辺野古埋め立て訴訟で沖縄県が敗訴へ 国勝訴の判断維持 最高裁

辺野古埋め立て訴訟で沖縄県が敗訴へ 国勝訴の判断維持 最高裁
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沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設先とされる名護市辺野古沖の埋め立ての承認を沖縄県の翁長知事が取り消したことをめぐり、国が起こした裁判は、沖縄県の敗訴が確定する見通しとなりました。国の訴えを認めた高等裁判所の判決に対して沖縄県が上告していましたが、最高裁判所は、判断を変更する際に必要な弁論を開かずに判決を言い渡すことを決め、国側勝訴の判断が維持される見通しとなりました。
名護市辺野古沖の埋め立て承認を翁長知事が取り消したことをめぐっては、ことし3月に国と沖縄県が裁判でいったん和解しましたが、再び法廷で争う異例の経緯をたどっています。

ことし9月、福岡高等裁判所那覇支部は、「普天間基地の騒音被害を取り除くには辺野古沖に移設するしかなく、埋め立てを承認した前の知事の判断に不合理な点はない」として国の訴えを認め、承認の取り消しは違法だとする判決を言い渡しました。

これに対して沖縄県が上告し、最高裁判所第2小法廷は、今月20日に判決を言い渡すことを決めました。判断を変更する際に必要な弁論が開かれないことから、国側勝訴の判断が維持される見通しとなりました。

国が埋め立て工事を再開した場合、翁長知事はあらゆる手段で移設を阻止するとしていて、双方の今後の対応が注目されます。

市民は

沖縄県の敗訴が確定する見通しとなったことについて那覇市の40代の男性は「県が勝つと思っていたので、想定外です」と話していました。
那覇市の別の男性は「とても残念です。小さい島に基地がどれだけあるのか政府はわかっていないと思う。知事には、今後も移設反対の民意を反映させるよう頑張ってもらいたい」と話していました。
また、70代の女性は「那覇市内でもヘリコプターの音でテレビの音が聞こえないこともある。沖縄の人の気持ちを分かってもらえないのかと思うと、心が痛いです」と話していました。

防衛省 「沖縄県と協議したい」

これについて防衛省は、「裁判所から詳しい連絡はまだ入っていないが、判決の確定を受けて、沖縄県とは引き続き誠実に協議していきたい」としています。

官房長官「最終判断待ち誠実に対応」

菅官房長官は午後の記者会見で、「最高裁判所からの通知をまだ受けておらず、報道されている内容は承知をしていない」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は、国の勝訴が確定した場合の対応について、「仮定の話に答えることは控えたいが、最高裁判所による最終的な司法判決が下された場合、国と沖縄県の双方が確定判決に従い、普天間飛行場の移設事業に、互いに協力をして誠実に対応していくことが和解案の中でうたわれている。わが国は法治国家であるので最高裁判所による最終的な判断を待っているところだ」と述べました。

沖縄県の今後の対応は

沖縄県の翁長知事はこれまで、県の敗訴が確定した場合、判決に従うとする一方で、知事が持つ別のあらゆる権限を駆使して移設を阻止する考えを示しています。
翁長知事は、敗訴が確定すれば承認の取り消しを撤回する文書を決裁し、沖縄防衛局に送ることにしていて、これによって埋め立てが承認された状態に戻り、国が再び辺野古沖で移設工事を行うことが可能になります。
一方、翁長知事は、移設阻止に有効な知事の権限として、来年3月に期限を迎える辺野古沖の海底の岩礁を破壊するための許可や、サンゴを移植するための許可などがあるとして、国が手続きに入れば、認めない可能性もあります。
ただ、こうした権限を踏まえ、国側もあらゆる対抗手段をとるものと見られ、実際に工事を止めることができるかどうかは不透明です。

埋め立て承認をめぐる国と沖縄県 異例の対立

名護市辺野古沖の埋め立て承認をめぐる国と沖縄県の対立は、双方が裁判を起こして争う異例の事態となりました。

アメリカ軍普天間基地の辺野古沖への移設計画に反対する翁長知事は、去年10月、仲井真前知事が3年前に行った埋め立て承認について、「法律上問題があった」として取り消しました。
これに対して国は、「著しく公益を害する」として、去年11月、知事の代わりに取り消しを撤回する「代執行」を求める訴えを福岡高等裁判所那覇支部に起こしました。
これに対して県も工事を早急に止めるには裁判を起こす必要があるとして、国を訴えました。
主張が対立するなか、裁判所は和解を勧告し、ことし3月に双方が受け入れて埋め立て工事は中止されました。和解条項では国と県が問題の解決に向けた協議を行うことや、その間の法的な手続きが示され、国はこの条項に基づいて承認の取り消しを撤回するよう求める「是正の指示」を出しました。

県は、この指示には応じられないとして、国と地方の争いを調停する「国地方係争処理委員会」に審査を申し出ました。
ことし6月、委員会は、国の指示が違法かどうか判断しないとする結論をまとめ、国と県が協議して解決するよう求めました。
翁長知事は、国の指示には応じないまま、協議を通じて問題の解決を目指したいという考えを伝えました。

これに対して国は、県が指示に応じないのは違法だとして今回の裁判を起こし、再び法廷で争うことになりました。
ことし9月、福岡高等裁判所那覇支部は、国の主張を全面的に認め、翁長知事が承認を取り消したのは違法だとする判決を言い渡し、県が上告しました。

翁長知事は、先月、報道各社の取材に対して、最高裁判所で敗訴が確定したとしても、知事が持つあらゆる権限を使って移設計画を阻止する考えを示していて、今後、どのような対応をとるかが焦点となります。

20年前の裁判との違い

沖縄の基地問題をめぐって20年前に国と沖縄県が争った裁判では、最高裁判所は、今回とは異なり、裁判官全員が参加する大法廷で審理しました。

平成7年12月、当時の大田知事は、アメリカ軍に土地を提供し続けることに反対していた地主の代わりに土地の調書などに署名するよう国に求められましたが、拒否したため、裁判を起こされました。
当時、沖縄では、アメリカ兵による少女暴行事件をきっかけに、基地の縮小を求める声が高まっていました。
翌年の3月、福岡高等裁判所那覇支部は、国側の主張を認め、手続きは適正だとして代わりに署名するよう命じる判決を言い渡し、県側が上告しました。
最高裁判所は、通常のように3つある小法廷の1つで審理を進めるのではなく、憲法に関わる問題など重大な事案を扱う大法廷を開き、15人の裁判官全員で審理しました。
大法廷では意見を述べる場が設けられ、大田知事は、アメリカ軍への土地の提供を定めた法律は憲法違反だと主張し、「基地の重圧に苦しむ沖縄の現状を理解してほしい」と訴えました。

その後、上告が退けられ、県側の敗訴が確定しましたが、裁判官のうち6人は、基地の集中による沖縄県民の負担の大きさを認め、軽減するには政府の対応が必要だという意見を述べました。

20年後、再び国と県が争うことになった今回の裁判では、憲法に関わる問題は主な争点になりませんでしたが、最高裁が基地問題の性質を踏まえて大法廷を開くかどうかが焦点の1つとなっていました。

しかし、大法廷での審理は見送られ、意見を述べる場は設けられず、小法廷で判決が言い渡されることになりました。