宇宙ビジネスに乗り出す企業を国が後押しする「宇宙活動法」が今国会で成立した。小型衛星の登場で宇宙の新たな利用法が開けてきたなか、民間によるロケット打ち上げに門戸を開いた。企業の工夫を引き出し、宇宙産業の自立を促す環境づくりが重要だ。
日本はこれまで宇宙開発を国の事業として進めてきた。主力ロケットH2Aや9日に打ち上げたH2Bは宇宙航空研究開発機構が開発し、三菱重工業に製造と打ち上げを委託している。ほかの企業が独自にロケットを打ち上げることは認めてこなかった。
宇宙活動法はロケット開発を許可制とし、企業が技術力や安全性について国の審査を受け、合格すれば参入を認める。第三者に被害が及ぶ事故も想定し、企業に損害保険への加入を義務づけ、保険で賄えない場合には国が賠償金の一部を負担するようにした。
宇宙開発で民の力を生かすのは世界の潮流だ。米国では約30年前に法律ができ、いまでは大型ロケットも民間が担う。あらゆるものがネットでつながる時代を迎え、小型衛星をたくさん打ち上げて地上と交信したり、土地利用や交通状況などを把握したりする新ビジネスにも注目が集まる。
これらの衛星を宇宙に効率よく運ぼうと、小型ロケット打ち上げへの参入を表明する企業が日本でも出てきた。国内企業が育てば、海外から衛星打ち上げを受注できるとの期待もある。
一方で、宇宙ビジネスでの日本の立ち位置もよく認識する必要がある。日本の宇宙産業の規模は米国の約20分の1、欧州の4分の1にとどまる。背伸びして米欧の後を追うよりは独自のアイデアで市場を切り開く発想が欠かせない。
国が新たなロケット射場を整備したり、補助金で企業を育てたりといった財政的な支援は極力避けるべきだ。むしろ、宇宙で集めた様々なデータを企業や自治体、個人らが幅広く利用できる仕組みをつくるなど、産業の裾野を広める施策を考えるときだ。