杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
新垣結衣が演じるみくりは、原作とは違うターゲットを開拓
ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の勢いが止まらない。TBSの上層部もホクホクで、先月末の定例会見で編成担当の佐々木卓常務は「全国的には20%の回の局もある。大変好調。女性層に加えて、男性若年層の支持を得て、初回から毎回毎回視聴率を伸ばしています」とコメントした。先に書いた記事では、原作の愛読者として、ドラマのオリジナルな魅力について書いた。今回も原作と見比べながら、ドラマのオリジナリティを見ていきたい。
ドラマの最大の特徴は、ヒロインが新垣結衣だということだ。20代を代表する人気女優だ。長身で清潔感のある美貌は、女性からも男性からも支持されている。
原作のみくりは、小賢しい性格が災いして、就職活動も恋もうまくいかない残念な女の子である。パッとしない女の子がモテモテという少女漫画の定番の作りになっている。
ところが、そのみくりを新垣結衣が演じると、「美しく魅力的」という要素が加わる。それを象徴するのがドラマの1回目での、みくりと津崎の出会いのシーンだ。みくりが家事代行スタッフとして訪れると、津崎は固まってしまい、しばらく言葉が出てこない。その反応にみくりが慌てると、津崎は「すいません。思いの外お若くていらっしゃるので」と視線を外す。自宅のドアを開けたら、若く美しい女性が立っていたので、一瞬、パニックになったのだ。
原作には、この「すいません。思いの外お若くていらっしゃるので」というセリフはない。新垣結衣という美しい女優がみくりを演じたことで、ふたりの出会いも関係性も原作とは変わっていく。
星野源演じる津崎平匡は、京大出身で優秀なエンジニアだが、35歳まで恋愛経験がないという設定。そういう独身男の部屋に、新垣結衣が現れ、部屋の家事をしてくれる。契約結婚して、一緒に暮らしたいと言いだし、「私は平匡さんが一番好きですけどね」とも声に出し、呟いてくれる。
つまり、「モテない僕の前に天使が舞い降りた」というラブコメ系ライトノベルの王道パターンなのだ。
このドラマのクライマックスシーンのひとつとなったのが、津崎がみくりに「女性経験がない」と告白するシーンだ。みくりに「平匡さんとならそういうこと(セックス)をしてもいい」と言われたとき、津崎が
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