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【金融不全 変われぬ銀行(4)】
認知症高齢者に6千万円投信託売りつけた銀行 「信頼」の看板逆手にあくどい契約横行、モラルはどこへ?
大阪市北区。大阪地裁で行われた、ある大手銀行が被告となった損害賠償訴訟は、原告の女性(87)の全面的な勝訴だった。だが、法廷に女性の姿はなかった。重度の認知症のため、来ることができなかったのである。平成25年10月のことだ。
そんな女性に、銀行は元本割れのリスクがある6千万円もの投資信託を売りつけた。運用は失敗、損害額は2千万円に上った。
「パンフレットを使い、十分に説明した」。勧誘した銀行員は法廷でそう証言した。しかし、介護記録や診療カルテからは、女性がそうした説明を理解するのが難しい状況であったことが明らかだった。
さらに銀行側が裁判所に提出した女性との交渉記録には、女性がデイサービスに出かけていた時間帯に「自宅で商品説明」などと虚偽の記載が散見された。
判決は、銀行側の販売方法に問題があったことを認め、女性への約2千万円の賠償を命じた。銀行側は控訴したが、裁判所の斡旋(あっせん)で和解が成立している。
原告代理人の松田繁三弁護士は憤る。「無防備な高齢者を狙った道徳のかけらもない、あくどい手口だ」
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あれから3年。高齢者を狙ったモラルなき商法は今も横行している。