2016年12月05日(月)放送
アルツハイマー病 4つの疑問「軽度認知障害は治る?」
アルツハイマー病が進行すると
アルツハイマー病は、記憶を司る脳の海馬の周辺から萎縮が始まる病気で最初に物忘れが起こります。進行に伴って脳全体が委縮して、記憶力や判断力、物事を組み立てて行う能力、言語能力など、認知機能全体が徐々に低下していきます。アルツハイマー病は進行性の病気で、現在はまだ治療により根本的に治すことができないため、次第に進行していきます。進行に伴い、着替えや食事などの日常生活動作に障害が出るようになり、重度になると立つ、歩くといった運動機能にも障害が起こるようになります。
軽度認知障害とは
軽度認知障害とは、正常と認知症の間のグレーゾーンの状態のことで、MCIとも呼ばれます。記憶力や判断力、物事を組み立てて行う能力、言語能力などの認知機能に多少の低下がありますが、日常生活には支障がない状態です。たとえば、“きのう外出した”という、自分が体験したこと全体を忘れてしまうことがありますが、「きのうはあそこに出かけたじゃない」などと指摘すると思い出します。厚生労働省の推計では、軽度認知障害のある人は約400万人で、65歳以上の人の約13%、認知症のある人は約462万人で、65歳以上の人の約15%とされています。つまり、65歳以上の人の30%近くが軽度認知障害か認知症と考えられます。軽度認知障害や認知症の原因の60~70%は、アルツハイマー病と考えられています。軽度認知障害の段階で原因を突き止めて、適切な治療を早期に始めれば、認知症に進行するのを遅らせることができたり、原因となる病気の種類によっては治療により根本的に治せる場合もあります。
軽度認知障害による変化をチェック
軽度認知障害に早く気付くためには、日常生活でこれまでと変化がないか、家族や周りの人が注意することが重要です。もの忘れが目立つようになった、仕事や家事の効率が悪くなった、何となく元気や意欲がなくなった、ふだんと違うできごとを嫌がるようになった、趣味から遠ざかるようになった、つきあいの範囲が狭くなったなどの変化がみられれば、軽度認知障害かもしれないと意識してみることが大事です。気になる場合は、物忘れ外来や神経内科、精神科などを受診することがすすめられます。
軽度認知障害の対処法
軽度認知障害と診断された場合は、原因となる病気の治療が行われます。アルツハイマー病が原因の場合は、症状などに応じて薬が使われます。糖尿病や高血圧などの生活習慣病はアルツハイマー病のリスクを高めると考えられているため、治療によりしっかりとコントロールし、改善や予防のためには食生活や適度な運動が大切です。また、趣味や人との関わり、社会活動を続けることで認知症への進行を遅らせる効果が期待できます。
※2016年12月現在の情報です。