シリア アレッポに残された人が“最後のメッセージ”

シリア アレッポに残された人が“最後のメッセージ”
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内戦が続くシリアで、アサド政権によってほぼ全域が制圧された北部の主要都市アレッポでは、市内に取り残された人たちが「最後のメッセージになるかもしれません」などと訴える動画をインターネット上に相次いで投稿し、アレッポの人道状況に世界から懸念の声が上がっています。
アレッポに住む女性は、アサド政権とそれを支援するロシアがアレッポの完全制圧に向けて攻勢を強めていた今月12日に、「これが私からの最後のメッセージになるかもしれません。1つ1つの爆弾によって虐殺が進行しています。どうかアレッポを助けてください」と訴える動画をツイッターに投稿しました。
また14日には、背後で爆発音と見られる大きな音が響く中、「市民の虐殺が続いています。市民には逃げる場所がありません」と話し、今も攻撃が続いていると訴えています。

またアレッポに住む男性は12日、時折深いため息をつきながら、破壊された建物の前で「多くの人が殺され、建物や道路に遺体が放置されています。逃げることもできず、病院もありません。もはや国連も国際社会も信じられません」と話す動画をインターネット上に投稿しました。

こうした投稿はソーシャルメディアを通じてインターネット上で広がり、「無事でいてください」などといった反応が多く寄せられています。

国連の推計ではアレッポには5万人に上る市民が取り残されていると見られ、人道状況に世界から懸念の声が上がっています。

市民の避難始まらず 戦闘が再燃

シリアで、劣勢に立たされた反政府勢力の主要なグループは、最大の拠点アレッポから撤退することで、アサド政権を支援するロシア政府と合意しましたが、実行に移される前に戦闘が再燃し、取り残された市民が巻き添えになることが懸念されています。

アサド政権は、ロシア軍の空爆支援を受けて、13日までに北部の主要な都市アレッポのほぼ全域を制圧しました。

こうした状況を受けて、アレッポを死守するとしてきた反政府勢力の主要なグループは、取り残された市民を避難させ、みずからも市外に撤退することで、政権を支援するロシア政府と合意しました。

しかし、いくつかの条件をめぐって調整がついていないもようで、市民の避難は予定の時間を過ぎても始まらず、14日、空爆や砲撃による戦闘が再燃しました。
政権側と反政府勢力は互いに相手側が先に攻撃してきたと非難しています。

戦闘地域に取り残されている市民は、NHKの取材に対し、「安全に避難することが保障されるなら、みんな、ここから脱出したいと願っている」と話しています。

反政府勢力とロシアの合意で、取り残されている市民が無事に避難できるという期待が生まれましたが、戦闘が再燃したことで、市民が巻き添えになることが懸念されています。

トルコとロシアが電話会談

アレッポで戦闘が再燃し市民の避難が妨げられている事態を受けて、トルコのエルドアン大統領はロシアのプーチン大統領と14日、急きょ電話会談を行いました。

トルコのアナトリア通信によりますと、市民の避難と戦闘員の撤退に向けた合意を維持するため、各勢力への働きかけを続けることで一致したということです。

またエルドアン大統領は、市民を安全に避難させる経路が確保されれば、トルコには避難民の保護や人道支援にあたる用意があると伝えたということです。

トルコ政府は、アレッポ東部から避難する住民に対応するため、最大8万人を収容できる避難民キャンプを国境地帯に立ち上げる方針ですが、アレッポでは戦闘が再燃しており、調整は難航しています。