「え?・・・はい、いいですよ。」(・・・なにやら30秒くらい作業)
『ほら!』
「うわ、なにこれ、マジ?」
小中学校には子どもたちのために教育用コンピュータ(パソコン)が大量に入っていますが、どんなに大切に使ったとしても、時代遅れになるので一定期間ごとに更新が必要です。・・・その度に、大量の廃棄パソコンが発生します。
教育委員会事務局は、この中古パソコンを学校の教職員室に流用配備して、学校の先生の一人一台体制を整えたいとの意向を示してきました。
でも、業務用に使うにはOSは再インストールしなければならない、LANも構築しなきゃいけない、セットアップにも人手がかかるで、結局、本体はタダでも実際には相当な費用がかかります。おまけに7〜8年前のパソコンの流用がそんなに長く保つとも思えず、ほんの数年後には、また再更新の費用がかかる。
しかも、旧式機を一人一台配備したとしても、特にパソコンを多用する先生にとっては明らかにパワー不足。仮に、私用パソコンを使う、自宅に仕事を持ち帰ってしまう・・・などとなれば、セキュリティの問題は根本的には解決されません。
・・・というわけで、僕は「その疑問を消してくれなければ反対」と言い続けて、半年くらい教育委員会事務局や情報政策担当と議論してきました。
そんな試行錯誤のなかで、情報政策担当の職員が苦労して試して見つけてきたのが「edubuntu」というLinux OSの一種。百聞は一見に如かずで、実際にテスト環境に触れたのが冒頭のやりとり。
この「edubuntu」・・・実際に触ってみると、かなりの優れもの。
サーバ側でほとんどの処理を行う「シンクライアント」という方式のため、操作する端末(パソコン)の性能と無関係にソフトが動きます。おまけに、端末も特別である必要は一切なく、普通にWindowsが動くパソコンだったら、ものの1分もかからずに「edubuntu端末」として起動します。
冒頭のやりとりは、普段、僕が使っているWindowsのノートPCが、目の前で「edubuntu端末」化し、見知らぬ画面が現われたときのこと。ちなみにネットワークから外して電源を入れなおしたら、元々のWindowsが起動。「edubuntu端末」だったときに作ったファイルなどはサーバ側にあるので、端末には一切残らずセキュリティも万全。
古いパソコンでも、ワープロ、表計算、プレゼンテーションソフトの操作に違和感はありません。ちなみに端末からハードディスクを抜いた状態でも起動するところを見ると、ほぼ完全なサーバ依存型のシステムのようなので、メンテナンス面でも、端末は物理的な自然寿命にまかせて、数少ないサーバのみに力を集中できます。
古いパソコンだろうが、新しいパソコンだろうが、変わりなくソフトが起動。操作感も一緒。ソフトウェアが無償なわりにはサポート体制はそれなりに充実と、言うことナシです。
・・・よくぞこんなものを見つけてきてくれた!と思って調べてみたら、オリジナル「ubuntu」は、デル・コンピュータやシャープのモバイル端末でも採用されてるんですね。なおさら安心材料でした。
これなら、大量の中古パソコンでもコストをかけずに再利用できます。
500台のパソコンを廃棄して環境破壊することや、十分な機能を期待できないままにコストをかけることを考えると、利用価値は極めて大きい。
・・・ということで、小中学校の教職員室への配備を、この方法で進めることにしました。なお、Linuxの大規模導入は初めてなので、サポーター企業の募集をしています(詳細は報道資料「情報システム・サポーター企業を募集〜脱MS!無償「Linux」シンクライアントにより中古パソコン500台を再生利用へ〜」をご覧ください。)
なお、ワープロや表計算は(Windowsではないので)MS-Officeが使えませんが、OpenOffice.orgという無償ソフトが利用可能です。正直、昔はイマイチでしたが、最近のバージョンを触ってみると十分すぎるくらいの性能。実は、すでに会津若松市などで市役所全庁のOpenOffice.org化という事例があるので、こちらも安心。
ちなみに、OpenOffice.orgはご家庭のWindowsパソコンでも無償で使えます。会津若松市の解説サイトに「オープンオフィスにしませんか?」という良い資料がありますので、ぜひトライしてみてください。
さて、新たなチャレンジですが、いろんな自治体や企業・団体が類似の課題を抱えていると思います。PCが安くなればなるほど廃棄が問題になってくる可能性などもあるので、そんなことも含めて良いソリューションになることを期待しています。