「アイデンティティウォー」でも言及したが、ちょっと具体的に、何度も引用してすいませんね、それでも今大事だと思うから、「オタク・イズ・デッド」の中から、ひとつ引用してみよう。
10年前、NHKの討論番組「真剣10代しゃべり場」にて、「オタクで美少女アニメが好きな俺をみんな差別している!差別をするな!認めてくれ!」と訴える声優志望の専門学校生がいて、「え、じゃあどんなイジメに遭ったりしたの?」と訊いてみると、「いや、オタクであるとカミングアウトしたことはない」と言い出して、「いやいやいや、カミングアウトもしてないのにどうやってあなたを差別できるの??」と周囲の10代パネラーからフルボッコにされた、という逸話がある。
まぁ、典型的な被害妄想ですわな。
他力本願と言ってもいい。
僕らの世代では考えられない。
そこから岡田氏は、オタク文化を「アイデンティティ」の問題とすり替えている世代を発見し、それまでのオタクとの世代間の決定的な差異を見出した。
オタク第一世代にとってオタク文化とは「貴族の嗜み」、第二世代にとっては「教養」、すべて、能動的に吸収するものだ。自分の責任で受容し、自分の能力で理解し、自分たちの(リ)アクションで相互作用させるべきものだった。
しかしそれが第三世代以降、変わった。
オタク文化は自分にとっての承認欲求の場、「アイデンティティ」の確認の場となった。
何が決定的に違うかというと、それがすこぶる「受動的」なのだ。
俺が認められる世界があって当然なんだ!
俺はオタクとして、消費者として無条件に、絶対的に護られている!
俺がアクションを起こすまでもなく、世界は既に俺の生きやすいようにカスタマイズされている!そうあるべきなんだ!!
「俺がオタクと隠さなくても済む世の中を、お前ら作れー!」
10年前の「しゃべり場」の彼はこう叫んだが、細部は違えど、こういう理不尽な要求を、未だに世間に突きつけているのが、オタク(という「病」)だ。いや、これはもうオタクというローカルな問題ではない。
10年前の彼は今もうすぐ30歳くらいだろうか、僕はその辺の世代から40歳前後までの世代を、ずっと「ゴミクズの世代」と考えている。
団塊ジュニアからその少し後まで、言わば日本がバブルを、「GDP世界第二位」を味わってた世代だ。
幼い時から日本の富を浴びるように吸収して、ひたすら受動的で、何も生産してこなかった世代だ。
自分が何もしなくても、誰かが何とかしてくれる、世界が何とかしてくれる、そういう感覚が骨の髄まで染み込んでしまった世代だ。
今や、アニメ業界はパチンコマネーやソシャゲマネーだけではもう無理で、いよいよ押し寄せる外資なしでは成立しないのに、「それでも何とかしてくれる」と、まだ受動的で、「甘え」を見せている。そして粗品乱造を繰り返す。納品したら後は知らんとばかりにガチャポコな作品になろうが、あるいは最悪落とそうが、円盤が売れなかろうが、誰かが何とかしてくれる。知らん。中国資本さんありがとう。
あれがダメ、これがダメと業界を脅迫し続けた視聴者はその現状に飽き飽きしつつ、「俺達が面白いと思えるアニメがどうしてできないんだ!?」と、更に強圧的になっていく。消費をせずに、文句だけが過激になる。
それにね、もう応えられないんですよ、業界は。これだけは解っておいてほしい。
一時期はそれに応えようと右往左往したが、もう無理。みんな諦めている。だから何言っても、もう無駄です。
残念ですが、いろんな意味でキャパオーバーです。
これはTV業界、映画業界、エンタメ業界、引いては日本の産業全体に言えることだろう。
「誰か何とかしてくれる」。この意識は、根深い。
みんな他人のせい、人のせい、責任転嫁で、無責任。
「若者」で言った通り、僕らは「失われた10年」どころではない、この「最悪な20年」を過ごすことになるだろう。僕は断言する。
「団塊ジュニア」たる40代が管理職にある今は、もう最悪だ。
考えうる最悪な事態が立て続けに起こると思う。
そう、もちろん僕も40代だ。
だからこれは内部告発のようなものだ。
皆さん申し訳ない、40代は、本当に役に立たない、クズです。
だから、僕は贖罪の意味も込め、訴えかけます。
こういう人間は希少で、仲間はずれで、オタクに物申すなんて、受動的にしか受け入れられないオタク達にはひどく嫌われる。
それでも僕は、この「最悪な20年」を、黙って看過するほど、醜く愚かではない。
それだけです。
何とかアニメを、オタク業界を、そして日本を、良くしましょうよ。
それは作り手とか受け手とか、そんな垣根を飛び越えた、「受動的」な空気の打開だと思います。
もう一度引用しますが、
「俺がオタクと隠さなくても済む世の中を、お前ら作れー!」
じゃあ僕は、その要求に応えられるよう、頑張りますよ。
どこまでできるか解りませんが、身を賭してやりますよ。
その代わり、皆さんも的確なリアクションをくださいよ。
僕は、それをし続けているだけです。
もう5年を越えました。
もう周りは敵だらけですが、それでもまだやります。