例えばタレントの肖像権の取り扱いにも慎重で「Webを介して情報を広げること」よりも「テレビや公演を通して良さを伝えること」に重きを置いていた。
Web上では、ジャニーズ事務所に所属するタレントの写真/動画使用に厳しい制限が設けられている。主にタレントの公式サイトや出演番組・作品の公式サイトといった、一部のWebサイトのみに使用が許可されているのはよく知られている。また、ジャニーズ事務所のタレントが表紙を飾る雑誌がWeb上ではシルエットで公開されるのも見慣れた光景だ。
肖像権は一例に過ぎず、プロモーションやファンコミュニティー運用全般を通して「ジャニーズはWebに消極的だ」と言える。
しかし、2016年後半に差しかかって、ジャニーズ事務所に著しい変化が起こっている。ジャニーズWESTの公式PR用Twitterアカウントを開設し、Web上でのチケット当落確認がスタートした。また、動画公開に力を入れていく兆しも見えはじめている。
第1回コラムでは「ジャニーズ事務所を取り巻く転売問題」について言及したが、今回は「ジャニーズ事務所におけるWeb利用の変化」を中心に掘り下げていきたい。
2016年後半、ジャニーズ事務所のWeb施策の変化
ジャニーズWESTの公式PR用Twitterアカウント
ジャニーズWESTの公式PR用Twitterアカウント運用がはじまり、10月19日に1回目のツイートが投稿された。その後も番組出演情報やアルバム発売に際した情報を投稿している。過去には、KinKi KidsのアルバムPR用Twitterアカウントが開設されたこともあったが、ジャニーズ事務所所属グループについて公式で情報を流すアカウント運用はこれが初の試みとなった。初めまして!ジャニーズWESTスタッフ公式twitterです。みなさんよろしくお願いします〜♪
— なうぇすと PR担当 (@JohnnysWEST_PR) 2016年10月19日
SNSに消極的であったジャニーズ事務所の施策にファンは大変驚いた事象であったが、今後他グループでも同様の施策が行われていくのか、期待が膨らんでいる。
ジャニーズのライブにおけるWeb上でのチケット当落確認
11月にチケットの当落発表があった、関ジャニ∞「関ジャニ’sエイターテインメント」と、Kis-My-Ft2、Sexy Zone、A.B.C-Zらの一部メンバーが出演する「ジャニーズ・オールスターズ・アイランド」。上記公演以降、ファンクラブHPのマイページから当落確認をできる公演が増えた。事情を知らなければ当たり前のことだと思うかもしれない。
チケット代金を振り込む前にWebから申し込みをする抽選については、メールにて当落の詳細が伝えられることはあった。しかし、振込用紙を使用してコンサート事務局にチケット代金を振り込む形式での抽選は、電話での自動オペレーションによる当落確認が主だった。
タイミングによっては電話回線が混み合うため、これまで数日間に渡って当落を確認できないことも普通だったが、この変更によって好きなタイミングで確認ができるように。
かねてより「他アーティストのようなシステムで簡単に当落を確認したい」という声はファンからも散見されていた。
しかし一方で、長年このシステムに慣れていたため、なかなか繋がらない当落確認も「公演」の一貫として楽しんでいたファンもいたため「Web上で簡単に確認できると味気ない」という声が見受けられるのも事実である。
ただ、特に遠方で開催される公演を申し込んだ場合は、当落確認が完了していないとホテルや交通機関の手配に一歩出遅れることもあったため、基本的にはこの改善はファンからは歓迎されている。
ジャニーズグループ公式サイトで45秒程度の動画が観られるように
さらには、KinKi Kids、TOKIO、関ジャニ∞などの各公式サイトでMV試聴ができるように。
これまでもファンクラブ会員向けのJohnny’s net、有料会員登録を行うと利用できるJohnny’s web、滝CHANnelなどで動画を公開している背景がある。しかし、あくまでも「動画」の位置付けは有料会員やファンクラブ会員に限ったクローズドなものであるという認識が強かった。
しかし、KinKi Kidsが11月2日に発売したシングル『道は手ずから夢の花』や、関ジャニ∞が12月7日に発売したシングル『NOROSHI』などでは、45秒間のMV試聴が可能になった。
さらに、TOKIOが11月30日に発売したシングル『愛!wanna be with you…』については30秒のTVスポット、カップリング楽曲『ローライダー』の45秒試聴が可能に。
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— スターライトステージ (@imascg_stage) 2015年12月25日
また、2015年12月に中居正広さんが出演する『アイドルマスターシンデレラガールズ』CMがバンダイナムコエンターテイメントの公式YouTubeにアップされたことも、今回の施策に繋がる兆しといえそうだ(2016年12月現在は公開されていない)。
誰でも観られる状態でWebに動画を公開するという施策に踏み切ったことは、これまでの状況を考えるとかなり異例だと言える。
Webを中心としたジャニーズ変化の兆し
ランキング首位陥落とジャニーズ事務所の失速?
ジャニーズ事務所に所属するタレントのなかでも高い人気/売り上げを誇る嵐だが「オリコン2016年上半期ランキング※1」によると、アーティスト別トータルセールス、アルバム、DVD部門などにおいてトップを席巻したのは三代目 J Soul Brothersとなった。
※1 参照:http://www.oricon.co.jp/special/49069/
また、嵐は2015年発売のアルバム『Japonism』に比べ、2016年発売のアルバム『Are You Happy?(以下:Happy)』では売り上げが低減している。
『Japonism』は3形態での発売『Happy』は2形態の発売という背景もあることは事実だが『Japonism』は初動1週間で82万枚の売り上げとなり※2『Happy』は初動1週間で63.7万枚※3となっている。
※2 参照:http://www.oricon.co.jp/news/2061335/full/
※3 参照:http://www.oricon.co.jp/news/2080849/full/
トータルセールス部門における嵐の首位陥落、アルバム販売枚数の低減やSMAP解散報道から、ジャニーズ事務所に失速の影も感じてしまう。一方で、多様化してきた男性グループを擁する他事務所の追い上げを感じる部分は否めない。
テレビを主戦場としているジャニーズ事務所が打ち出した打開策
「YouTubeをはじめとした動画ストリーミングサイトで無料視聴ができる」「音楽ストリーミングサービスで気軽に試聴できる」「iTunesをはじめとしたダウンロードサービスにおいて低価格で購入できる」といった状態にある楽曲が流行しやすい時代。
それに対して、テレビを主戦場に「動画サイトでの試聴は行わない」「iTunesでの配信も行わない」という方針をとっていたジャニーズ事務所。
これらのWeb施策は、テレビ離れが進んでWeb上での試聴/購入が増えた時勢に合わせたテコ入れの一環といえるのではないか。
また、Sexy ZoneやA.B.C-Z、ジャニーズWEST、ジャニーズJr.などが出演する歌番組『ザ少年倶楽部』では、事前に収録した内容を放送することが主だった。しかし、今年に入ってからは、生放送を行い視聴者からの投票で番組中で歌う楽曲を決定するという取り組みも見られている。
テレビや、特にWebといったメディアにおいて、フットワークが軽くなる兆しが見えはじめているジャニーズ事務所。今後の展開に期待したい。
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