金メダリストリレートーク
2016年11月30日・中日劇場
歴代五輪金メダリストが集結
暮らし<眠れる夜を返して 広がる低周波音被害>(上) 隣家の電気給湯機家庭用の電気給湯機「エコキュート」などから発生する低周波音の被害を訴える人が増えている。人によって不眠や吐き気などの症状が現れるが、通常の騒音と違って計測は難しく、環境規制はない。発症の仕組みも未解明だ。「新たな環境問題」に対し、国や自治体、業界団体の対策はあまり進んでいない。 「何もしていないのに、あの日から生活ががらりと変わってしまった」。埼玉県の六十代夫婦は声を震わせる。もう二年近く、不眠や吐き気、頭痛、肩こりに苦しんでいる。 被害が始まったのは昨年一月下旬の夜。妻が風呂から上がると、「ゴーという音が響いているのに気付いた」。音源を捜したところ、隣家の敷地内に設置されたばかりの家庭用電気給湯機「エコキュート」だった。自宅との距離は約二メートル=見取り図参照。夫は「部屋が音で震えるように感じた。とても眠れる状態ではなかった」と話す。 二人は体調を崩し、隣家に移設してもらうよう相談。移設費用も負担すると申し出たが、「不良品ではないのに、移設する理由がない」と断られた。 やむなく昨年夏、メーカーと隣家などを相手取り、稼働の差し止めと損害賠償を求めてさいたま地裁川越支部に提訴。被告側は「音は小さく、問題ない」などと反論し、現在も争っている。 夫婦はあまりに苦しいときは近隣の宿などに避難する生活を続けており、「家のどこにいても音の圧迫感があって逃げ場がない。元の暮らしに戻りたい」と訴える。 夫婦が音源と指摘するエコキュートは、外気熱を利用して湯を沸かす「ヒートポンプ」を使った電気給湯機の総称だ。電気料金の安い夜間に湯を沸かし、貯湯タンクにためる。ファンやコンプレッサー(圧縮機)が部品として使われている。 メーカー九社が加盟する一般社団法人日本冷凍空調工業会によると、出荷台数は二〇〇一年の発売以来、累計で五百万台を超えた。普及と重なるように、低周波音の苦情も増えている=グラフ参照。環境省によると、全国の自治体に寄せられた低周波音の苦情件数は一四年度に二百五十三件。このうちエコキュートを含む「家庭生活」を発生源とする苦情は五十九件で、〇一年比で三倍以上になった。 同省の担当者は「大きな低周波音が、不快感や圧迫感を与えるという知見はある」としながらも、同居する家族でも症状が出る人と出ない人がいるケースがあるなど、「医学的な根拠ははっきりしていない」と慎重だ。 日本冷凍空調工業会は「エコキュートからは低周波音以外の音も出ており、低周波音が原因かどうかは分からない」と説明。ただ、苦情が寄せられているため、一一年に設置業者やメーカー向けにガイドブックを作成。隣家の寝室のそばに設置するのを避けることをすすめている。 (寺西雅広) <低周波音> おおむね100ヘルツ以下の音を指し、人の耳には聞こえにくいレベルの音もある。工場や風力発電の風車からの低周波音で健康被害を受けているとする苦情は以前からあったが、最近はエコキュートなど家庭が発生源となる傾向がある。 PR情報
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