2014年、栃木県の鬼怒川の河川敷で大量の犬が遺棄された事件もありました。引き取り屋が、繁殖の役目を終えた犬たちを運ぶ途中で死なせてしまったから捨てたということでした。これは氷山の一角で、たまたま明るみに出たため事件として報道されました。しかし、他の犬たちもまともなところに行っているとは思えません。
つまり、行政で行われる表の殺処分がゼロになっているだけであり、裏で処分されている動物たちの数が増えているということなのです。表の数字だけ見て「殺処分はゼロになったからもう問題ない」と思ったら大間違いです。こうした誤った考えが流布する危惧があります。
殺処分ゼロを目指した法改正の裏で、このように闇で処分されている動物たちが増えているというのが現実です。そこに目を向ける必要があるのです。
ペットショップで売れ残った犬を保護犬だと言って、ペットショップの客引きに使う悪質な業者も思っているよりも多いのです。それに騙されないことも大事です。そうでないとこうした悪質なペットショップに加担することになり、本来、保護して欲しい飼い主を求めているペットたちの行き場がなくなってしまうことにつながるのです。
保護犬や保護猫を引き取る場合でも、自分で調べることはもちろん、信頼できる専門家の意見を聞くことが大事になってくるでしょう。
残念ながら、「殺処分ゼロ」や「動物愛護」という言葉には気をつけなければいけなくなってきているのです。
小池知事が殺処分ゼロの方針を打ち出したのはいいことではありますが、東京都のやるべきことは、まず国に対して「ペットの大量生産ができる現状を改める」法改正をしっかりと要求することです。そして、狭いところに詰め込んで乱売するような行為をやめさせることなのです。
現在のペット産業は1兆5000億円という規模であり、ペットの数は子供の数よりも多いのです。つまり、いまや業界団体の動きは政治にも関わってきています。実は、小池知事は国会議員だったとき、自民党動物愛護議連の会長でしたが、そのときに8週齢規制に大きな抜け穴を作ってしまいました。
それによって闇での処分が増えているのが現実であり、小池知事には表の処分だけに注力するのではなくて、そのときの責任も踏まえ、8週齢規制と飼養施設基準の法改正について行動に移して頂きたいと思っています。
私は法改正については、都議会議員としても、個人としても声を上げていきますし、これからもできることはやりながら、どんどんと発信はしていくつもりです。私と同じように本気で殺処分ゼロにしたいと考えている人には、譲渡という言葉だけに騙されずに、裏で増えている問題にも気がついてもらいたいです。
次の法改正が迫っていて、話し合いが始まっていくところなので、国の方でもドイツのような動物福祉に鑑みた施策を入れてほしい、と皆さんも声をあげてください。
うちの猫たちは保護団体から引き取った雑種ですが、本当にかわいい家族です。ペットに興味のある皆さんにはぜひ動物愛護センターや保健所、または、きちんとした考えを持って活動をしている動物愛護団体から引き取ってほしいと思っています。
(インタビュー・構成=志村昌美)
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