【カイロ秋山信一】内戦が続くシリアで、政府軍は12日、北部の激戦地アレッポのほぼ全域を制圧した。戦況を調べている在英民間組織「シリア人権観測所」は「アレッポでの戦闘は終結した」と伝えた。アサド政権にとって5年以上に及ぶ内戦で最大の戦果。政権の軍事的優位が決定的になる一方、反体制派や後ろ盾の米欧諸国が戦略の練り直しを迫られるのは必至だ。
AP通信などによると、政府軍は反体制派支配地域のシェイフサイード地区を新たに制圧。反体制派は一部地区で戦闘を続けているが、シリア軍当局者は「反体制派支配地域の98%を奪還した」と述べた。反体制派が残っている地区に数千人の住民が押し寄せ、パニック状態になっているとの情報もある。
政権はアレッポでの勝利で人口や産業が集中する国土西部の支配権確立に大きく前進した。一方で反体制派は、今回の敗北で主要都市での拠点をほぼ失い、武力による「政権打倒」は遠のいた。米国や英仏、サウジアラビアなど反体制派支援国は、政権存続の容認も含め戦略を再検討するとみられる。
アレッポでは内戦初期の2012年から反体制派と政権側が市街地を二分してきたが、政権側は空爆と包囲戦術で反体制派を疲弊させる戦術が奏功した。
ただ、反体制派も首都ダマスカス郊外や北西部イドリブ県では勢力を維持している。過激派組織「イスラム国」(IS)や少数民族クルド人武装勢力も絡んだ内戦に終結の見通しは立っていない。