【社説】自転車で大統領に報告書を届ける韓国大統領府

 旅客船セウォル号が沈没した2014年4月16日、この日午前10時の時点で当時大統領府国家安保室長だった金章洙(キム・ジャンス)氏(現駐中大使)は大統領の居場所が分からず、最初の報告書を大統領府本館執務室と官邸にそれぞれ1部ずつ送っていたことが分かった。国会で14日に行われた聴聞会(証人喚問)で金氏が直接明らかにした。金氏は大統領の所在が正確に分からないときはいつもそのようにしていたという。その上で金氏は「補佐官(陸軍中領=中佐に相当)が時には走って、あるいは自転車で報告書を運んでいた」とも証言した。

 国の安全保障に責任を持つ大統領府安保室長が大統領の所在を把握できないとき、大統領に随行する秘書に問い合わせることはできなかったのだろうか。上記の補佐官によると、1回目の報告書を届けようとした際に朴大統領は大統領府本館にいなかったため、金氏は官邸にいるものと見なし、報告書は官邸に届け続けたという。にわかに信じがたいことだ。

 米ホワイトハウスの大統領執務室周辺には秘書室長、副大統領、国家安全保障補佐官、報道官などの執務室があり、上の階には法律顧問、経済補佐官や各分野の特別補佐官らのオフィスがある。大統領であれ秘書であれ、必要なときにスタッフたちは互いのオフィスを行き交いながら、意見や情報を自由に交換できるという。これに対して韓国大統領府は官邸、本館、秘書棟がそれぞれ500メートルも離れている。大統領が一人で使用する本館は最も巨大な建物で、秘書棟には秘書らのオフィスがあるが、この秘書棟から本館に移動するには通常は車を使い、徒歩の場合は15分ほどかかる。次の大統領が誰になっても、大統領府では大統領とスタッフらが随時顔を合わせ、国政の懸案について自由に意見を交換できる形に作り直さねばならないだろう。

 ただし構造を見直しただけでは、朴大統領のように官邸からほとんど出てこず、スタッフらと会うことさえない大統領では意味がない。常に大統領のそばにいるはずの秘書室長さえ、大統領の顔を見るのは週に1回かそれ以下だったという。このネット時代、なぜ内部のイントラネットなどを使って報告できなかったのか。あるいは緊急の報告書を自転車に乗って届けねばならない理由は何か。これが本当に大韓民国の大統領府だったのだろうか。

 もし2010年の延坪島砲撃事件のような緊急事態が起こった際、国家安保室長が大統領の所在を把握しておらず、またどこにいるか問い合わせることもできず、自転車に乗ってあちこちに報告書を届けねばならないのであれば、この国は一体どうなっていただろうか。聴聞会で朴大統領と大統領府の実態が少しずつ明らかになるたびに、国民の誰もが大きな衝撃を受け続けている。

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