この記事はMCC Advent Calendar 2016 の10日目の記事(大遅刻)です.
前日はid:hu__huによるベトナムで拉致されそうになったときの話でした.
僕といえばつまらないクソギャグを投下することで有名なわけですが(?),今回はクソギャグを生み出すときの思考プロセスという大変どうでも良いことについてお話しします.
クソギャグとは
クソギャグとはクソとギャグを合わせたもので,すなわちクソなギャグです.ギャグとは,Google先生曰く,
ギャグ
映画・演劇などで、観客を笑わせる、その場当たりのせりふ・しぐさ。
▷ gag
らしいですが,ここでは単純にダジャレのことを指します.
ダジャレとは言葉遊びの一種で,一つの文に似たような音を複数回登場させることでそこに面白さなどを見出すわけですが,なぜこれが笑いを引き起こすかということはよくわかりません.おそらく,同じ音が繰り返されるものの言葉自体は異なるものを指しているため頭が混乱する,みたいなものだと思っています.ダジャレを発した後に流れるなんとも形容しがたい空気が面白いとも言えます.
ダジャレを作る意味
意味はありません.ただ,出来の良い物が完成すると発信したくなるのが人間の性です.絵と同じです.
ダジャレができるまで
では実際にどのようにしてクソギャグ,クソダジャレができていくのか見ていきましょう.ここではひとつの文の中に2回似たような音をもつ文字列が登場するタイプのものを例にします.
僕の中では,主に以下のようなプロセスを経て生成されます.
- 元となるアイデアを見つける,思いつく
- 2つの文字列を自然に含むような単語,文を考える
- 全体の調整を行う
実際には2番目や3番目の工程が行われずに,直接ダジャレが誕生することもあります.
例1
元となるアイデアを探す
解かれることを前提としている問題のように,ダジャレにも元となるアイデアがあって,それを加工していくことがあります.
例えば,以下のダジャレを見てみましょう.
マイルを溜めに中国へ参る
— icchy (@icchyr) 2016年4月14日
このダジャレでは,飛行機を利用することで得られるマイレージポイントを示すマイル
と,行くという意味の動詞の謙譲語参る
の音が同じであるという事実が根底にあります.
2つの文字列を自然に含むような単語,文を考える
ではマイル
,参る
を含むような単語,文を考えましょう.マイル
は飛行機で移動する描写があれば自然に登場させることができます.参る
は,どこかに行く描写があればこれも自然に登場させることができます.幸いにも,マイル
も参る
も移動に関連した語であるため,同時に,かつ自然に登場させるのは難しく無さそうです.
全体の調整を行う
ここまでくれば後は簡単です.飛行機で移動する機会があれば自然な流れの中にクソギャグを埋め込むことができます.この場合中国に飛行機で行くというイベントが発生しているため,その目的の一部にマイル
を貯めることを取り込んであげることでダジャレの完成です.
ちなみに飛行機で移動するなんてイベントは頻繁に発生しないため,マイル目的というのはウソです.自然に紛れ込ませることができれば良いのです.
また,実際にダジャレを発信するときはギャグをベースに考えているのではありません.身近な出来事の中にクソギャグの可能性を見つけた時,それらしい理由をつけて発信します.上の例の場合,マイルと参るをかける,というアイデアは飛行機で移動するイベントが発生した時に湧いてくるのであり,ギャグが先にあるわけではないのです.
例2
次の例を見てみましょう.
弱そうな和装
— icchy (@icchyr) 2016年10月11日
元となるアイデアを探す
ここでは和装
という名詞と,弱そう
という形容詞+助動詞の口語が同じわそう
という音を含んでいるというアイデアがあります.
2つの文字列を自然に含むような単語,文を考える
和装
, 弱そう
は後者が形容詞をベースとした語であるため,単純に並べてあげるだけで自然な文になります.考える必要はありません.
全体の調整を行う
今回の場合は調整の必要もありません.2番目の工程と同様にスキップされます.
ではこのダジャレはどのような経緯で生まれたかというと,
CODE BLUEに和装して行きたいんですけどどなたかおすすめないですか
— 生活感 (@hhc0null) 2016年10月11日
このツイートをみて思いつきました.
内輪の話になってしまいますが,ここで登場するhhc0nullという人物はよくイジられる対象であるため,弱そう
という少し攻撃的なフレーズを向ける対象としてはもってこいなわけです.和装
という,普段の会話では登場ないような単語が出てきたため,それに言及したことを示すのは難しくありません.すなわち,ツイートにリプライしなくても意図が伝わるため,このくだらないギャグをより多くの人に届ける目的で僕はこのツイートをしたわけです.リプライにすると両方をフォローしている人しか見えなくなってしまいますからね.
