CULTURE
米国市場に狙いを定め、したたかに甦った世界No.2スポーツブランド 「アディダス」復活までの全内幕
From WELT (GERMANY) ディー・ヴェルト(ドイツ)
Text by Philipp Vetter
3本線のあのマークが、ファッション界に戻ってきた!
スーパーモデルやハリウッドスターは、いまやこぞってアディダスのスニーカーを履き、三つ葉のロゴ入りウェアをまとう。驚くべきカムバックの裏にあるしたたかな戦略を、ドイツメディアが詳細に伝える。
秋に米ニューヨークで開催されるニューヨーク・ファッション・ウィークは世界的に注目されるが、ここで展開されるショーのなかでも「アレキサンダー ワン」は最も重要なショーのひとつである。
会場となっているマンハッタンの「ピア94」にはファッション界のそうそうたる顔ぶれが集まり、ランウェイの周囲に陣取っている。愛娘のローデスを連れたポップスの女王、マドンナの姿も最前列に見える。
マドンナは、まるでフィットネススタジオからそのまま駆けつけたような格好だ。スケスケのコルセット風のトップスに、黒のジャージを合わせているのだ。
場違いなスタイルと思いきや、実はこのファッションこそショーの目玉であることがのちに判明する。まもなく観衆がステージで目にする最新のファッションを、マドンナは先取りして着ることが許されているからだ。
ショーの華やかなフィナーレでは、モデルたち全員がジャージ姿で登場。アディダスとのコラボライン「アディダス オリジナルス バイ アレキサンダー ワン」のアイテムである。胸にはアディダスを象徴する三つ葉のマーク「トレフォイル」を上下逆さまにしたロゴが、横にはあの3本線が入っている。
アディダスは、米国で急激にかつての人気を取り戻している。
ファッションショーのステージの上だけではない。3本ラインのアイテムを好んで着用する有名人には、マドンナのほか、トップモデルのジジ・ハディッド、英国出身の歌手リタ・オラ、ハリウッド女優クリステン・スチュワート、人気歌手のジャスティン・ビーバーらがいる。
彼らセレブは、スポーツをするときではなく、オフのときや、パパラッチに追われているようなときにも、決まってアディダスを身に着けている。これを見たファンが、セレブの真似をしてアディダス製品を購入する。
アンダーアーマーにも抜かれて
そんな米国でも、少し前までアディダスは「古臭い」とみなされていた。
1949年、独バイエルン州フランケン地方の小さな町ヘルツォーゲンアウラッハで誕生したアディダス。驚くべきカムバックを成し遂げた同社だが、この成功は安泰ではない。モードの移り変わりは先が読めないからだ。アディダスのシューズやウェアが、来年も人気があるかどうかは予測できない。
つい2年前まで、アディダスは深刻な危機に陥っていた。特に米国市場では、長年のライバルであるナイキに大きく水をあけられていた。そればかりか、20年前に米国で設立された新参ブランドのアンダーアーマーに抜かれてしまったのだ。あれこれブランドを試すファッショニスタでさえ、アディダスを選ぶことはなかった。
※続きは明日公開します!
Comment0
※コメントにはログインが必要です。