北陸新幹線を福井県敦賀市から大阪市へ延伸するルートが固まった。複数の案を検討してきた与党が、福井県小浜市と京都市を経由する案を採用した。

 北陸や関西の政財界からは早期着工を求める声が相次ぐが、あまりに前のめりだ。

 小浜・京都ルートの建設には2兆円超かかりそうだ。建設を決めるのは政府だが、財源のあては当分ない。国の財政状況は厳しく、社会保障をはじめ、多額の公費が求められる課題は多い。北陸新幹線の延伸を特に優先する必要性はない。

 東京から長野、富山を経て大阪に至る北陸新幹線の整備計画は、1973年に決定した。現在、北海道と九州で建設中の新幹線2区間も同じだ。

 新幹線と高速道路網の整備で、移動時間を縮め、東京の過密と地方の過疎を解決する。故田中角栄元首相が提唱した日本列島改造論のような考え方が背景にあった。40年余りを経て、全国の新幹線は延べ2765キロに達した。安倍政権は「地方創生回廊」と銘打ち、新幹線整備をさらに推し進める方針だ。

 ただ、期待した効果がどれほどあったかは冷静に見極める必要がある。東京一極集中は加速し、地方では急速な高齢化と人口減が進む。新幹線が通る中核都市の多くも例外ではない。

 北陸新幹線は23年春に東京―敦賀間が完成する。「ここまで造れば、大阪まで早く全通させた方がよい」という考え方もあろう。だが、ルート案の検討過程や内容には疑問が尽きない。

 滋賀県は同県米原市でJR東海の東海道新幹線と接続する案を推した。建設費が6千億円弱と他の案より圧倒的に安い。だがJR東海と、北陸新幹線の運行を担うJR西日本が難色を示したため、与党側が却下した。

 京都府は舞鶴市を経由するルートを支持した。しかし選定にあたってはどの自治体も沿線地元への利益を強調し、日本全体にとってのメリットなど、幅広い視点が見えなかった。

 JR西は京都―新大阪間について、東海道新幹線と別に北陸新幹線の線路を敷いて、と望む。人口密集地のためトンネルが大部分を占める可能性が高く、建設費はかさむ。そこまでして新たな線路は必要なのか。

 新幹線はあれば便利だ。政治家が「実績」とアピールしやすいこともあって、「建設ありき」の議論になりやすい。

 ただ、新幹線建設に多額の税金が充てられることを忘れてはならない。必要性や妥当性について国民が十分納得できない限り、着工に進むべきではない。