『自閉症の僕が跳びはねる理由』
「僕たちは、自分の体さえ自分の思い通りにならなくて、じっとしていることも、言われた通りに動くこともできず、まるで不良品のロボットを運転しているようなものです。
いつもみんなにしかられ、その上弁解もできないなんて、僕は世の中の全ての人に見捨てられたような気持ちでした。
僕たちを見かけだけで判断しないで下さい。どうして話せないのかは分かりませんが、僕たちは話さないのではなく、話せなくて困っているのです。自分の力だけではどうしようもないのです。
自分が何のために生まれたのか、話せない僕はずっと考えていました。僕は筆談という方法から始めて、現在は、文字盤やパソコンによるコミュニケーション方法を使って、自分の思いを人に伝えられるようになりました。
自分の気持ちを相手に伝えられるということは、自分が人としてこの世界に存在していると自覚できることなのです。話せないということはどういうことなのかということを、自分に置き換えて考えて欲しいのです」
東田直樹著『自閉症の僕が跳びはねる理由』より
日本ではまだ知らない方も多いと思いますが、『The Reason I Jump』と翻訳され、(「自閉症の僕が跳びはねる理由」)世界20カ国以上でベストセラーになっているそうです。
重度自閉症の著者東田直樹さん
『自閉症の僕が跳びはねる理由』という本を書いたのは、重度の自閉症と診断されている東田直樹さんという方です。東田さんは、現在22歳で、5歳の時に自閉症と診断されました。
自閉症は広汎性発達障害に分類されます。
自閉症には軽度から重度、さらに知的に遅れがあるかないかなど、同じ自閉症でも一人一人特性は全くちがいます。
東田さんは、知的の遅れのない重度の自閉症です。大きな特性として、言葉を発して会話をする事が困難で、筆談や文字盤(母親手作りのパソコンのキーボードの様なもの)を使ってコミュニケーションをとります。
この『自閉症の僕が跳びはねる理由』という本は東田さんが15歳の時に出版されました。
本の内容は?
この本は、質問に自閉症者である東田さんが答えるという形で書かれています。
- どうして手の平をひらひらさせるの?
- 自閉症の人がすぐに返事をしないのは何故?
- どうして目を見て話さないのですか?
- どうしてパニックを起こすのですか?
このような質問が沢山あって、それに答えています。本の中の質問は、正に自閉症の子を持つ親にとってはすごく知りたいことばかりだと予想できます。
重度の自閉症の場合よく言われるのが、「子どもの頃から目が合わず、愛着も形成しにくく、言葉も話さない、まるでそこに人が居ないように振る舞う」ということです。
母親からすると、我が子に違和感を感じ、病院で自閉症と診断された後も、我が子が何を考えているのか、またどう受け入れ、どう接したらいいのか、すごく難しい事だと思います。
自閉症者を取り巻く、母親を含め周りの人たちが疑問に感じている沢山のことを、この本には東田さんの答えが書いてあります。
胸がいっぱいで言葉にならない思い
私はこの東田さんとその著書をNHKの番組で知りました。素直に驚いたのは、重度の自閉症の人にも感情があり、頭の中には沢山の気持ちや伝えたい事があるという事です。
「自分の体さえ自分の思い通りにならなくて・・・」
考えてみれば、人間なので感情があって当然なのですが、例えば見た目は普通なのに、急に飛び跳ねたり、大声を出したりする大人と道ですれ違うとします。正直怖かったり障害者だなと思ったりして避けようとしてしまう方も多いでしょう。でも飛び跳ねるのにも本人には理由があるし、大声を出すのにも理由があって、それを言葉で伝える事が出来ないだけなのです。
私の息子も自閉症スペクトラムです
まだ3歳で大人の東田さんとは違うところの方が多いのですが、言葉で上手く伝えられない部分は同じです。奇声をあげたり、他の子と同じ様に出来なかったり、癇癪が続いたりと悩みも多いです。
そんなときに東田さんの番組を見て、著書を知りました。
