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“日本最強の進学校”灘高、やんちゃ集団が生まれ変わる「秘密の廊下」とは?

NIKKEI STYLE 12/18(日) 7:47配信

■職員室前に異常に広い廊下

 「ほら、職員室の前の廊下が異常に広いでしょ。テーブルや椅子もたくさん置いているし、ちょっと他の高校と違うと思いませんか」。和田校長は灘の職員室の前に案内してくれたが、確かに廊下とは思えぬ広い空間がある。
 「ここが午後3時以降、ワイガヤ空間に変わります」。高2の夏以降、部活など終了し、灘高生は受験態勢に入る。すると、授業の終了後、この職員室前の広い廊下に三々五々集まり、同級生たち同士の「勉強の教え合い」が始まるのだ。自分たちで分からなければ、担当教師に聞く。「とにかくうるさい」(和田校長)。関西弁がこだまするワイガヤ状態が退校時間の午後6時まで続く。
 「彼らはある意味ライバルですが、口に出して、教えることで自身の頭も整理され、様々な難問も解けるようになる。教えることが結局、自分にも相手にもプラスになることを知っている」と和田校長は説明する。実際、「僕なんて東大は全然無理な成績でしたが、仲間に助けてもらってなんとか現役で受かった」(東大工学部3年生)と話す卒業生は確かにいる。
 灘の校是は、講道館柔道の創始者で、同校創立時の顧問、嘉納治五郎が唱えた「精力善用」「自他共栄」だ。全力を尽くし、自分だけではなく他人との共栄をはかれ、という意味だ。神童と呼ばれる灘校生は、時にはわがままで、独善的な言動をとることもあるという。自由な校風だが、和田校長はこの校是だけは口酸っぱく生徒に伝える。

■入試科目に社会科がない

 最後になったが、この灘中学・高校に入学するには独特の入試がある。中高入試ともに社会科が入試科目が課せられていないのだ。灘中の場合、国語と算数は2日間にわたって入試があり、1日目は基礎力、2日は応用力をはかる。両科目ともそれぞれ200点満点+理科があり、500点満点で合否を決める。灘高だと、そこに英語は加わるが、やはり社会科はない。灘が問うのはあくまで論理的に物事を考える力で、暗記力ではないからだ。社会科があれば、詰め込み型の受験になる可能性がある。
 和田校長は「社会軽視ではない。むしろ社会嫌いになってほしくないから」と話す。日航会長の大西氏は「社会科がなく暗記重視でなかったので、受験勉強にそんなに時間をとられなかった」と振り返る。

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最終更新:12/18(日) 7:47

NIKKEI STYLE

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