沖縄で米軍の新型輸送機オスプレイによる重大事故が起きた。
事故機は沖縄県・米軍普天間飛行場に配備されているもので、名護市沖約80メートルに落ち、機体は大破した。
米軍が日本政府の要請を受け、安全が確認されるまでオスプレイの飛行を一時停止すると決めたのは当然だ。米軍には徹底した原因究明、積極的な情報公開、再発防止を求める。日本政府もそれらが確実に行われるよう努めてほしい。
米軍によると、事故は夜間の空中給油訓練中に起き、オスプレイのプロペラが給油ホースを切断した影響で損傷したことから、陸地を避けて浅瀬に「不時着」したのだという。「機体の問題ではない」と説明し、「墜落」ではないと強調している。
だが一歩、間違えば民家に落ち、大惨事になっていたかもしれない。
オスプレイは操縦が難しい輸送機と言われる。仮に機体に問題がなかったとしても、それで完全に「安全」「安心」というわけでもない。
同じ日の夜、別のオスプレイが機体脚部の不具合により、普天間に胴体着陸したことも明らかになった。
一晩でオスプレイの事故が2件相次いだのは異常だ。住民をこれ以上、危険にさらしてはならない。
さらに、沖縄の人々の神経を逆なでしたのが、在沖縄米軍トップのニコルソン沖縄地域調整官の発言だ。
ニコルソン氏は、抗議に訪れた安慶田(あげだ)光男・沖縄県副知事に対し「パイロットは住宅や住民に被害を与えなかった。感謝されるべきで表彰ものだ」と開き直ったという。
沖縄が過重な基地負担を引き受け、米軍機の騒音、事故、米兵の犯罪などに苦しんできた歴史に対する理解が米軍側になければ、基地を安定的に維持することは難しい。ニコルソン氏の態度は極めて不適切で、調整官としての資質をも疑わせる。
日本政府は抗議し、発言の撤回と謝罪を求めるべきだ。
オスプレイは、沖縄だけの話ではない。米軍横田基地(東京都)にも配備される計画で、陸上自衛隊も導入を進める。日本全体の問題だ。
今回の事故では、日米地位協定が壁となり、日本側が捜査できないことが改めて浮き彫りになった。米軍だけの調査で片づけられ、日本側は追認するという仕組みの問題は明らかだ。日本側も捜査できるよう地位協定を見直す必要がある。
来週は、普天間の辺野古移設をめぐる最高裁判決と、米軍北部訓練場の一部返還式典が予定されている。
最高裁では国の勝訴が確定する見通しだ。政府は、訓練場の返還で負担軽減を印象づけ、辺野古移設工事を再開する狙いだったが、政府ペースで進めるのは難しくなるだろう。