2016年12月08日(木)放送
アルツハイマー病 4つの疑問「若年性認知症と言われたら?」
若年性認知症とは
若年性認知症とは、65歳未満で発症した認知症をいいます。若年性認知症の場合は、脳卒中のあとに起こる血管性認知症が最も多く、原因の約40%を占めます。2番目に多いのが、アルツハイマー病で約25%です。次いで、交通事故などのあとに起こる頭部外傷後遺症の約8%、前頭側頭型認知症の約4%などが続きます。若年性認知症は、平均発症年齢が51歳と働き盛りでの発症が多いため、高齢で発症する認知症とは異なる問題がさまざま起こります。
若年性認知症の問題 病気への理解不足
若年性認知症は、仕事でミスが目立ち始めるなどの異変があっても、本人が“疲れている”などと思って認知症を疑わないことが多いため、発見が遅れやすくなります。また、若いため、自分で何かおかしいと思っても、家族や同僚に「大丈夫」などと言われて、見過ごす場合もあります。若年性認知症は、進行を防いだり遅らせたりするためには、早期診断と早期治療が重要です。仕事で単純なミスが続いた場合、念のために早め受診してください。ただし、医療関係者の間でも、若年性認知症の理解はまだ十分とはいえず、更年期障害やうつ病などと診断される場合もあります。認知症が疑われる場合は、物忘れ外来や認知症疾患医療センターなど認知症を専門とする診療科や医療機関を受診することがすすめられます。受診するときは、家族も同行して説明を聞くことが大切です。
若年性認知症の問題 さまざまな症状が出やすい
一般的な認知症の場合、症状がゆっくり増えていきます。アルツハイマー病の場合、たとえば、物忘れが目立つようになってからしばらくたつと、月日がわからなくなり、次に計算ミスが増え、しばらくすると言葉がうまく使えなくなる、というように症状が現れます。特にアルツハイマー病による若年性認知症の場合、こうした認知機能の低下による症状が比較的早い段階からまとめて現れてきます。それを防ぐためには、できるだけ早期から薬による治療を受けることが大事です。また、認知症の進行に伴って起こるさまざまな精神症状である「行動・心理症状」が早く現れるのも特徴です。若年性認知症は、仕事や家事、育児などをしている年代の人に発症するので、うまくいかないことが増えてくると、自分でもおかしいと思い、ミスしないように敏感になります。それでもうまくいかないため、イライラしたり、不安になったり、ショックを受けたりします。それが高じると、うつや興奮、妄想、攻撃的になるといった「行動・心理症状」が現れやすくなります。「行動・心理症状」の対策で重要なのは、本人が安心できるように接することです。家族や周囲の人は本人の気持ちを考えながら、時間をかけ余裕を持って接するようにします。認知症の進行を遅らせたり、症状を出にくくしたりするためには、残っている脳の機能、体力、意欲を維持することが大切です。そのためには、仕事や趣味、人とのかかわり、運動など、活動的な生活を続けるように心がけてください。
若年性認知症の問題 経済的な困難や家族への負担
若年性認知症の人は、子どもがまだ自立していなかったり、親の介護が必要だったりする場合も多く、退職してしまうと経済的な問題が生じます。大切なのは、できるだけ今の仕事を続けることです。難しくなったら上司に相談して、配置転換を考えてもらいます。例えば、営業からデスクワークに異動したり、会社の許可を得て、夫婦で協力したりしながら仕事を続けているケースもあります。退職せざるを得なくなった場合は、企業の障害者雇用の枠で再就職する方法があります。ハローワークで再就職のためのトレーニングを受けながら、働く機会を見つける方法もあります。認知症が進行して仕事をすること自体が困難になった場合は、障害年金など公的な制度による経済的支援を早めに受けましょう。認知症疾患医療センターや地域包括支援センターなどで相談できます。仕事をやめたあとに勧められるのは、ボランティア活動です。例えば、幼稚園で子供に絵本を読んだり、登下校の交通安全を手伝ったり、人の役に立っていると実感することで意欲を保ち、認知症の進行を抑える効果も期待できます。
若年性認知症の問題 適した介護施設が少ない
40歳以上の若年性認知症の人は、介護保険によるサービスが受けられます。ただ、若い人に適した介護施設が少ないのが現状です。若年性認知症の人はデイサービスに通うことが多いのですが、高齢の利用者が多く、高齢者向けのプログラムだと、なじめずに通わなくなるケースが少なくありません。対策としては、まずは若年性認知症の人向けのデイサービスを探して通うことです。特に首都圏などでは、そうした施設が増えています。地域にない場合は、デイサービスのスタッフと相談して、ボランティアで軽作業を手伝ったり、高齢者の話し相手をしたりするなど、本人がやりがいを感じられる方法を考えてくれる場合もあります。そうした情報を知るためにも、まず、地域包括支援センターに問い合わせてください。
若年性認知症に関して相談したいとき
- 「若年性認知症コールセンター」
- 電話 0800-100-2707
(月曜日~土曜日 10:00~15:00 年末年始・祝日除く) - 「若年認知症サポートセンター」
- 電話 03-5919-4186
(月曜日・水曜日・金曜日 10:00~17:00 年末年始・祝日除く)
※2016年12月現在の情報です。