より洗練されたダジャレを求めて
上の例では,いずれもベースとなるアイデアに含まれる語を適当に並べるだけで完成しているため,あまり面白味がありません.ここでは,より高度なダジャレについて紹介します.
ムダの無い構成を持つダジャレ
以下の例を見てみましょう.
ナイスな椅子
— icchy (@icchyr) 2015年3月18日
このツイートのベースとなる部分はナイス
と椅子
ですが,助詞であるな
を間に挟むことでムダのない(ダジャレを構成する語以外の文字列が存在しない)ものに仕上がっています.通常このようなギャグは聞いただけは即座に理解されにくいです.というのも,複数の文節にまたがって同じ音が登場している場合,ダジャレ部分を予測しづらいためです.例えば,先ほどの例1において,
マイルを溜めに中国へ参る
このダジャレの場合,勘のいい人であれば中国へ
の部分で「次に参る
が来るな」と予想ができてしまいます.これはダジャレ部分が各文節内で完結しているためで,音を被らせている部分が把握しやすいのです.
一方,ナイスな椅子
ではそもそもな
と椅子
にまたがってないす
という音が存在しているため,この部分をひとまとまりとして認識しない限りダジャレに気づくことはできません.
これは僕の経験則ですが,複数文節にまたがって音を構成するタイプのダジャレでは,助詞が使われることが多いです. 類似した例として,以下のようなものがあります.
学業が苦行
— icchy (@icchyr) 2016年8月11日
さて,ここでナイスな椅子
をパワーアップさせることを考えてみましょう.
ないす
という音を含み,かつ近い文字数を持つものを探すと,NAIST(奈良先端科学技術大学院大学)の日本語読みないすと
というものがあります.幸いにして,はみ出た部分のと
は助詞として用いることができるため,ナイスとNAIST
のように簡単にダジャレを構成することができます.ここまでくれば簡単で,ベースとなったないす
にはナイスな椅子
というダジャレが既に存在するので,
ナイスな椅子とNAIST
— icchy (@icchyr) 2016年9月9日
という2重のダジャレが誕生します.
しかしながら,この文は全くもって意味不明です.ナイスな椅子
だけでも不自然なのに,そこに全く関係ないNAISTという単語が登場するため,何を言いたいのかさっぱりわかりません.ですがそれで良いのです.言葉遊びとはそういうものです.意味の通る流れにできれば尚良しですが,音をしっかり被らせることができてさえいればダジャレとして成立します.
自然な文の中に投下するダジャレ
最初の方に挙げたまいる
や,わそう
は明らかにダジャレであることがわかってしまいます.前者では参る
,後者では和装
という普段使わない表現や単語を用いているため,どことなく生じる違和感を払拭することができないためです.では自然なダジャレの例を見てみましょう.
https://twitter.com/icchyr/status/520037527638376448
お気づきでしょうか?これは一見すると何らかのフォーマット,プロトコルを読んだ感想にしか見えませんが,仕様
としよう
がかかっているのです.あまりにも自然すぎて一切のリアクションが無いことからもこの文章が自然であることを示しているとも言えます.実は皆気づいていて,あえてスルーしているなんて可能性はありますが.
この文がダジャレだと気づかれにくくするためには,ダジャレの最大要素である音の被らせ具合を大きくし過ぎないことです.一般的に被らせている文字数が少ないとダジャレとしての評価は低くなりがちですが,自然体であることも重要な要素の一つです.また,文の長さをそれなりに確保することで音が被っている部分の割合を小さくし,認識されにくくすることができます.
被っている文字数が2文字の場合,さらに気づかれにくくすることができます.
https://twitter.com/icchyr/status/777520528017887236
やはり自然すぎると普通の文にしか見えないため,気づいてもらえないことがほとんどです.
おわりに
いかがでしたでしょうか? 普段僕がクソギャグ,特にダジャレを考えるときに頭の中で行っていることを無理矢理書き出して整理してみましたが,人間の脳はこういうプロセスを意識することなくいろんなことを考えることができるんだなあと,少し感動しました.
ちなみにこの記事を書くにあたって,過去ツイートからダジャレっぽいものを列挙するためにdajarepというプログラムを使わさせていただきましたが,結構ノイズが多くて自然言語処理の難しさを実感しました.また,検知できたものだけを目で見て絞り込んだだけでも314個のギャグが出てきて,改めて自分のダジャレを発する頻度の高さを認識し同時に呆れました.他にやること無いのか.
最後まで読んでくださった方,長文&駄文にお付き合い頂きありがとうございました.きっと「時間を無駄にした」と後悔されてることでしょう.
明日は@ougai_quantumの記事の予定だったらしいので,そのうち上がることを期待しましょう.MCC Advent Calendar 2016は既に25日分すべての枠が埋まっており素晴らしいですね.どうか最後までお楽しみいただければと思います.