FRB、米国連邦準備制度理事会が利上げを決定
米国連邦準備制度委員会(FOMC)でFRBがフィラデル・ファンド金利の目標を引き上げる決定をしました。平たく言うと、政策金利の利上げを決定したということです。1年ぶりです。0.5%~0.75%ですから、じわじわというところです。
米政策金利の推移から引用
2000年ITバブル時に1%まで下げ、その後2004年から2年間かけて5.25%に上げました。
サブプライムローンが騒がれ始めた2007年から段階的に下げ、リーマンショックを経て2009年から2015年まで地を這うような金利だったわけです。昨年利上げに転じ、2016年は連邦公開市場委員会、FOMCがあるたびに利上げするのではないか、という思惑が交錯しました。
今までだと一度利上げされると段階的に利上げが継続されてきましたが、今回は1年もかかっています。これは米国経済は比較的強いものの、世界的に見ると弱含んでいる昨今の経済状況を反映したものです。
これからは利上げ後、ということで今後の投資活動のためにもまとめておきたいと思います。
米国の利上げによる予想される影響
新興国の通貨安、資金流出
金利が上がれば上がるほど、金利の良い米国に資金が向かいます。どうしてもリスクのある分、新興国は比較的高金利で資金調達をします。そのため、米国など資金が潤沢な国が低金利になると新興国にも資金が流れてきます。
しかし、米国が利上げをし、運用益が見込めるならば、より安全な米国に投資家は資金を向けるようになります。
今まで低金利で調達した資金は米国内だけでなく、多く新興国にも流れていました。その流れが還流し始めるということです。
そのため、ドル高が起きやすい状況になります。米国の隣国であるメキシコ、トルコでは11月からすでに10パーセントを超える下落をしています。ちなみに先進国である日本も急激に円安が進んだのは見てのとおりです。日本は株式も為替も世界情勢への感受性がちょっと高すぎますね、このごろ。
※グーグルファイナンスから
新興国株式ETFである、バンガードのVWOとブラックロックのEEMです。トランプ氏当選以来弱含んでいることが分かります。利上げ決定できれいに下げています。
債券安になる
金利が上がると債券価格は下がります。100円で1%の金利だったものが、後発で100円で2%の商品が出ると、古い1%債権をだれも買わなくなります。そのため実質2%にするために、100円だった債権を値下げして売ります。
だから、金利が上がると債券価格は下がります。
※グーグルファイナンスから
バンガードの債券ETFであるBNDとブラックロックの債券ETFであるAGGです。12月14日の決定を受けてきれいに下げているのが分かります。今後、継続的に利上げが行われると、セオリーならばさらなる下げがあるということになります。
しかし、逆張り投資家としては今すでに非常に買いたくなる水準ではあります。
日銀政策金利との矛盾
対する日銀は低金利政策です。長期金利を0%程度として、操作目標を置いています。介入をちらつかせることで、金利が上がるのを防いでいます。
介入とは具体的には国債の買い入れ額を増額する、さらには指値を示してその指値で国債を買う、などです。ただし、すでに国債の4割を日銀が保有するという状況の中、さらなる大規模買い入れは難しいところです。
10年ものの長期金利です。2016年に底打った後に、金利は上昇傾向を示しています。米国の景気や金利の影響を受け、日本の金利が上昇してくると日銀の思惑とは違う方向に動くことになります。
日銀と政府は消費税10%導入へ向けて景気を維持したいところですから、金利上昇策を取りづらいです。すると、低金利継続のために、違う手を打つ必要がでてきます。そういう意味でも、日本の金利動向にも注目したいところです。
株価はどうなるのか
http://www.world401.com/data_yougo/usa_kinri_eikyou.htmlより引用
1991年からのS&P500とフィラデル・ファンド金利のチャートです。利上げの初動ですぐに株価が下がるということは過去ではありませんでした。むしろ、利上げが行われるということは米国経済が好調ということですから、株価も利上げ後しばらく上がっています。
確実に言えることは、株価が下がり始めたとき、米国経済が変調をきたし始めたときにはフィラデル・ファンド金利はすぐに下落に転じているということです。常に適切な金利政策を採用することは難しく、どうしてもやや後手になるのは、いたしかた無いところです。
しかし、リーマンショック後の株価の伸びをみると、むしろ利上げタイミングとしては遅いぐらいです。FRBの経済政策の手持ちカードを増やす意味でも、利上げというのは時機に適ったものだと言えそうです。
関連記事です。債券系のETFは値動き要注目ですね。
AGGとBNDは米国債中心でディフェンシブです。
こちらは企業債中心で、高配当ですがボラティリティが高いです。
ほかにはJNKやHYGなどもありますね。