カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備を政府に促す議員立法のカジノ解禁法が国会で成立した。

 刑法が禁じる賭博にあたるため日本で認められてこなかったカジノの合法化に対し、国民の抵抗感は強い。自民党と日本維新の会を中心とする推進派が異論を押し切り、法成立を急いだことは極めて残念だ。

 衆参両院での実質審議は合わせて23時間余り。それでも、カジノ実現に向けた数々の課題が浮き彫りになった。

 カジノ解禁法は、施行後1年以内をめどに、規制基準や必要な対策を盛り込んだ実施法の策定を政府に義務づけている。課題の解決も丸投げした格好だ。

 国民が納得できる策を政府が出さない限り、カジノ実施は認められない。

 最も懸念されるギャンブル依存症に関し、推進派は国会答弁で、競馬、競輪などの公営競技やパチンコといった既存ギャンブルの弊害であり、カジノ解禁を機に政府に対策強化を求めると繰り返した。IR事業者から国や自治体が徴収する金の一部を対策に充てる考えも示した。

 すでにある依存症の問題にどう手をうつのか。何よりもまず、政府はこの点について明確な方針を打ち出すべきだ。パチンコや公営競技での被害抑止策も同時に考える必要があろう。

 依存症は本人や周囲を長く苦しめる深刻な問題だ。だが国レベルの対策はこれまでほとんど講じられてこなかった。

 客の換金行為が当たり前のパチンコが賭博でなく「遊技」とされ、競馬や競艇などが派手な広告を展開する。日本特有の事情が国の対応を遅らせてきた、と専門家は指摘する。

 公営競技と異なり、純民間業者が営むカジノをどんな論理で賭博罪の例外にするのか。やはり民営のパチンコは「脱法」のギャンブルでいいのか。こうした難題も積み残されたままだ。

 カジノを解禁する理由について、推進派は観光振興、とりわけ訪日外国人客の増加に伴う経済効果を強調した。

 だがアジアを見渡せばすでに多くの巨大カジノがあり、後発の日本が競争を勝ち抜けるとは限らない。国会では日本人のカジノ入場を禁じては、との意見も出たが、推進派は収益が伸びず国や自治体へ入る金が減る恐れがある、と否定した。結局、国民の散財を経済成長の糧に期待しているのか。

 今後の法整備を、政府は性急に進めてはならない。一つひとつの課題について、解決策をじっくり考えるべきだ。