2016年12月06日(火)放送
アルツハイマー病 4つの疑問「検査でどこまで分かる?」
認知症が疑われる場合の受診
認知症の原因となる病気は、アルツハイマー病だけではありません。認知症の疑いがあると言われたけれども、病気の診断を受けていない場合には、詳しい検査を受けてください。原因となる病気によって、治療方針や適した治療が異なるからです。その際は、物忘れ外来や認知症外来、認知症専門医のいる神経内科や精神科、老年科などを受診します。かかりつけ医に相談をして、専門医を紹介してもらってもよいでしょう。治療方針が決まったら、近くの医療機関で治療を受けることも可能です。最近では、一部の開業医などに増えている認知症サポート医のもとで、認知症、特にアルツハイマー病の治療が受けやすくなっています。
認知症の検査
認知症の原因を調べるための検査は、主に6種類あります。問診では、どのような症状があり、いつ頃から現れてきたのかなどのほか、病歴などを聞かれます。本人の話だけでは詳細がわからないことが多いので、患者さんのふだんの様子を知っている家族や周囲の人から話を聞きます。内科的診察では、血液検査や血圧測定、心電図検査などにより、全身の状態を調べます。体調不良によって認知症の症状が出ていることがあるためです。神経学的検査では、歩行などの動作をみてもらい、まひや歩行障害などの有無を調べます。脳血管障害やパーキンソン病と見分けるのに役立ちます。認知機能テストでは、「きょうは何年の何月何日ですか?」などいくつかの質問に答えて、記憶力などの認知機能が低下していないかどうかを調べます。心理テストは、臨床心理士を交えたテストで、必要に応じて行われます。記憶力低下や日常生活動作に異常がないかなど、認知症の程度を調べます。脳の画像検査には、脳の形をみるCTやMRI、脳の働きをみる脳血流SPECTなどの方法があり、脳の病気の有無やその程度を調べます。アルツハイマー病では、通常、脳にある、記憶を司る海馬の周辺から萎縮が始まり、やがて脳全体が委縮していきます。MRIでは、その萎縮の状態を詳細にみることができます。
初期のアルツハイマー病でも発見できる脳血流SPECT
アルツハイマー病による認知症でも、ごく初期の場合では海馬の萎縮が小さいため、MRIに映らないこともあります。また、進行した場合でも、海馬がほとんど萎縮していないケースがあります。脳血流SPECTは、脳内の血流量をみることでアルツハイマー病を診断することが可能です。健康な人の脳に比べて、アルツハイマー病による認知症の人の脳では、血流が低下します。脳の後部から血流低下が目立ち始めます。脳血流SPECTでそのような特徴が見られれば、アルツハイマー病が原因の認知症と診断することができます。また、認知症の前段階である軽度認知障害の人の場合でも、脳血流SPECTで同様の特徴が見られれば、アルツハイマー病が原因と診断することができ、より早く適切な治療を開始することができます。脳血流SPECTは、地域の中核病院や、国立病院、大学病院などで受けることができます。
アルツハイマー病の原因物質・アミロイドβたんぱくを調べる検査法
最近では、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβ[ベータ]たんぱくという物質の脳での蓄積を調べる検査法も開発されています。アミロイドβたんぱくは、脳内で作られたあと、本来なら次第に分解されます。しかし、分解されずに脳にたまっていくと、その結果、神経細胞が死んでしまって脳が委縮していき、アルツハイマー病を発症しやすくなります。アミロイドβたんぱくがたまり始めてから10~20年ほどでアルツハイマー病による認知症を発症すると考えられています。脳内でのアミロイドβたんぱくの蓄積をみることができる検査が、アミロイドイメージングです。この検査でアミロイドβたんぱくの蓄積がわかれば、アルツハイマー病による軽度認知障害や認知症であると診断でき、蓄積していなければ、認知症であってもその原因がアルツハイマー病でないことがわかります。この検査は、現在はまだ保険診療の対象ではなく、主に研究目的や薬の開発のために用いられています。自由診療で受けられる医療機関は、全国で数か所のみです。将来、アミロイドβたんぱくを減らす治療法の開発が実現されれば、アミロイドイメージングの検査も受けやすくなることが期待されています。
※2016年12月現在の情報です。