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【社説】

イチエフ 廃炉の現場から<2> 正体不明、所在不明

 骨組みがあらわなままの建屋を高台から見下ろしながら、東電広報室の説明は続く。

 海風がその声をかき消すように強く吹く。

 「イチエフでは四つの大きな課題に、並行して取り組まなければなりません」

 一つ目は、使用済み燃料の搬出で、二〇二四年をめどに終えたい意向。二つ目は、デブリの取り出し。デブリとは、溶け落ちた核燃料の塊で、放射線の発生源になっている。三つ目は、汚染水。そして作業環境の改善だ。

 「中でも最も困難なのが、やはりデブリの回収です」

 回収例はないでもない。一九七九年の米スリーマイル島原発2号機のメルトダウン(炉心溶融)事故。この時は、デブリが原子炉内にとどまった。しかし、イチエフでは、燃料の状態なども“四機四様”。その意味で世界史に類のない挑戦だと言えるだろう。

 正体不明のデブリとの闘いは、とにかく、その所在を突き止めなければ始まらない。

 ミューオンという透過力の強い素粒子を使った探査で、原子炉の中の様子が少しずつわかってきた。原子炉の壁や、地球さえ突き抜けるミューオンだが、そこに重たいウランがあればはじかれる。

 これまでの調査の結果、1号機の原子炉の中は空っぽ、格納容器の下へすべて溶け落ちてしまっているらしい。メルトスルーだ。

 最新の調査では、2号機の中には、随分残っているという。

 年明け以降、ペデスタルという格納容器の台座に穴を開け、カメラを積んだサソリ型のロボットを送り込み、燃料デブリの直接撮影を試みる。

 今までに投入された約四十台のロボット中七台が未帰還だ。成功すれば、その映像データを解析し、遠隔操作や取り出し用ロボットの設計などに役立てる。

 人が直接触れられない、近寄ることもできない世界の作業。ロボットに頼るしかないのだが、すべては姿をとらえてからだ。 

 

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