あぁ、、、上手く言葉に出来ないけれど、「そうなんだ、ちゃんと理由があるんだ。私はまだまだ分かってあげられていない。本当の意味で自閉症スペクトラムの息子を受け入れきれてないのだな」という思いになりました。
胸がいっぱいになって、感動という言葉では言い表せない気持ちになりました。
そうなんだ、障害者の前に1人の人であり、人には感情や想いがあって当然だとハッとさせられました。
障害を持つ我が子のどこに注目すべきか
「僕たちを見かけだけで判断しないでください。」
見かけは確かに東田さんも私の息子も変わり者に見えます。言葉で伝えられない想いが仕草に出たり、パニックを起こしたり、こだわり故の謎の行動があったり。
しかし、我が子の障害を受容する為に、すべき事は、見かけじゃなく中身を知ろうとすることです。
例えば自閉症や自閉症スペクトラムの子どもは、パニックになって自分の頭を床に打ち付けたりと自傷行為をする場合も多いです。チックを併発する事も多いです。エコラリアで延々と訳の分からない言葉を話し続けたりもします。
しかし、そこじゃないんです。
注目すべきは、『何故そうするか、そんなときどんな気持ちで何を伝えたいのか』です。
親はそんな風に寄り添ってあげることが一番重要だと気付かされました。
親から見ると訳の分からない行動にも障害を持つ子ども自身には、ちゃんと理由や気持ちや伝えたい事があるんです。
ただ言葉で上手く伝える事が出来ないだけなのです。
我が子が、自閉症を含め発達障害だと診断されると、どうしても「障害」という部分に気を取られてしまいます。しかし「障害」の部分ではなく、例えば何が好きか?感受性の強い我が子はどう感じているのか?など人と違う秀でている部分があったなら、そこに注目する事が大切なんだと気付く事ができます。
そして、それが出来て初めて、ありのままの我が子を受容するという事なのです。
本当の意味で受け入れるということ
『自閉症の僕が跳びはねる理由』と、東田さんを特集した番組で多くの衝撃を受けました。本当の意味で我が子の障害を受け入れるという事は、どういう事なのか?
どうやって寄り添えば、発達障害の子どもは嬉しいのか?気持ちが良いのか?心地よいのか?
そんな沢山のことを学べました。
私も今までそれなりに、3歳の息子が自閉症スペクトラムなので、発達障害について沢山勉強してきました。
話しかけ方や、分かりやすい会話の仕方、遊びの工夫や、療育的な観点での接し方などです。
しかし、そうじゃなかった。
一番大切な事はそこじゃなかったんだと衝撃を受けました。
そして、今まで以上に障害のある息子を愛おしく感じました。
自閉症や自閉症スペクトラムなどの発達障害は、変わった言動が多いけれど、決して精神が破綻しているのではないのです。むしろ普通の人間には感じられない斬新な感受性を持ち併せているのです。
そんな我が子が愛おしくてたまりません。
まとめ
我が子の障害を受け入れるのが困難に感じるとき、自閉症の我が子への接し方に悩んでいるとき、自閉症の我が子が宇宙人のように別世界にいると感じるとき、『自閉症の僕が跳びはねる理由』を読んでみてください。
発達障害の子どもを育てている方、関わっている方、知りたい方、沢山の人にこの本を知ってもらえればと思います。
こんなにもピュアな人は他には居ないと感動を覚えるでしょう。言葉でコミュニケーションが取れないだけで、内にはこんなにも感情豊かで、こんなにも綺麗な言葉と気持ちを持っているんだと衝撃を受けます。そして障害を持つ我が子がさらにさらに愛おしく感じると思います。
「自分が傷つくのは我慢できます。しかし、自分の存在のせいで傷つく誰かがいるのが耐えられないのです。」
東田直樹さんの言葉より
言葉に出来ないだけで、こんなにも素晴らしい考えや気持ちを持ち合わせているのです。
お読みいただきありがとうございます。
発達障害について他にも沢山の記事を書いています。良かったら読んでみて下さい(^^)
■「発達障害なんです」と周りに伝えるべきかどうか? - Chantam's Diary