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磨け訪日客対応、関西タクシー発進 個人旅行に照準 エムケイ、英語や中国語研修 滋賀県協会、宿泊先に荷物配達

 

2016/11/22付 日本経済新聞 地域経済

エムケイは乗務員が英会話を学べる交流会を開いている

 関西のタクシー会社がインバウンド(訪日外国人)需要の開拓に動き始めた。大手のエムケイ(京都市)は乗務員向けに全営業所合同の英会話研修を導入した。2017年には中国語の留学制度を始める。訪日旅行が団体から個人へシフトするなか、外国人客に対応した研修制度やシステムを導入。あの手この手でおもてなしを磨き、個人旅行の需要を取り込む。

 「エクスキューズミー。ホエア イズ ザ キヨミズデラテンプル?(清水寺にはどう行くのですか?)」。外国人講師が道に迷った訪日客にふんし、英語で乗務員に質問する。エムケイは今秋、希望者を対象に京都府・滋賀県の全営業所合同の英会話研修を始めた。

 初級から上級まで幅広い語学レベルの乗務員約40人が参加し、英語で道案内したり、壁に張った観光地を背景に見どころを説明したりした。これまでは月2回、英会話レベルに応じて4クラスに分けて研修会を開いてきたが、初級者が上級者と交流できる機会を設けて「英会話を学ぶ機運を盛り上げる」(経営企画部)。来年2月に2回目を開く予定だ。

 京都を観光する中国人客が増えたため、17年には中国語を学ぶ乗務員向けの留学制度も始める。台湾の語学学校に約3週間留学してもらい、語学力と異文化体験を帰国後に生かしてもらう。まず1月に2人を派遣する。同社では既に毎年20人程度の乗務員が英国などに留学している。

 滋賀県タクシー協会はヤマト運輸と共同で11月から訪日外国人がタクシーを利用した際、手荷物だけを宿泊先に届けるサービスを始めた。ヤマト運輸の滋賀主管支店(栗東市)によると、これまで数件の利用があった。今後、スーツケースなど大きな手荷物が多い訪日外国人に利便性を訴求し、利用者を増やす。

 外国人客に対応したシステムの導入も進む。さくらタクシー(大阪市)は外国語が堪能な外部のオペレーターを通じ、ホテルと関西国際空港や鉄道駅との送迎などが増えている外国人客との会話を翻訳するシステムを昨年に導入した。英語、中国語、韓国語など5カ国語に24時間対応する。月間10~20件程度の利用があるとしている。

 各社が観光需要の開拓を急ぐ背景には、インバウンドの個人旅行の広がりがある。日銀大阪支店が6月にまとめた調査によると、関西国際空港で入国した外国人の8割が個人旅行だった。企業の経費削減などで法人利用が低迷するのに対し、個人旅行のニーズを取り込める余地は大きい。

 JR京都駅前では訪日外国人専用タクシー乗り場を設けた実証実験が始まっており、アンケートでは利用者の98%が「利用したい」と答えた。理由は「フレンドリー」「便利」との声が多い。課題としてはワゴン車両やユニバーサルデザイン車両の導入や、安定した車両の確保があがった。語学力と観光知識を持つ運転手の確保など、改善すべき点も少なくない。

[日本経済新聞2016年11月22日付朝刊]

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