の話。
などなど、書きたいことはたくさんあります。
あぁ、時間がもっと欲しい。
明日出勤したらGMがトチ狂っていて、全スタッフに3週間の有休を授与する、なんて話にならないかな〜……。
……さて、明日も元気一杯、働いてきまーす。
(まだ明るい内のライトアップが作り出す異星感が好きです。円盤、飛びます)