北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記の死去から、おとといの17日で5年が経った。核実験を強行し、軍重視の先軍政治を進めた父の正日氏から権力を受け継いだのは、三男の金正恩(キムジョンウン)委員長である。

 スイス留学の経験もある若い指導者だ。政権発足当初は「変化」を期待する声もあったが、願いは空しくついえた。

 今年だけでも2度の核実験に踏み切ったほか、各種の弾道ミサイル発射実験もやめようとしない。無謀というほかない金正恩政権に、最大の非難が浴びせられるのは当然である。

 ただ、このまま事態が悪化し続けるのを見過ごすことはできない。日米韓はじめ周辺国は、困難であっても問題解決の道を探らねばならない。

 この間、米国のオバマ政権は「戦略的忍耐」を掲げて北朝鮮を突き放し、韓国の朴槿恵(パククネ)政権は圧迫政策を進めた。それは逆に北朝鮮に勝手に振るまう時間を与え、核・ミサイルの開発技術を飛躍的に高めさせた。

 この悪い流れを、何とかして変えなければならない。

 北朝鮮の核開発の手を止めさせるためには、日米韓を中心とした関係国が、これまで続けた放置の状態を改め、何らかの関与の行動に出るほかない。

 朴大統領の進退で揺れる韓国では、次期大統領をめざす有力候補予定者らが、南北対話の重要性を唱え始めている。

 南北交流の象徴だった開城(ケソン)工業団地を閉鎖するなど、かつてないほど膠着(こうちゃく)している北朝鮮との関係をどう改善するかは、大統領選挙の大きな争点の一つになるだろう。

 北朝鮮が最も関係を重視する米国は、トランプ次期政権がどう対応するか不透明だ。ただ、オバマ政権の政策を踏襲するならば、事態はさらに悪化しかねないことを悟るべきだ。

 日本政府は拉致など人道問題に関する水面下の日朝接触を続けている。核・ミサイル問題は日本にとっても直接の脅威となりうるだけに、新たな関与策づくりに積極的に動くべきだ。

 北朝鮮はこの数カ月、表向きは挑発的な行動を止めている。トランプ政権の出方や、韓国の混乱の行方を見すえているためとみられている。

 朝鮮半島の非核化問題は、これまで6者協議で話し合われてきたが、8年前に止まったままだ。その6者協議の再開も視野に入れ、早く対話基調をつくりださねばならない。

 積もり積もった不信感を解くのは決して容易ではないだろうが、すべての関係国が努力を尽くす以外、道は開けない。