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ちえてとら

人として成長することができる読書が好きです。 このブログでは、わたしが読んだ本についてを主に綴っています。 読んでいただけたら嬉しいです。

「生物と無生物のあいだ」と「生命と食」

 食べること    読書  

 

福岡伸一さんという生物学者の方が、食について興味深いことを発言していることを知り、著書「生物と無生物のあいだ」を手に取って読んでみたことがある。

生物学という学問に接点がないわたしにとっては、ほとんどの部分は難しくて・・・理解できないところが沢山あったのですが、一つわたしの心に残ったことがありました。

 

生物が生きているかぎり、栄養学的要求とは無関係に、生体高分子も低分子代謝物質もともに変化して止まない。生命とは代謝の持続的変化であり、この変化こそが生命の真の姿である。

つまりここにあるのは、流れそのものでしかない。
私たちは、自分の表層、すなわち皮膚や爪や毛髪が絶えず新生しつつ古いものと置き換わっていることを実感できる。しかし、置き換わっているのは何も表層だけではないのである。身体のありとあらゆる部分、それは臓器や組織だけでなく、一見、固定的な構造に見える骨や歯ですらもその内部では絶え間のない分解と合成が繰り返されている。
 福岡伸一 著「生物と無生物のあいだ」より

 

 

このことを、もう少しきちんと理解したいなぁ。と思っていたところ「生命と食」という本を見つけることができました。

生命と食」では、生きることと食べることの本質的なことに焦点を当てて書かれていたので、わたしにも理解しやすかった。そして、食について更に考えさせられる内容だった。

 

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『食べものというのは、単なるカロリー源ではない』ということを、ルドルフ・シェーンハイマ—というユダヤ人の科学者が明らかにしていた

 

シェーンハイマ―は、ネズミに食べものを食べさせて、その食べものの分子がネズミの体の中に入ったあと、どこへ行き、どうなるかを追跡する実験を行った。

食べものは体内で燃やされて、何時間か、あるいは何日かあとに、目印を付けた元素を含む燃えかすが、呼吸や糞尿の中に排泄されるだろうとシェーンハイマ―は予想していたという。

ところが実験の結果は、シェーンハイマ―の予想を見事に裏切りました。目印を付けたアミノ酸は全身に飛び移り、その半分以上が脳、筋肉、消化器官、骨、血管、血液など、あらゆる組織や臓器を構成するタンパク質の一部となっていました。食べものは、ネズミの体の一部となって、その場に留まっていたのです。

しかし、その三日間で、ネズミの体重は増えていませんでした。このネズミは大人のネズミだったので、成長しないで、ほぼ同じ体重で留まっていたのです。食べものには重さがあります。食べものがネズミの体の一部になったのならば、その食べものの分の重さがネズミの体重に加わるはずです。なのに、体重が増えないということは、何を意味しているのでしょう。

このことから、食べものは体の中に入って、体の一部に変わるけれど、もともとそこにあった分子は分解され、体の外に捨てられた、ということが考えられます。つまり、食べものの分子は、単にエネルギー源として燃やされるだけではなく、体のすべての材料となって、体の中に溶け込んでいき、それと同時に体を構成していた分子は、外へ出ていくということです。

細胞としてはずっと同じ位置にあっても、そこにずっとあるわけではなく、絶え間なく合成され分解されていく、流れの中にあるのです。

 

 

生命は、絶え間なく分解と合成を繰り返す、ダイナミズムの中にある

生命は川のような流れの中にあり、この流れを止めないために、私たちは食べ続けなければなりません。そして、食べ、生きるということは、体を地球の分子の大循環にさらして、環境に参加することにほかなりません。地球全体にある元素の総量は、実は、それほど変わりません。あるときは海に、あるときは風に、あるときは生物になって、元素はぐるぐると回っています。

私たちが食べるものは、穀物も、野菜も、肉も、魚も、もともとは他の生物の体の一部です。人間は、他の生物を殺め、その生物たちが蓄えたタンパク質や糖質を収奪して、口にせざるをえません。しかし、私たちを形づくっている分子は、自分のものであって、自分のものではない。

 

食物とはすべて他の生物の身体の一部であり、食物を通して私たちは環境と直接つながり、交換しあっています。だから自分の健康を考えるということは、環境のことを考えるということであり、環境のことを考えるということは、自分の生命を考えるということでもあるわけです。

 

 

 


生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

 


生命と食 (岩波ブックレット)

 

 

 

 

 

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