News Up 天から届いた手紙 5000枚を読み解く

News Up 天から届いた手紙 5000枚を読み解く
「関東甲信の皆様にお願いです。雪が降ったら雪結晶の写真を撮って送って下さい」
気象庁の研究者が先月23日に投稿したツイートは瞬く間に広がり、その翌日に、東京都心などで初雪を観測した際に、5000枚を超える雪の結晶の画像が寄せられました。
一度の雪で、これだけ多くの結晶が観測されたのは世界でも初めてです。集まった雪の結晶から、研究者は何を読み解こうとしているのでしょうか?
雪の結晶の写真を送ってほしいとツイートしたのは、気象庁気象研究所の研究官、荒木健太郎さんです。
豪雨や豪雪、竜巻などの災害を引き起こす雲の仕組みを研究しています。
市民が科学者のデータ収集に協力する手法は「シチズンサイエンス」と呼ばれ、同時に、広範囲で、大量にデータを集めることができるため、アメリカなどでは広く行われていて、荒木さんは今回、初めてこの手法を取り入れました。

「関東甲信の皆様にお願いです。雪が降ったら雪結晶の写真を撮って下さい。スマホでも撮れます。雪結晶の種類等の情報は雪研究に非常に重要です。綺麗な結晶だけでなく汚い結晶も含め、雪の写真を送りつけて下さい。1円玉とかスケールがあると最高です。ご協力お願いします」

「スマホでも撮れます」

雪の結晶の写真を送ってほしいとツイートしたのは、気象庁気象研究所の研究官、荒木健太郎さんです。
豪雨や豪雪、竜巻などの災害を引き起こす雲の仕組みを研究しています。
市民が科学者のデータ収集に協力する手法は「シチズンサイエンス」と呼ばれ、同時に、広範囲で、大量にデータを集めることができるため、アメリカなどでは広く行われていて、荒木さんは今回、初めてこの手法を取り入れました。

「関東甲信の皆様にお願いです。雪が降ったら雪結晶の写真を撮って下さい。スマホでも撮れます。雪結晶の種類等の情報は雪研究に非常に重要です。綺麗な結晶だけでなく汚い結晶も含め、雪の写真を送りつけて下さい。1円玉とかスケールがあると最高です。ご協力お願いします」
荒木さんがツイッターで呼びかけた翌日(先月24日)には、関東甲信の各地で雪が降り、東京の都心と横浜市・甲府市で、11月としては54年ぶりに初雪を観測したほか、東京の都心では、統計を取り始めてから初めて11月に積雪を観測しました。
こうした状況の中、荒木さんのツイートは1万9600回リツイートされるなど広く拡散し、これまでに1312件、5086枚の雪の結晶の画像が送られてきたということです。
一度の雪で、これだけ多くの雪の結晶が観測されたのは世界でも初めてだということです。

5000枚の画像からわかったこと

荒木さんは、雪の結晶の画像とともに送られてきた撮影時間や撮影場所などの情報をもとに、雪の結晶がどのように分布しているかを地図に落としこみました。

その結果、先月24日の午前8時から9時にかけては関東の広い範囲で、もっともよく知られている樹枝状と呼ばれる、形の雪の結晶がきれいな状態で観測されたことがわかりました。
午前11時から12時になると、関東北部では依然として、きれいな樹枝状の結晶が見られたものの、東京や埼玉などの関東南部では、針のように細い棒の形をした雪の結晶に氷の粒がいっぱい付いたものや、あられのようになったものが数多く観測されるなど、地域によって観測される雪の結晶の形に違いがあったということです。

雪の結晶は気温と水蒸気の量によって、できる形が変わってきます。樹枝状の結晶は、マイナス15℃前後ですごく湿っている場合に見られ、そこから気温がマイナス5℃前後に上がり、湿度も少し下がると、針のように細い棒の形をした雪の結晶が見られます。地上に降ってきた雪の結晶を観測することで、上空の雲の状態がわかるのです。

荒木さんは大量の画像の解析から、先月24日の初雪は比較的温度が高く、水蒸気の量も多い雲の中で、雪の結晶が成長した非常にまれなケースだったと分析しています。
また、地域や時間によって見られる結晶の形が異なったのは、低気圧の発達に伴って、暖かく湿った空気が流れ込んだかどうかの違いだと考えています。

関東の雪を正確に予測したい

荒木さんが、ツイッターで呼びかけてまで雪の結晶の画像を集めたかったのは、関東の雪の予報の精度向上につなげるためです。
関東では、南の海上を通過する南岸低気圧によって雪が降るケースが多く、先月の初雪を観測した日も、この南岸低気圧が発生していました。
しかし、南岸低気圧が通るコースや気温など、わずかな条件の違いで、雨になるのか?雪になるのか?、さらに、どれくらいの量の雪が降るのか?などを正確に予測することは非常に難しいと言われています。
今回、雪の結晶の画像を解析することで、雪を降らせた雲の中の状況を知ることができました。本来なら、航空機で直接雲の中に入ったり風船を飛ばしたりして、直接観測しなければわからなかったことが、多くの市民の協力でわかったのです。

こうした観測が、すぐに予報の精度向上につながるわけではありませんが、荒木さんは、こうした地道な観測を重ねることが、スーパーコンピューターを使って作られている今の天気予報の弱点を補うことにつながると考えています。

「雪は天から送られた手紙」

世界で初めて人工雪を作ることに成功したことで知られる、物理学者の中谷宇吉郎は「雪は天から送られた手紙である」という言葉を残しています。

荒木さんは「今までは天から手紙が届いているのに誰も読まなかったため、差出人もわからない状態でした。今回、多くの人の協力で差出人がわかり、雲の気持ちがわかるようになりました。スマホで簡単に雪の結晶を撮影できることが多くの人にわかってもらえましたし、SNSを通じた研究者と市民とのやり取りを広げていけば、さらにおもしろいことができるようになるのではないか」と話していました。

荒木さんは、今後も関東で雪が降ると予測されるときには、雪の結晶の画像を募集することにしています。