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「孤独大統領」親友頼りあだ=両親の悲劇、崔父娘と接近-韓国〔深層探訪〕

時事通信 12/10(土) 8:33配信

 韓国の朴槿恵大統領は9日午後、弾劾訴追案の可決で職務停止に追い込まれた。1974年、母の陸英修氏が凶弾に倒れ、父の朴正熙大統領のファーストレディー役を務めた朴槿恵氏は、79年には父も暗殺で失った。「悲劇のヒロイン」朴槿恵氏は、孤独の中、長年にわたり親友の崔順実被告を頼りにした政治スタイルがあだになり、今度は自ら悲劇を生み出した。

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 ◇「国家的混乱」と謝罪
 身内の与党セヌリ党からも多くの「造反」が出て予想を超える234人が、朴槿恵氏の弾劾案に賛成票を投じた。その直後、大統領府で閣僚の前に姿を現した朴氏は「私の不徳によりこのような大きな国家的混乱を招くことになった。国民の皆さんに心から申し訳ない」と神妙に語った。

 朴槿恵氏の特異な家庭環境は、独特の人脈をつくり上げた。朴氏の孤独を支えたのが、崔被告の父、故崔太敏氏だった。同氏とは、朴氏が父親のファーストレディーを務めている頃に知り合ったとされる。宗教家の崔太敏氏は、朴槿恵氏を社会奉仕団体の総裁に祭り上げ、多数の大企業から活動資金を集めたとされる。

 崔被告とは70年代半ば、父の崔太敏氏を通じて知り合ったとみられている。関係者によれば、もともと朴槿恵氏の身の回りの世話をしていたのは、もっぱら妹の朴槿令氏だったが、崔父娘は朴槿令氏を姉の朴槿恵氏から遠ざけ、その空白を埋め、面倒を見るようになったのが崔被告だった。

 ◇崔被告との「共同政権」
 朴槿恵氏の政界進出後も「崔順実頼り」が続き、2013年2月の大統領就任後も、衣装選びから演説内容、高官人事まで頼っていた。朴大統領は高官人事などで「他人の意見に耳を貸さず、独善的」と批判されてきたが、頼る相手が崔被告しかいなかったようだ。

 「崔被告と朴大統領はほとんど同じ地位にいるのではないかと思った」。弾劾案可決の直前、7日に国会で開かれた聴聞会では、崔被告の側近、チャ・ウンテク被告=職権乱用などで起訴済み=らから爆弾発言が飛び出した。

 チャ被告は文化体育観光相などの候補を推薦するよう崔被告から指示され、推薦した通りの人事になった。「朴大統領と崔被告の共同政権のようなものか」と議員が問いただすと、「そう思った」と認めた。同じく崔被告の側近だったコ・ヨンテ氏は「崔被告こそ(政権内)序列ナンバーワンではないのか」と聞かれ、「そう思う」とはっきり答えた。2人の発言はメディアで大きく取り上げられ、弾劾を後押しする一因になった。

 ◇「ポスト朴槿恵」
 朴氏が罷免されるかどうかは憲法裁判所の判断次第だが、政治的には命脈が尽きたも同然で、政界では「ポスト朴槿恵氏」に向けた動きが加速しそうだ。

 「朴大統領は弾劾案可決後、即刻辞任せよ」。そう叫ぶのは、次期大統領選の有力候補と目されている最大野党「共に民主党」の文在寅元代表だ。朴大統領への国民の怒りを追い風に一気呵成(かせい)に政権奪取を図るシナリオを描いている。

 一方、与党セヌリ党内で非主流派が、保守再生に向け、年内に任期を終える国連の潘基文事務総長を担ぎ出す可能性も指摘されている。(ソウル時事)

最終更新:12/11(日) 19:47

時事通信