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滋賀結局はJRの意向 北陸新幹線ルート選定与党で費用の議論なし北陸新幹線の福井県敦賀市以西の未着工区間を巡り、与党によるルート選定は、営業主体のJR西日本や福井、石川、富山の北陸三県が推す小浜−京都案に決まる見通しだ。滋賀県が推した米原案は、建設費や建設期間、費用対効果で小浜−京都案を圧倒的に上回るのに孤立無援だった。その背景には何があったのか。 小浜−京都案に形勢が傾いたのは今月五日、支持ルートを北陸三県で唯一明言していなかった石川県の谷本正憲知事による小浜−京都案の支持表明だった。北陸三県で足並みをそろえるのと同時に、JR西の支持を理由に挙げ、「一番大きな物差しは、JRがどういう意向を持っていたか」と説明した。 そもそも、政府は整備新幹線建設の着工五条件の一つに「営業主体としてのJRの同意」を掲げる。延伸先の線路を敷く福井県はともかく石川、富山両県は「長年の悲願」という北陸新幹線全線の早期開業を求めてJR西に追従した格好だ。 国土交通省の調査結果によると、小浜−京都案は運賃と所要時間に優れ、安く早く関西−北陸間を行き来できる。一方、米原案は費用対効果や建設費、建設期間などの優位性で圧倒する。 中部−北陸間で見た場合、米原案の方が安く早く行き来でき、中部地方の自治体も、その優位性を認識する。ただ、JR東海の柘植康英社長は、米原案の場合、米原以西の東海道新幹線との絡みで利害関係にあるにもかかわらず、北陸新幹線の整備ルートに関し「直接の当事者ではないので、具体的な意見を述べる立場にない」と終始口を挟まなかった。 米原案は、米原駅で北陸新幹線から東海道新幹線への「乗り換え」が前提となっているが、有識者からは「乗り入れ可能」との指摘がある。しかし、JR両社とも、ダイヤの過密性や会社間の運営システムなどの違いを挙げ「乗り入れ困難」の姿勢を崩さなかった。 その点に関し、十一月にリニア中央新幹線の大阪開業が最大八年前倒しが決まった。これにより、北陸新幹線敦賀以西ルートの完成時とリニア開業が重なれば、東海道新幹線の「のぞみ」の本数が減り、ダイヤの過密性という障害も一定程度解決する。それでも、柘植社長は「相当先の話」と「乗り入れ」への言及を避けている。 滋賀県の三日月大造知事は、山陽新幹線と九州新幹線では相互直通運転を実現したとして「乗り入れに必要な経費は数百億円、別のルートを選択すると、(米原案の五千九百億円)プラス一・五兆〜二兆円だ」と疑問を投げかけ、国民本位の議論を求めている。 ルート選定を巡っては、与党内の整備新幹線建設推進プロジェクトチームが小浜−京都案を軸に年内決定を目指す。金沢−敦賀間は二二年度に開業する計画だが、敦賀以西は現状の国予算の枠組みでは三一年まで財源がなく、着工が十五年後になる可能性もある。 ◆国民の理解は所要時間を十〜二十分短縮するのにさらに一・五兆円を追加する−。小浜−京都案を米原案と比べるとそんな計算ができる。与党内ではこうしたお金と時間の議論はなく、ルート先行だ。 新幹線の速達性や利便性を否定するつもりはない。が、税金を投じる国民の理解を得られるのだろうか。取材中、よく思い出す標語がある。「狭い日本。そんなに急いでどこへ行く」 (成田嵩憲) <北陸新幹線の未着工区間(敦賀駅−新大阪駅)> ルートは福井県小浜市付近から京都駅へ南下する「小浜−京都」、滋賀県の琵琶湖東側を通って東海道新幹線に接続する「米原」、小浜市付近から京都府舞鶴市付近を経由して京都駅につながる「舞鶴」の3案がある。建設に当たり、「JRの同意」のほか、経済効果が建設費を上回る「投資効果」、並行在来線のJRからの経営分離に対する「沿線自治体の同意」、「安定財源」などの条件を満たす必要がある。国交省の調査では舞鶴案に投資に見合う効果がなく、事実上、小浜−京都案と米原案の争いだ。 PR情報
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