夜空に数多くの星が輝く季節となった。天体観察には専門的な知識や技術が求められそうだが、各地で星空を見上げる天文ファンに「宙(そら)ガール」と呼ばれる女性が増えている。天文イベントの参加者は女性が目立ち、扱いやすい小型双眼鏡の売れ行きも好調。夜空の楽しみ方が多彩になってきた。
「アクセサリーも目的の一つです」。女性たちが星柄の描かれたイヤリングやネックレスに熱心に見入る。
京都・嵐山。小高い場所にある法輪寺の境内で10月に開かれた「宙フェス」に、2日間で約4千人が詰め掛けた。今年で3年目となる会場には、若い女性のグループやカップルが目立つ。
境内では星や宇宙に関する天文学者らのトークイベントがあり、天体望遠鏡で夜空に見入る人も。星にちなんだデザインのアクセサリーや衣装も販売され、それらを身に着けたファッションコンテストも開かれた。
埼玉県から訪れた会社員、平栗綾乃さん(22)は「自然が近い京都のお寺で宇宙を感じられるところがいい」と話す。実行委員の池側恵子さん(42)は「アクセサリーなどが目当ての女の子にも、最後は月のクレーターを見て、星座を覚えて帰ってもらえれば」と狙いを説明する。
天体望遠鏡メーカーのビクセン(埼玉県所沢市)によると、手軽に星を見ることができ、女性に好まれる小型の双眼鏡は販売が好調。一方で本格的な望遠鏡の売り上げは「元気がない」という。ただ、同社が数カ月に1度開催する工場見学会は常に定員の数倍の申し込みがあり、天文好きの裾野が広がったとみている。
星空の楽しみ方を伝えようと、山形大が約10年前に始めた「星空案内人」制度。星座探しの実技から星座物語などの文化への理解まで、幅広い知識を積んで資格を得ると「星のソムリエ」を名乗り科学館などで活動できる。全国に600人ほどいるソムリエも女性の割合が高いという。
「天文が趣味として気軽になってきた」とみるのは国立天文台の縣(あがた)秀彦准教授。「メディアなどの扱いが増え、親しみやすくなった。ネット情報に触れ、デジタルカメラで天体写真を撮る人も多くなった」と分析する。
縣准教授は、社会現象にもなった2010年の小惑星探査機「はやぶさ」の帰還が大きなきっかけと考える。「はやぶさの応援を通じ(夜空の観察を)イベントとして楽しむ人が女性にも増えたのだろう」と話した。〔共同〕