記事詳細
【金融不全 変われぬ銀行(4)】
認知症高齢者に6千万円投信託売りつけた銀行 「信頼」の看板逆手にあくどい契約横行、モラルはどこへ?
国民生活センターによると、27年度の「金融・保険サービス」に関する相談は約8万件で減少傾向にある。一方で、70歳以上は26%を占め、18年度の9%から3倍近くも増えている。
相談事例が物語るのは、節度のなさだ。1人暮らしの80代の女性は銀行に勧められ、家族の知らないうちに20年満期の生命保険を契約。外貨積み立てによる損害も出ていた。
販売手数料目当てに頻繁に投信を買い替えさせる、顧客のニーズとは無関係に手数料の高い商品を勧める…。自己都合を優先する営業体質。彼らの視界に消費者の姿はないかのようだ。
金融問題に詳しい本杉明義弁護士は語る。「高齢者にとって銀行の看板は『信頼』の代名詞でもある。それを利用して収益を上げているというのが現在の実情。コンプライアンス(法令順守)の希薄さには愕然(がくぜん)とするばかりだ」
◇
10月初旬、東京都内で講演した金融庁の森信親長官は銀行の経営姿勢に辛辣(しんらつ)な言葉を浴びせた。
「ノルマで営業を縛り、高い販売手数料や顧客に見えにくい複雑な商品に傾斜してきた経営が、自身の経営環境の悪化という形で跳ね返ってきている」
その翌月に出そろった3メガバンクの中間期連結決算はマイナス金利の影響もあり軒並み減益。先行きには暗雲が立ちこめる。