チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年12月15日

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長年のタブーを破った電話会談の意味

 ドナルド・トランプ氏が次期米大統領に当選して以来、彼のとった最も衝撃的な行動の一つはすなわち、12月2日に台湾の蔡英文総統と電話会談したことである。

 周知のように、1979年に米中両国が国交を結んで以来、中国の主張する「一つの中国の原則」の下で、アメリカの大統領あるいは次期大統領は公式・非公式を問わず、台湾の指導者との接触を避けてきた。アメリカ政府のトップが台湾総統と直接にやりとりするようなことは長年タブーとされてきたのである。

台湾・蔡英文総統と電話会談を行ったトランプ次期大統領 (写真:AP/アフロ)

 しかしトランプ次期大統領はこの30数年来のタブーをいとも簡単に破ってしまったことから、米国国内でも大きな反響と反発を呼ぶこととなった。

 どうしてこのような破天荒な行動をとったのかについて、トランプ氏自身は「台湾総統から祝福の電話をもらい、それに応じた」と釈明しているが、それを額面通り受け取る人はほとんどいないだろう。第一、トランプ氏が当選したのは11月9日のことであり、台湾総統がそれから数週間経って当選を「祝福」する電話をかけるようなことは常識的にはあり得ない。

 しかも前述のように、台湾政府はアメリカの大統領や次期大統領と「音信不通」となってから久しく、台湾総統がアメリカの次期大統領に「祝福」の電話をかける前例や慣例はない。したがって蔡英文総統が自発的にトランプ氏に電話をかけたとはとても考えられない。

 しかし実際、蔡総統が電話をかけてくるような形で会談が実現したということは、要するにトランプ氏サイドから、台湾総統に「祝福」の電話をかけてくるよう働きかけ、驚喜した蔡総統がそれに従って電話をかけたのだろう。

 つまり、トランプ次期大統領と台湾総統との電話会談は、トランプサイドが計画して仕掛けた一つの外交事件なのである。

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