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国連加盟60年 国際協調の旗を掲げて

 日本が国連加盟を果たしてからきょうで60年になる。

     加盟当日の1956年12月18日、重光葵(まもる)外相は国連総会の演説で「国連の崇高な目的に誠実に奉仕する」と日本の決意を語っている。

     敗戦から11年後、満州事変を契機に前身の国際連盟を脱退してからは23年後の国際社会復帰だった。

     日本人の国連職員第1号で後に事務次長を務める明石康さんは、総会で直接、重光演説を聞いていた。国際的に孤立して無謀な戦争に突き進んだ日本に対する、各国の温かい歓迎ぶりが印象的だったという。

     日本はまだ経済的に苦しい時期だった。重光は「国民生活上多くの困難に直面」と率直に語っている。

     しかし、高度成長期を経て日本の貢献度は次第に増した。現在、通常予算の分担率は米国に次ぐ2位、安全保障理事会の非常任理事国への選出回数は首位の11回を数える。

     国連の活動は幅広い。途上国への経済協力や貧困、感染症対策などに加え、近年は気候変動や難民などよりグローバルな分野に及んでいる。

     それでも国連憲章が前文で「戦争の惨害から、将来の世代を救う」とうたっている通り、国際の平和と安全の維持が第一の活動目的であることに変わりはない。

     国連創設当初の集団安全保障という構想に代わって、国連による紛争解決や平和構築の中心になっているのが平和維持活動(PKO)だ。

     現在はアフリカと中東を中心に16のPKOが展開している。日本は92年に初めてカンボジアでのPKOに参加して以来、計13ミッションに自衛隊や文民警察官を派遣してきた。

     初期のPKOは抑制的な停戦監視が主体だった。しかし、94年にルワンダで起きた大量虐殺を阻止できなかったことから、軍事力を使ってでも人命を守る活動へと変化してきている。今自衛隊が活動する南スーダンPKOもこの流れにある。

     自衛隊に付与された駆けつけ警護には反対論もある。自衛隊の活動は当然、憲法の制約を受ける。しかし、PKOには自衛隊のような実力組織にしか担えない任務があることも厳然とした事実である。

     来月には米国でトランプ政権が誕生する。それが国連にとって試練になる可能性がある。トランプ氏が多国間の外交を嫌い、2国間交渉で懸案を処理するような意向を示しているためだ。

     国際協調主義は、決して自国の利益を犠牲にする考え方ではない。自らの豊かさを追い求める基盤として世界の安定を必要とするものだ。

     日本は60年前の誓いに立ち返って国際協調の旗を高く掲げ続けなければならない。それが日本のソフトパワーを生み出す源になる。

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