2016年12月07日(水)放送

アルツハイマー病 4つの疑問「薬をどう使い分ける?」

アルツハイマー病の薬の効果

アルツハイマー病の進行
アルツハイマー病の薬
進行度別の使い分け

 現在使われているアルツハイマー病の薬は、症状を改善する効果がありますが、アルツハイマー病を根本的に治す効果はありません。薬によって記憶力などの認知機能が改善しても、病気は次第に進行していきます。しかし、早い段階で診断して適切な薬を使えば、症状が軽い状態を長く維持できます。また、薬を使うことで、患者さんや家族は治療を受けているという安心感を得られて、それにより生活を平常に保つ効果もあります。アルツハイマー病の薬は、脳の神経細胞間の情報伝達を活発にすることで、認知症の症状を改善します。薬は現在全部で4種類あり、作用の違いで2つに大別されます。1つは神経伝達物質のアセチルコリンを減少しにくくする作用を持つ薬で、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの3種類です。これらの薬には意欲を向上させる効果もあります。いずれの薬も同じ作用を持つため、どれか1つを選んで使用します。もう1種類のメマンチンは、神経細胞の死滅を防ぐ作用を持つ薬です。気持ちをおだやかにさせる効果もあります。これら4種類の薬は認知症の進行度によって使い分けたり、ドネペジルなどアセチルコリンを減少しにくくする薬のうち1つとメマンチンを併用したりします。

のみ忘れを防ぐ方法

薬の飲み忘れを防ぐ対策

 アルツハイマー病は物忘れが起こるため、薬ののみ忘れを防ぐための工夫が重要です。家族がいて、1日1回ののみ薬なら、朝でも夜でも家族の都合のいいときに毎日同じ時間にのんでもらいます。薬の一覧表や1日分の薬を入れるポケットのついたカレンダーを目立つ場所に貼り、のみ忘れをチェックする方法もあります。デイケアなどを利用している場合は、介護スタッフに協力してもらいます。

薬の副作用と変化に応じた薬の使い方

薬の副作用
変化に応じ薬の使い方をかえる

 ドネペジルやガランタミン、リバスチグミンの主な副作用は、吐き気やおう吐、食欲不振、下痢などの消化器症状で、脈拍が遅くなることもあります。薬の使い始めや増量後に、イライラしたり、興奮したり、攻撃的になる場合もあります。副作用が現れた場合は、早急に医師に相談します。イライラや興奮は、気持ちを穏やかにする効果のあるメマンチンの併用などに変えて対応します。メマンチンの主な副作用は、ふらつき、眠気、頭痛、血圧上昇、便秘、食欲不振です。高齢でふらつきや眠気が出た場合は、転倒や骨折の危険があります。ふらつきや眠気は、少量の薬を夕食後1回服用することから始めて予防します。それでも起こる場合は、薬の量を減らすなどします。副作用やイライラなどの変化により患者さんや家族が自己判断で薬をやめると、急に症状が悪くなることがあります。患者さんに症状や行動の変化がみられた場合、詳しく医師に伝えることが大切です。医師はそうした変化に応じて、薬の量を変えたり、薬の種類を変えたり、薬を併用したりすることで、薬を長く効果的に使えるようにします。

※2016年12月現在の情報です。

詳しい内容については、きょうの健康テキスト12月号に掲載されています。
きょうの健康テキスト12月号