脂肪肝のクリニックでの治療内容

更新日:2016/12/15

肝臓と脂肪肝の改善方法

4人に1人がかかるといわれる肝機能障害。その大部分は脂肪肝です。生活習慣病ともいわれる病気ですが、「食事制限や運動をすれば大丈夫」と自己判断するのは禁物。ドクター監修のもと、クリニックでの治療について詳しく解説します。

今や生活習慣病ともいわれる「脂肪肝」。そのほとんどが無症状のため、健康診断や人間ドックで指摘を受けて初めて気づくケースが大半のようです。脂肪肝は放置したままにすると肝硬変や肝炎に進行する場合がありますが、逆に言えば早期の段階で適切な対処と原因に合わせた治療法で、病気の進行を食い止めることができるのです。

今回の記事では脂肪肝の原因と身近なクリニックで受けられる検査方法、治療方法について解説します。

脂肪肝って?

脂肪肝は、生活習慣病のひとつです。肝臓には、もともとエネルギーとして脂肪が蓄積されていますが、脂肪肝はこの蓄積が過剰になる病気を言います。肝臓の病気は自覚症状があまりないことから、体調の悪化を自覚したときにはすでに手遅れの場合もあります。そのため、早い段階で正しい治療法を行うことが大切です。

脂肪肝の原因

脂肪肝の原因はさまざまありますが、主な理由にはアルコールの飲みすぎや過食があります。

(1)アルコール

大量の飲酒は、脂肪肝の原因のひとつです。

通常の常習飲酒のレベルはビール500ml、日本酒1合、焼酎1合、ワイングラス1杯のいずれかを日常的に摂取することです。一方、大量の飲酒とは、これらの3倍の量の常習を言います。この大量飲酒が、脂肪肝になる原因を生み出しています。

社会進出にともない女性の飲酒量は格段に多くなりました。その一方で、女性の肝硬変患者の平均年齢は男性よりも10歳以上若いなど、男性よりアルコールに弱い傾向が指摘されています。その原因としては、女性の方が血中アルコール濃度が高くなりやすいことがあげられます。

お酒が好きで日常的に飲んでいる方、肝臓が強いと思っている方は、肝臓の病気に注意が必要です。

(2)過食

カロリーの取り過ぎも脂肪肝の原因になります。

近年、注目されているのは飲酒習慣のない人の「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」、および、進行した病態の「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」の増加です。成人健康診断で20-30%にNAFLDが認められます。

過食によって中性脂肪が多く作られると、脂肪が溜まって脂肪肝が起こります。これを医学的に「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と言います。以前は、非アルコール性脂肪肝は「肝硬変」へ進行することはないといわれていましたが、近年では非飲酒の方が脂肪肝になっても肝硬変や肝臓ガンになるケースが増えており、注意が必要です。

また、「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」はアルコール性脂肪肝に比べ、数十年かけてゆっくり症状が悪くなっていく傾向があるので40代、50代で肥満の方は注意が必要です

※疾患(しっかん)とはいわゆる病気のことです。

脂肪肝の原因についての詳しくは『脂肪肝の原因』をご覧ください。

脂肪肝を放っておくと

脂肪肝は、ただちに医学的治療が必要といったような段階ではありません。数値に異常が見られた場合、脂肪肝の状態であれば運動習慣やカロリー制限をすることで脂肪のパーセンテージを抑え、肝臓の自己回復を促すことができます。

とは言え、自覚症状がないからといつまでも放っておくと「肝炎」や「肝硬変」へ進行し、ついには「肝がん」になってしまう可能性も出てきてしまいます。「肝硬変」まで進むと肝細胞が壊死と再生を繰り返し、線維を過剰に生産してしまい肝臓が硬く縮こまり、完治が難しい状態になります。

脂肪肝の検査方法

では、脂肪肝を調べるにはどんな方法があるのでしょうか。現在病院で行われている検査方法を3つご紹介します。

(1)血液検査

血液検査では、肝細胞内に存在する酵素であるALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTP(ガンマ・ジーティーピー)の数値を調べます。これらが基準値を超えた場合は、脂肪肝が疑われます。ただし肝機能が正常の脂肪肝もあるため、判断の参考程度に考えてください。

肝機能数値の細かい判断基準については『どのくらい危ない?あなたの肝臓数値(肝機能数値)』をご覧ください。

(2)画像から判断する方法

腹部超音波検査は健康診断や人間ドックで多く使われている検査で、脂肪肝の診断をするにもとても有効です。超音波検査では、脂肪肝の肝臓は通常よりも白く映るため、肝臓に隣り合う腎臓と比較して肝臓がハッキリと白く映った場合は「脂肪肝」と診断されます。他に、CT検査やMRI検査も脂肪肝の診断に有効です。

