東京都の小池百合子知事がくり返し口にし、自らの都政をアピールする重要施策がある。

 「情報公開」だ。

 就任直後から、従来の都政を「政策立案の過程や、意思決定の理由が十分に公開されていない」と批判し、12月都議会の所信表明では「信頼回復への一丁目一番地」と位置づけた。

 実際、豊洲新市場の土地購入をめぐる交渉記録は、これまでほぼ全面黒塗りのうえで開示されていたが、最近になって改まり、内容が明らかになった。

 都知事は都民への説明責任を負う。都民の的確な理解と批判があってはじめて、民主的な行政運営は可能になる。

 小池氏の考えを評価するからこそ、疑問と注文がある。

 ひとつは東京五輪のボート・カヌー会場の見直し問題だ。

 国際オリンピック委員会などとの協議が決まった際、小池氏は「見える形での議論を」と話していた。だが非公開で進み、結局、氏は宮城・長沼での開催案を自ら取りさげた。

 どんなやり取りがあり、各会場の利点と欠点をどう評価したのか。長沼を事前合宿地とする案はいかなる経過から生まれたのか。自分がした会場見直しの提案をどう総括するのか。

 こうした点について、小池氏から説明らしい説明はない。自身が批判する「都政のブラックボックス化」そのものだ。

 都合のいいことを、都合のいい時にだけ説明しても、説明責任を果たしたとはいえない。都民に対しても、開催を期待した宮城県民に対しても、氏の態度は不誠実というほかない。

 二つめは公文書管理のあり方だ。豊洲問題では、盛り土をしないことが決まった会議の記録が都に残っていない。作成しなかったのか廃棄したのかすら分からないというずさんさだ。

 小池氏は、都庁内部の規則で定めている文書管理手続きを、都議会の議決を要する条例に格上げし、より強い規範にすることを都議会で表明した。

 形式だけではない。たとえばいまの都の規則では課長の権限で文書を廃棄できる。他県の条例をみると、判断する者を知事にしたり、廃棄する前に第三者の意見を聞いたりしている。こうした例も参考に、文書管理の体系を確立させるべきだ。

 開示制度にも問題がある。

 都に情報公開を請求すると、まず文書の閲覧だけで1枚10円が徴収され、さらに1枚20円と割高なコピー代がかかる。

 これで情報公開の旗を掲げるのは恥ずかしい。こうした条例も速やかに改める必要がある。