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【社説】

イチエフ 廃炉の現場から<3> 40年の値段はいくら

 イチエフから南へ約二十キロの高台に、ことし四月に本格オープンした日本原子力研究開発機構の楢葉遠隔技術開発センターは、いわば廃炉ロボットの実験場だ。

 通称モックアップセンター。モックアップとは、実物大模型のことである。

 溶け落ちた核燃料デブリの除去は、廃炉作業の大前提だ。

 原子炉格納容器を水で満たして、放射線を遮蔽(しゃへい)しながら、遠隔操作の水中ロボットで取り出す方法が有力視されている。

 格納容器には事故の衝撃で、たくさんの穴が開いたとみられている。水を満たすには、グラウトというセメントのような材料でまず穴をふさがなければならない状態で、そのためのロボットも必要になる−。

 巨大ロボットの格納庫を思わせる試験棟には、原子炉下部のドーナツ型の圧力抑制プールの一部を切り取った実物大模型をはじめ、模擬階段や、試験水槽(直径五メートル、深さ四・五メートル)などが設置されていて、各種ロボットの動作試験や、遠隔操作の訓練などが展開される。

 研究管理棟では、イチエフ2号機の原子炉を3D映像で再現し、内部を仮想体験できる。

 建設費は約百億円。廃炉準備にかかる費用のごく一部と言っていい。四十年という歳月を費やす難事業には、それに見合う費用もかかる。そのツケは、何らかのかたちで電力消費者に回される。

 経済産業省は今月九日、イチエフの廃炉や賠償などにかかる費用が、二一・五兆円に上るとの見積もりを公表した。これまでの想定の二倍に増えた。

 イチエフの廃炉費用は二兆円から四倍増の八兆円。デブリの回収コストを初めてきちんと積み上げてみたら、こうなった。

 イチエフ廃炉は前人未到の難事業。これからさらに四十年、まだ見ぬ多くの課題に直面し、費用はどこまで膨れ上がることだろう。

 確かになったこともある。

 原発は、結局高くつく。もう安いとは言わせない。

 

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