(3)確実な肝生検

肝生検とは肝臓の細胞を針で刺して取り、顕微鏡で観察する方法です。この方法は肝臓内の脂肪の割合を見て診断することができるので、脂肪肝を判断する方法としては確実です。ただし、検査入院の必要があります。

CT検査や肝生検についての詳細は『脂肪肝の検査・診断方法』をご覧ください。

治療方法

治療方法にはいくつかありますが、ここではもっともメジャーな治療方法をいくつか紹介しましょう。

(1)食事療法

  • 「体重に見合った食事で、3食同じ量を食べる」が大原則
  • 6つの基礎食品群から「品数は多く、量は少なく」
  • 塩分を摂り過ぎない
  • 油は上手に使う
  • ゆっくりよく噛んで、食後は休む

脂肪肝は本来過食や偏食で起きるため、それを正すことが重要です。欧米的な食生活をするようになった最近の日本では、摂取カロリーが高すぎる傾向にあります。

脂肪肝によくない食品としてはバターやお菓子、肉の脂身など。バターやラードなどの「動物性脂肪」は体脂肪になりやすいので、オリーブオイルや大豆油を使ってみてください。お菓子に含まれる砂糖や果物の糖質なども中性脂肪になりやすいため、食べ過ぎは避けましょう。

肝臓にとって、必要な栄養分は十分に摂取したいところですが、必要以上に摂取することは逆に負担になります。以下のポイントを押さえて、必要最低限の栄養を摂るようにしましょう。

脂肪肝を改善する食生活のポイントについては、『脂肪肝を改善する食事・食生活のポイント』で、また肝臓を元気にする食べ物や栄養素については、『肝臓によい食べ物とは?』で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

(2)運動療法

カロリー控えめの食事に加えて、有酸素運動を続けると効果が高くなります。肝臓内に貯まった脂肪は、運動によって減りやすくなるためです。また、筋肉には肝臓が弱った時に、糖やアミノ酸の代謝を促し有害物質の分解を助けるなど肝臓に代わる働きをしてくれます。散歩やジョギング、水泳など一定時間続けられる運動(有酸素運動)を1日10~30分、週3~5回するとよいでしょう。詳しくは、『単に痩せてもダメ!脂肪肝を改善するダイエット方法』をご覧ください。

有酸素運動は、高脂肪な食事などで肝臓に脂肪の付いた方には有効です。しかし、糖尿病や高血圧といった合併症を持つ方や、肥満度が極端に高い方には適しませんので、ドクターと相談し進めてください。

(3)未確立の薬物療法

脂肪肝に対する薬物療法としてビタミンEやビタミンC、糖尿病に用いるインスリン抵抗性改善薬、慢性肝炎に対して用いる肝庇護剤などの有効性も報告されていますが、確立された治療法ではありません。日本での有効性の検証はこれからで、あくまで補助的な治療になります。

肝臓の負担を軽くするサプリメントも

最後に、肝臓の働きをサポートしてくれるサプリメントについて紹介します。

・タウリン

もともと肝臓は、酵素を作り出してアルコールを分解しますが、「タウリン」は肝細胞の再生を助け、その細胞が壊れないように細胞膜を安定させ、酵素を多く作り出すように働いてくれます。

・オルニチン

肝臓には「オルニチンサイクル」という代謝の働きがあり、疲労の元となる有害なアンモニアを分解して解毒します。「オルニチン」は、このサイクルに関係しているため、摂取するとオルニチンサイクルの働きを活発化させ、機能が衰えた肝臓をサポートします。

「タウリン」や「オルニチン」の他に、納豆やごま、くるみなどに含まれる「アルギニン」、大豆や豆腐類に含まれる「サポニン」、ごまに含まれる「セサミン」などの成分も肝脂肪対策におすすめの成分です。特に「セサミン」は、肝臓に多く発生し、老化の原因にもなる活性酸素を攻撃してくれます。

毎日サプリを飲んでいるからといって、今まで通り肝臓に負担がかかる生活を続ければ、脂肪肝の症状が悪化するリスクは避けられません。そのため、サプリメントはあくまで補助的なものとして使用しましょう。

肝臓の回復を図るには、食事のカロリーを抑え、バランスの取れた食事を取ること、運動習慣をとり入れること、アルコールの量を抑えることが第一です。