【ニューヨーク=高橋里奈】国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は16日、任期で最後となる記者会見で、韓国大統領選への出馬を問われ「政治や社会の指導者らと会い、真剣に韓国のために何をできるか考える」と述べた。シリアや南スーダンの人道状況への懸念を示したほか、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」を「尊い偉業」とたたえ「後戻りなく支えていかなければならない」と訴えた。
2007年1月に就任し、今年12月末に10年の任期を終える潘氏は「率直に言って、後悔することの方が多かった」と在任期間を振り返った。韓国では国会で可決した朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾訴追案を巡る手続きが続く。潘氏は次期大統領選で与党系の最有力候補と取り沙汰される。
6年近く内戦が続くシリア危機や南スーダン、イエメン、マリなどの紛争については「国際的な結束が明らかに欠けている」と批判した。「軍事的な解決を信じる多くの人びとがいるが、軍事的な解決などない」と強調。「多くの問題を後任と加盟国に残していくことを申し訳なく思う」と述べた。シリア危機については同国・地域内だけでなく「安全保障理事会も分裂した」と非難した。
韓国出身の潘氏にとって北朝鮮の核開発問題も大きな懸念だった。日中韓など北東アジア諸国の関係は「必ずしも円滑ではなかった」としながらも「北朝鮮の核・ミサイル開発問題という深刻な安全保障上、共通の懸念がある」と指摘。「指導者が立場の違いを狭め、北朝鮮問題に対処するよう切に願う」と訴えた。
任期中の潘氏については、シリア危機を巡り指導力が不足していたと批判する声がある半面、貧困などの撲滅を目指す「持続可能な開発目標」やパリ協定の策定に尽力したとの評価もある。