新幹線小浜ルートに落胆と期待 京都・滋賀の反応
北陸新幹線の敦賀-新大阪間は「小浜ルート」になる方針が決まった。京都府が求めていた舞鶴ルートは選ばれず、府北部では地域振興への不安が募る。一方、北陸と京都を最速で結ぶ案が採用されたことを京都の経済界は評価し、早期着工を強く求める。滋賀県は延伸区間から外れ、新幹線の整備に伴いJRから経営分離される並行在来線の問題に危機感を強める。
■府北部振興には「残念」、早期着工の声も
府は地域への経済効果を訴えてきた。山田啓二知事は「過疎高齢化が進む日本海側と、太平洋側との格差を解決するために舞鶴ルートを掲げてきた。速達性という理由で採用されなかった。残念だ」と述べた。
府北部の誘致団体の中心となった多々見良三舞鶴市長は「非常に残念。将来的な整備新幹線については国益を視野に入れて判断してほしい」とコメントした。与党検討委の委員長を務める西田昌司参院議員も「山陰新幹線の入り口という意味で舞鶴を言ってきた。将来の延伸に向けて調査を求めたい」と話した。
国の想定では敦賀-新大阪間の完成は30年後。リニア中央新幹線の名古屋-新大阪間開業より後になる。京都商工会議所の立石義雄会頭は「京都までのルートが固まったことは評価したい」とし、「地域経済への波及効果を高めるためにも、できる限り早期に大阪まで開通してもらいたい」と求めた。門川大作京都市長も「候補の3ルートとも京都駅を通る。市としてのメリットはどこでもそう変わらない」と受け止め、早期着工の必要性を訴えた。
一方、議論の中で浮上した京都-新大阪間は先送りとなった。新駅候補地の京田辺市の石井明三市長は「地域振興に南回りルートは大きな意義を持つ」と意欲を見せた。
今後は費用負担が論点となる。現行制度では建設費の約3分の1が地元負担となる。山田知事は「(長野-金沢間の)枠組みがそのまま当てはまるかは疑問だ。税金を使う以上、府民に説明できなければならない」と制度見直しを主張する。一方、米原ルートを前提に関西広域連合で費用分担を検討するとしてきたことに対し、滋賀県の三日月大造知事は「ルートが変われば当然(分担の在り方を)再検討しなければいけない」との考えを示した。
■湖西線の並行在来線化「あり得ない」
並行在来線も大きな課題だ。JR西日本は湖西線を検討対象とするが、三日月知事は「経営分離は認められない。中間報告で『自治体の意向を前提とすべき』と明記されたことは重い」とする。滋賀選出の上野賢一郎衆院議員も「湖西線の並行在来線化はあり得ないと明確になった」と強調した。
国土交通省は今後、ルートの具体化を進める。門川市長は「市内で大深度の難工事も予想される。都市機能に影響がないよう求めたい」と注文を付ける。延伸区間は「芦生の森」を含む京都丹波高原国定公園の区域を通過する。京都大芦生研究林の伊勢武史林長は「経済的利益を主眼にするのではなく、自然への影響も検討すべき」と指摘。「地上部を通過するなら多大な影響が懸念されるが、地下や研究林の外を通過する場合、基本的に原生林に影響は及ばない」と述べた。
【 2016年12月15日 09時10分 】