事故多発の社会問題化に対応
東京海上日動火災保険が、70歳以上の自動車保険契約者の保険料を値上げすることが分かった。引き上げ幅は数%程度で、来年4月以降の新契約や更新から適用する方向だ。高齢ドライバーによる事故多発が社会問題化していることに対応するもので、高齢者の保険料値上げは1年半ぶりとなる。
現在の自動車保険は、年代ごとに保険料を変えるのが主流。東京海上日動は70歳以上を値上げする一方で、事故の発生率の低い30~50代のうち、交通違反や事故が一定期間ないと交付される「ゴールド免許」保有者の保険料は1~3%程度値下げする。20代と60代は変更しない。実際の保険料は、過去の事故歴なども考慮して決められる。
警察庁の統計によると、自動車乗車中の事故で死亡した人のうち65歳以上の比率は、2015年に48.3%と半数近くに達し、05年の26.0%から大幅に上昇した。業界団体の損害保険料率算出機構によると、70歳以上の事故リスクは、最も低い50歳代の1.27倍に上る。
こうした実情を踏まえ、同機構は自動車保険料の目安となる指標について、14年7月に「70歳以上」の事故リスクを引き上げ、各社は翌年10月の保険料改定で70歳以上の保険料を値上げしている。
特定の年齢層だけ保険料を上げることは、「優良ドライバーに不公平感が出る」「客離れが進む」との懸念もあり、上昇幅は小幅だったが、高齢ドライバーの事故リスクはその後も高止まりしている模様だ。
損保各社は、事故抑止効果を狙って事故後の保険料を大幅に引き上げる見直しを行っているほか、高齢ドライバーが自分の運転技術をチェックできるスマートフォンのアプリを開発するなどのサービスの提供も進めている。【中島和哉】