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カープ、松田オーナーの「A Hard Day’s Night」

楽観的に見ない。悲観的。だから疲れるんじゃ

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2016年12月12日(月)

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25年ぶりにセ・リーグ優勝を達成した広島東洋カープは、日本のプロ野球球団の中で唯一親会社を持たない。そのため他球団と違って、球団単体で黒字にしなければ、チーム存続が危うくなるという厳しい環境に置かれてきた。だから、年俸が極端に高い有能な選手をチームに加入させるのも難しい。優勝から遠ざかっていた時期は、熱心なファンから球団が非難された。こうした逆風の吹きあれる中に、松田元・広島カープオーナーは新球場の入場者を増やしたり、グッズ収入を増やしたり、あらゆる手を尽くしてチームを強くし、黒字を維持してきた。書籍『HARD THINGS』で著者が言う「何にでも効く銀の弾丸ではなく、鉛の弾丸を使え」というアドバイスとまさに同じだ。今回の後編では、広島カープの松田オーナーに経営戦略を聞く(前編はこちらをご覧ください)。

カープ球団の経営には、新球場、(2009年に完成した)マツダスタジアムの影響はかなり大きかったようですね。マツダスタジアムを造るにあたっては、アメリカの球場をかなり視察されたそうですが、元々はどのような球場にしようと思われましたか。

松田:新球場には助かった。みんなはカープ女子というけど、現実は、なかなか女子までは思いが至らなかったんよ。どっちかというと、3世代の球場にしたい、これが一番だったね。お年寄りが来られる球場が一番いいんじゃないか。60代、70代と年がいけばいくほど、野球しかなかった時代の人たちが多いわけだから、その人たちが、足腰が弱くなって球場に来られずという状況よりも、楽に来られる球場が一番いいんじゃないかというのがすごくあったよね。だから3世代の球場。

 うちは専門のバイトの子(ホスピタリティスタッフ)を常時、20名くらい配置して、車椅子のお客さんのお迎えからエレベーターの乗り降りまで全部やっている。レンタル用の車椅子も20台。野球を見るという気持ちで来たのはいいけれど、コンコースを1周してみたいわという気持ちになることがあるじゃないですか。おじいさんおばあさんが1周したいということなると、車椅子がいる。だから常時、20台を用意している。

松田元(まつだ・はじめ)
広島東洋カープオーナー。1951年広島市生まれ。自動車メーカー、マツダの創業家に生まれ、77年に東洋工業(現マツダ)に就職。6年間勤務した後に、カープに転じる。オーナー代行として球団経営を学び、2002年より現職。理論的な経営を突き詰める半面、赤いパンツを履くなどゲンを担ぐ一面も(写真:橋本真宏、以下同)

 この球場の初年度、お年寄りと会うことが多かったんよ。今でも覚えているけど、お年寄り3、4人で「わしら福山から来たんじゃ。同期でどうじゃこうじゃ」と、元気にビール飲みながら嬉しそうな顔してから、楽しそうに……。自分としては満足度が高かったよね。来られなかったお年寄りが来られる球場になったから、すごくよかったんじゃないかなと思っとるね。

野球に興味がない人もお客にする

松田:それと、(球場内に)「パーティルーム」というものも設けたので、野球の好きな人と、興味ない人が一緒に楽しめるようになった。その結果、興味ない人も野球に関心を持つような、いい循環になってくる。

 アメリカで自分が訪ねていったところの家族が、子どもを連れて球場へ行くんよ。そこへ離れて住んでいるおじいさんとおばあさんがやってきて、集まってひとときを過ごして、また別れて家へ。いいよね。それみたいに、3世代、兄弟、家族、小さい子どもを連れたママ友、そういうものが集う場所をつくることによって、マーケットが小さくても観客動員が図れるんじゃないのかと思った。

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